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サローム(こんにちは)!
米とお肉、野菜などをたっぷりの油で炊き上げた伝統料理プロフは、ウズベキスタンで食べていただきたい料理ナンバーワン。この国では日常食としてもハレの場でも食べられ、ウズベク人はどこのプロフ屋さんがお気に入りか、いかに自分の出身地のプロフがおいしいか日々討論しているという、彼らの魂の料理です。ちなみにプロフの別名はオシュといいますが、これは日本語の「ご飯」と同じく、食事全体を指す言葉としても使います。このことからも、プロフがこの国の食文化で最重要ポジションを占めていることがわかるでしょう。
そしてタシケントでプロフを食べるなら、やはりタシケント市民なら誰でも知っているこのお店を紹介しないわけにはいきません。その名も「中央アジアプロフセンター」。
プロフセンターとはなかなかインパクトある名前ですが(日本でいうと「うどんセンター」とか「牛丼センター」みたいなものですからね……)、この国では案外普通の店名で、ウズベク語でプロフセンターを意味する〇〇 Osh Markazi(オシュ・マルカジ)というお店が乱立しています。〇〇に入るのは地名だったりシェフの名前だったりするのですが、国の枠を飛び越えて中央アジアプロフセンターと名乗ってしまうのは、名店の風格のあらわれでしょうか。
それではお店に行ってみましょう。大通りのティムール通り沿い、テレビ塔入口のすぐ近くにフットサルコートがあります。ここがお店の入口で、入っていくと「BESH QOZON」と書かれた建物が現れます。実は最近正式店名が中央アジアプロフセンターからこのBESH QOZON(ベシュ・カザン:5つの大鍋の意味)に変わったようなのですが、いまだにこの店名で呼んでいる人を見たことがありません……(笑)
カザン(大鍋)で調理している様子が入口脇で見られるので、ぜひ立ち寄ってみましょう。いくつものカザンがあり、お客が多いお昼時にはフル稼働。鍋の下で薪にメラメラ火をつけて熱しているので、どこか五右衛門風呂を連想します(私だけでしょうか……?)。
ほかのプロフ屋さんでも店頭で調理している様子が見られますが、こんなに同時多発的にプロフを作っているのはおそらくここだけなので、ウズベク人客もよく写真や動画を撮っています。
中でも圧巻なのが1000人分のプロフを作ることができるという超巨大鍋で、人が何人でも入れそう。これまた巨大なシャベルのような道具(お玉? ヘラ? しゃもじ?)で、何人ものおじさんが次々とお皿にプロフをよそっていきます。
プロフは一度にたくさん作れば作るほどおいしくなる料理といわれています。そうなると、この巨大鍋で作るプロフはもう極上にうまいはずです。
鍋の底に残る黄色い液体は油。日本ではありえない量の油にドン引きするかもしれませんが、これこそがプロフのおいしさの源。最初は油っこくて食べづらい……と思っていても、食べ進めるうちにおいしさに夢中になってしまってあっという間に完食してしまい、気づけばまたあの油たっぷりのプロフを欲してしまうのです。まさにプロフは麻薬。
なお作ってから時間がたつとこの油が牙を剥き、ただの油浸しの米と化してしまいます。ランチ時に一気に作るプロフ屋さんが多いので、お昼に行くのがベストです。
心行くまで調理風景を見たところで店内に入りましょう。大ホールのような店内ですが、ランチ時にはほぼ満席に。
プロフはトイ・オシ(結婚式プロフ)、チャイハナ・オシ(お茶屋さんプロフ)、マフスース・オシュ(スペシャルプロフ)の3種類からチョイスします。それぞれ日本円で250~300円。これに卵、カズ(馬肉の腸詰)、ドルマ(ひき肉などをブドウの葉で包んだもの)といったトッピングも載せられます。特に指定せず注文するとトイ・オシが運ばれてくるので、初めての方はこちらから食べてみましょう。
ちなみに結婚式プロフとお茶屋さんプロフ、名前的には結婚式プロフの方が高級そうなのですが、ふつうプロフ屋さんではお茶屋さんプロフの方が特別扱いされていて値段も高め。
つけあわせとしておすすめなのが、脂まみれになった口の中をさっぱりさせてくれる、アチチュクというシンプルな野菜サラダ。飲み物は、こちらもシンプルなコクチョイ(緑茶)が人気です。炭水化物だらけになってもよければ、ナン(平たいパン)を注文してウズベク人の食べ方にチャレンジしてみましょう。そう、彼らは米料理だろうが麺料理だろうが必ず主食であるナンとともに食べるのです。なんというカロリー爆弾……。
先ほども書いたとおりなかなかに脂ギッシュなプロフですが、お米と羊肉の旨さが油とともに絶妙に混ざり合い、空きっ腹ならペロリと平らげてしまうはず。そしてしばらくたつとあの味がフラッシュバックし、またプロフ食べたい……と思ってしまうことでしょう。そうなるともう味覚がウズベク人化してしまった証拠です。
実際ウズベキスタン旅行中にプロフにドハマりしてしまい、帰国後も日本のウズベク料理店に通ったり、自分でプロフを作ったりしている方も多いと聞きます。事態が収束して気軽にウズベキスタン旅行ができるようになれば、さらにプロフファンやウズベク料理ファンが増えてほしい……と願っています。
それではヨクムリ・イシタハ(召し上がれ)!