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こんにちは☺
昭和女子大学光葉博物館で開催中の「将軍家を訪ねて」(12月5日まで開催中)は、江戸時代を導いた将軍家や大奥、士農工商の「士」を中心とした文化や業績を紹介しています。では、「農・工・商」の、町民の文化はどうだったのでしょうか? 今回は、町民文化の名残りと江戸の"華"に触れられる町、かつての江戸の中心地であった東京・中央区の史跡を紹介します。どれも屋外にあるものばかりですので、お近くにお出かけの際は、散歩がてら少し立ち寄っていただけてもいいと思います。
江戸開府より500年以上の歴史と伝統を誇る中央区とその文化財
昭和の頃、中央区教育委員会が『中央区の文化財』という冊子シリーズを発行していました。当時は中央区役所で入手をすることができ、筆者は、昭和54(1979)年に発行された増補版の①から④までを今も大事に持っています。
現在も入手が可能かどうかを確認したところ、Yahoo!オークションで「全7巻」として出品されているのを見つけました。その写真によると、続刊のテーマは以下のようです。
①増補改訂『中央区の文化財』(一)史跡・旧跡・記念碑
②『中央区の文化財』(二)美術・工芸・古文書
③『中央区の文化財』(三)橋梁
④『中央区の文化財』(四)有形民俗文化財-信仰-
⑤『中央区の文化財』(五)有形民俗文化財-道具類ー
⑥『中央区の文化財』(六)有形民俗文化財-道具類二ー
⑦『中央区の文化財』(七)建造物
その増補改訂『中央区の文化財』(一)史跡・旧跡・記念碑の「はじめに」に、
中央区の占める地域は、近代から現代にいたる約五百年間、政治・経済・文化の中心として発展してまいりました。
この五百年の間には、江戸時代から今日まで多くの大火や震災、戦禍に見舞われましたが、そのつど復興に努め以前にも増して繁栄してまいりました。
しかし一方、最近の都市化の影響で、先人の残した多くの文化的遺産がつぎつぎと破壊され滅失してきています。
このような状況の下で、本区では文化的遺産の保護に関する施策がとくに緊急を要するものと考え、本区内にある文化的遺産を探り今後の文化財行政の史料にするための基礎的調査を行ない本冊子にまとめました。(以下略)
昭和五十年三月 中央区教育委員会
と書かれています。実際、とてもていねいに作られた冊子で、ひとつの文化財を1〜2ページで紹介し、冊子発行当時の写真以外に、明治時代の写真や江戸時代の史料などを一緒に掲載しています。巻末には、その文化財の場所を示す白地図も添付されています。増補改訂『中央区の文化財』(一)の地図にある文化財の一例が次のようになります。
区内史跡・旧跡・記念碑一覧表(地図付き)
[日本橋地区]
(名称) (所在地)
①常盤橋門跡 本石町3−1先
②日本橋魚河岸記念碑 室町1−2
③三浦按針遺跡 室町1−16
④長崎屋跡 室町4−2
⑤十軒店跡 室町3
⑥於竹大日如来井戸跡 本町3−2
⑦伝馬町牢屋敷跡 小伝馬町1−5
⑧吉田松陰終焉の地 小伝馬町1−5
⑨杵屋勝三郎歴代記念碑 小伝馬町1−5
⑩富塚碑 堀留町1−5
⑪蛎殻銀座跡 人形町2付近
⑫玄冶店跡記念碑 人形町3−2先
⑬谷崎潤一郎生誕の地 人形町1−7−10
⑭郡代屋敷跡 馬喰町2付近
⑮両国広小路記念碑 日本橋2−26先
⑯賀茂真淵県居の跡 久松町9交差点
⑰震災避難記念碑 浜町2−57先
⑱日本橋 日本橋1−1先
⑲名水白木屋の井戸 日本橋1−4−1
⑳一石橋迷子しらせ石標 八重洲1−1先
㉑郵便発祥の地 日本橋1−18−1
㉒其角住居跡 茅場町1−18
㉓銀行発祥の地 兜町1−1
㉔海運橋石柱 兜町1−1先
㉕秤座跡 日本橋3−7
(注:昭和54年当時の記録のため、現在は場所が移転している可能性もありますのでご注意ください。)
中央区文化財の最新情報は、中央区のウェブサイトで提供されている「中央区文化財」や、中央区観光協会が提供している中央区観光ガイドマップ(日本語、英語、中国語、ハングル語版があり、同観光協会のウェブサイトでダウンロードが可能。同観光協会の窓口でも無料配布中)からも確認できます。
地図を片手に、自分のペースでぶらぶらと文化財を探しながら、中央区の町を散策するのも楽しいのではないのでしょうか?
