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4. クリスマス=年越し祝い!?クリスマス時期の風景@ウズベキスタン

伊藤 卓巳

伊藤 卓巳

ウズベキスタン特派員

更新日
2021年12月25日
公開日
2021年12月25日
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サローム(こんにちは)! &メリークリスマス!

え、イスラム教の国からメリークリスマスと言われても説得力がない? 確かにイスラム教徒が人口の大多数を占めるウズベキスタンですが、意外にもクリスマスらしい風景が見られるのです。それも日本と同じぐらいか、それ以上にきらびやかな光景が。今回は、ウズベキスタンのクリスマス時期の風景を紹介します。

ウズベキスタンでは、12月になると町が一気にキラキラムードに。ショッピングモールや観光地など人がたくさん集まるスポットでは、競い合うようにきらびらかなイルミネーションが飾られ、巨大なツリーが立てられます。日本でもなかなか無いであろう数十メートルのツリーも…。

屋内競技場HUMOアリーナ横のキラキラツリー
巨大ショッピングモール・サマルカンドダルヴァザの吹き抜けにもこんなツリーが

おもしろいのは、こういう風景も実は現地の人々にとってはあくまで新年のお祝いの一環に過ぎないということ。日本人からすると完全にクリスマスツリーに見えるこの写真↑も現地の人々にとっては新年のシンボル。私たちにとっての門松のようなものでしょうか。現にこのツリーはロシア語だとёлка(ヨールカ)、ウズベク語だとarcha(アルチャ)と呼ばれますが、クリスマスツリーという意味はなく単にトウヒの木という意味です。

サンタさんらしき姿も見られますが、ウズベク人の感覚ではサンタクロースではなく「コルボボ」。飛騨高山のさるぼぼの仲間ではありません。コル(qor)は雪、ボボ(bobo)はおじいちゃんの意味で、訳すと雪爺さん。青い服を着たおじいさん(こちらも正確にはサンタクロースではなく「ジェド・マロース」=冬のおじいさん)がいたり、彼の孫娘とされ付き人的存在(?)でもあるスネグーラチカ(雪娘)が見られることもありますが、これはロシアのキャラクターです。

市内最大の市場チョルスーバザール入口に鎮座するコルボボ
道行く車にひたすら手を振るシュールなコルボボとその手下を発見

一般家庭でもこの時期ならではの光景があります。年末が近づくにつれどんどん派手になっていく町の風景と同様、ツリーや風船、カラフルな飾り付けなどで部屋を飾る家庭が多く、その本気度は何となくクリスマスを祝っている私たちにとっては目を見張るものがあります(が、繰り返しますが彼らにとってはあくまで新年のお祝いの一環です)。そして12月25日……ではなく年越しのタイミングで子供にプレゼントを贈ります。

2年前のJICA隊員研修時にホームステイしていたおうちでは、お部屋の中に風船が多数出現
バザールの一角にはツリーや飾りつけを売る店が現れるのがこの時期の風物詩です

日本人にはなかなか理解されがたい"クリスマスが年越し祝いに取り込まれてる現象"は、ロシア正教でのクリスマスが12月25日ではなく1月7日にあたるため。ソ連時代は宗教活動が制限されており、表立ってクリスマスをお祝いできない代わりに盛大に新年を祝おう、となったことも背景にあるようです。ツリーやコルボボとともに書かれている文字もたいていMerry Christmas!やС Рождеством!(ロシア語で「クリスマスおめでとう」)ではなくて、ウズベク語やロシア語で「新年おめでとう」を意味するYangi yil bilan!(ヤンギ・イール・ビラン!)やС Новым годом!(ス・ノーヴィム・ゴーダム!)となっています。サンタさん(らしきおじいさん)に新年おめでとうと言われるのは違和感しかありませんが、これがこちらの国では当たり前の光景なのです。

日本では12月26日にはもうクリスマスツリーや飾り付けが片付けられていると知人のウズベク人に言うと、逆に驚いていました。新年になってもツリーを飾っている方が私たちにとってはびっくりですが……。まさに自国の常識は他国の非常識。

去年の元日に撮影した地下鉄。堂々とコルボボが描かれています

知人にウズベキスタンのクリスマスや年越し事情を伺うと、最近は複雑な状況にあることも教えてくれました。近年イスラム教の戒律をしっかり守る人が増え、イスラム回帰現象にあるといわれるウズベキスタン。今まではロシア人と全く同じように新年を祝うウズベク人が大多数でしたが、本来イスラム教にはないお祝いだから……と全然祝わないウズベク人も多くなっているそうです。
とはいえそういった考え方の人が増えても、依然12月の町はお祝いムード一色。大人はよくても子供はちょっと可哀想かな、なんで私の家では祝わないの…と思っていそうだし、とその知人は言っていました。祝わない派の意見を聞いたことがないので何とも言えないのですが、確かに子供の気持ちを察すると少し寂しい気分になりますね。

ウズベキスタンのお祭りやイベントはたいてい親戚や近所の人と協力してやるものだけど、クリスマスや年越し祝いは唯一家族の中だけで祝えるお祭りなんだよ、とその知人談。家族愛が強いウズベキスタンだからこそ、本来異教徒のお祭りだったこのお祝いが国に根付いたのかもしれません。そう考えると、しばらくウズベキスタンからこの文化が消えることはなさそうです。

それではコルシュグンチャ・ハイル(また会う日まで)!

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