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14. フェルガナ盆地入口の巨大ナンバザール。アツアツのナンを旅のお供に!

伊藤 卓巳

伊藤 卓巳

ウズベキスタン特派員

更新日
2022年2月4日
公開日
2022年2月4日
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サローム(こんにちは)!

年末に、ウズベキスタン東部のフェルガナ盆地を旅行してきました。中央アジアで最も人口密度が高い場所で、ナマンガンやコーカンド、アンディジャンといった都市があり、織物や陶器など古くから伝統工芸が盛んだった地域でもありますが、サマルカンドやブハラなどに比べると知名度はいまひとつで外国人観光客も少ない土地。しかしながら、1泊2日という短いスケジュールにもかかわらず行程の一瞬一瞬が楽しく、本当に充実した旅でした。
少しの間タシケントを離れ、フェルガナ盆地でぜひ訪れてほしいおすすめスポットを紹介していきましょう。

今回の旅はナマンガン出身の友人が案内してくれたおかげで、本当にいろいろ勉強になりました。タシケントからフェルガナ盆地へは飛行機と車、それに6年前にできたばかりの鉄道という3つのアクセス方法がありますが、今回は友人の家族の方がナマンガンから車で迎えに来てくれ、ずっとこの車で移動することに。
タシケントからフェルガナ盆地へ車で行くには標高2200mのカムチック峠を越えなければなりません。タシケントは冬でもそこまで雪は多くありませんが、峠道に入るときれいな雪景色。

キルギスのオシュや、中国の新疆ウイグル自治区カシュガルといった都市への距離が書かれた看板

峠を越えてフェルガナ盆地に入ると道行く車を待ち構えている人がいます。ここにはちょうど検問があり、否が応にも車は一旦停止しないといけないのですが、その隙を狙って窓から何か渡してくるのです。
渡されたものがコチラ。

……ミニナン?

ナン(ノンとも発音される)とは、ウズベク人の食事に欠かせない平べったいパンのこと。友人の話によると、ここナマンガン州パプ地区という地域は幹線道路に沿った大規模ナンバザールが有名で、道行くドライバーや旅行者にナンを売るためたくさんのナン屋さんが競合しているのだそう。その中のひとつの店が、宣伝のためにこのミニナンを配っているのだそうです。ということはお試しナンってことか。
確かによく見るとナンに名前と電話番号が書かれています。なんという上手なプロモーションでしょう(ナンだけに……!)

しばらくすると、友人の言ったとおり道路脇にナン屋さんがめくるめく勢いで出現してきました。日本だとこういう幹線道路ではファミレスやらファストフード店やらレンタルビデオ屋やらが出てきますが、それが全部ナン屋さんという状況。このナン激戦区で爆誕したのが、先ほどのミニナン商法なのでしょう。

ナン屋さんの名前はオーナーの名がつけられているようで、"アクマルのパティール"、"サンジャルのパティール"などといった大きな看板が掲げられています(パティールはナンと同じ意味)。その中で"JANNAT ONA PATIR"、天国の母のナン屋という意味のナン屋さんの前で車を停めてくれました。

車を降りるとさあたいへん、ナン屋さんの売り手のおば様たちが一斉に声をかけてきて一気に収拾つかない状況になってしまいました。ここは一応ナン屋さんなのですが、果物売り場やお菓子売り場もあるので売り手のおば様は何人もおり、さらにいきなり外国人たちが車から降りてきてテンションがあがったのか、各方面からパワフルな大声で呼び込みがかかるカオス状態に。一度に10人の声を聞いていたという聖徳太子の気持ちがほんのちょっとわかりました。

このときは妻ともうひとり日本人女性がいたのですが、皆彼女たちにきれいな娘さん、こっちこっちと呼びかけているようです。友人いわく、「あなたの眉黒くてきれいですね」というウズベキスタンならではの呼び込みもあるそうです。褒められてる気がしませんが……。

というわけでさっそくナン売り場へ。どのナンも大きく、しかも模様の美しいこと! ウズベク人の主食である平たいパン、ナンはどこでも同じ形なのかと思いきや、実は町や地域によって味や形が違う興味深い食べ物なのです。確かに人の顔より大きそうなこんなナン、タシケントではなかなかお目にかかれません。

そして売り場の後ろにはタンディール(窯)があり、ナン生地職人さんがせっせとナンをこね、ナン焼き職人さんがせっせとタンディールに入れています。見事なコンビプレーに見とれてしまいます。

メラメラ燃えるタンディール

隣のタンディールではちょうどナンが焼きあがったところで、アツアツパリパリのナンを職人さんがひたすら取り出しているところでした。この職人技、無限に見ていられるぞ。

中央アジアを舞台にした漫画『乙嫁語り』のファンの方なら、パリヤさんがパンを焼くシーンを思い出すことでしょう。このときナンを焼いていたのはおじさんでしたが……。

ほかの売り場も見てみましょう。この白玉団子みたいなものは、ヨーグルトを固めた乳製品クルト。こちらもなかなか興味深い食べ物なので、いつかブログでたっぷり取り上げたいものです。

真冬にもかかわらず色とりどりの果物もたくさん

こちらは見ているだけで甘さにクラクラしそうなお菓子売り場ですが、目玉商品がヌガーのような中央アジア・中東地域伝統のお菓子ハルヴァです。この近くにある古都、コーカンドがハルヴァで有名な町とのことです。あとスニッカーズハルヴァという著作権的にアウトっぽいハルヴァも売っていましたが……。

結局ホカホカのナンを数枚買い、パワフルおば様たちにお見送りいただいて出発。食べてみると、バターがよく効いた濃厚なお味! 食べ始めたら止まらないクセになる味で、ドライブのお供にぴったりでした。

さまざまな場所を訪問した今回のフェルガナ盆地旅ですが、純粋に一番楽しかった場所はここだったかもしれません。乗り合いタクシーやツアーなどでここを通るときは、ぜひ運転手さんにリクエストしてこのナンバザールに寄ってもらってくださいね!

■パプ・ナンバザールPopNonBozori(PopPatirBozori)

住所
G’urumsaroy,Poptumani,Namanganviloyati
アクセス
タシケントから乗り合いタクシーで約3時間半~4時間
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