中央区文化財サポーター協会によるまち歩きガイド
新しさと伝統が共存する中央区の魅力を紹介するグループとして、中央区文化財サポーター協会があります。中央区区民カレッジの生涯学習サポーター養成コース「まち案内ボランティア講座」を修了した中央区登録認定のまち歩きボランティアガイドの方々が、中央区の旧跡・名所などの見どころを楽しく、親切に案内してくれる企画を実施しており、現在も、参加費500円で季節ごとの「中央区歴史散歩」(この11月25日締め切りで冬の中央区歴史散歩参加者を募集中)や、「中央区わくわくツアー」などを提供しています。
COVID-19に配慮をしたツアーになっているようですが、心配な方は、またCOVID-19が落ち着いたときに中央区文化財サポーター協会のウェブサイトで最新企画を検討いただいたらどうか、と思います。
江戸開府以来400年強の歴史と伝統を誇る中央区と中央区観光協会
江戸幕府(政治機能)は江戸城(現・千代田区皇居)に存在しましたが、江戸の文化や商工業、情報は今の中央区を中心に発展しました。江戸五街道の起点であると同時に魚河岸として江戸の食文化を支えた「日本橋」、江戸の交易を支える商業地帯で、今も江戸時代から続く繊維や傘や文具、煙草などの生活用品を扱う店が軒を連ねる「大伝馬町」、江戸の銀貨鋳造所であり今は世界のショッピングタウンとなった「銀座」や、徳川家康公が江戸下向と同時に移住した大阪佃村(現・大阪市西淀川区)の漁民が開き築地魚河岸を支えた「佃島」など、江戸時代の文化の名残と情緒は、今も各所で確認することができます。
筆者が子供の頃、体育の日の中央区では、中央区の文化財を活用した史跡スタンプラリーが開催されていました。「歩け歩けスタンプラリー」と銘打たれ、あちらこちらの文化財ポイントを探し、文化財にちなんでデザインされたスタンプを集めるのです。中央区の文化財をテーマごとに3つのスタンプコースに分けた年もあれば、そうでない年もありました。30ヵ所以上を回ったように思います。スタンプラリーのコースは毎年変わり、当然スタンプポイントも異なります。なかなかスタンプポイントが見つけられないこともありました。家族で朝から夕方まで歩き、何とか制限時間前に全部のコースを回りたいと焦ったことや、スタンプポイントを探し当てたときの「!」の気持ちは今もよく覚えています。
あれだけスタンプポイントが違ったのも、中央区にたくさんの文化財や史跡があったからなのですね。その土地を理解し、その背景に興味をもたせる企画として、そして区民に運動をさせるイベントとして、一石三鳥くらいのイベントだったのではないか、と今更思います。
中央区観光ガイドマップを提供している中央区観光協会では、ガイドマップの提供のほかに、中央区観光情報センターの運営や中央区観光検定の実施、中央区観光地図アプリ「中央区まち歩きマップ」の配信、区内史跡名勝の紹介と保存などさまざまな活動を展開しています。ウェブサイト上では、中央区の数多な散策コースや「食べる」「買う」「知る」の目的別ルート紹介も取り扱われています。ぜひ、ウェブサイトで中央区観光協会の最新情報を確認され、今も楽しめる江戸の風情や中央区のおもしろさを体感してみてください。
次回は、家にいながら江戸文化の"粋"を楽しめる中央区の取り組みを紹介したいと思います。どうぞお楽しみに。
■一般社団法人中央区観光協会 Chuo City Tourism Association
・住所: 〒104-0061 中央区銀座1-25-3 京橋プラザ3階
・アクセス: 東京メトロ有楽町線新富町駅 2番出口 徒歩5分
都営地下鉄浅草線宝町駅 A1出口 徒歩3分
・電話: 03-6228-7907
・FAX: 03-6228-7908