キーワードで検索
サローム(こんにちは)!
毎年3月21日、春分の日にウズベキスタンで大々的に行われる春の祭典が「ナウルーズ」。ペルシャ語で"新しい日"という意味で、古くはイスラム教以前の宗教であるゾロアスター教に由来し、今はイランや中央アジア一帯などのペルシャ文化圏で広く祝われています。特にウズベキスタンでは国をあげて盛大に祝われ、国内全土でさまざまな祝典が行われます。また日本のゴールデンウィークのごとくこの時期は大型連休になるので、旅行や帰省をする人も多く、誰もが楽しみにしているお祭りです。
私もちょうど先月のナウルーズにサマルカンドに旅行に行き、イベントを楽しんできました。その模様を2回にわたって紹介します。
ナウルーズでまず知っておきたいワードが「スマラク」(スマリャクとも発音)で、これがナウルーズならではの食べ物。見た目も味も私たち日本人にとっては全くなじみのないもので、初めて見ると驚くこと間違いなしでしょう。大々的なお祭りなのだから食べ物も派手派手なんじゃ、と想像していくとあっけに取られるかもしれません。ひと言でいえば麦のジャムで、なんとも素朴な甘みのある味わいです。
ただこのスマラクは食べるだけではなく、作ることも含めて意義があるのです。ナウルーズでは家族やマハッラ(近所の互助会のようなもの)で集まり、一晩(!)かけて作るのが習わし。私もサマルカンド在住の日本人のお宅に招いていただき、スマラク作りに参加させていただきました。
原料になるのが芝生の一部をはぎとったような見た目の小麦の芽。
(※このときは写真を撮り忘れたので、バザールのスマラク売り場で撮った写真で代用します…。そう、スマラクはこの時期バザールでも売られているのです)
これと小麦、水、油、焦げつき防止のための石を、人一人入りそうなほど大きな鍋に入れます。
あとは十数時間~20時間ほどかき混ぜるのみ…!このとき願い事を心の中で唱えると、その願いが叶うといわれています。このスマラク作りには十数人ほど参加したのですが、一人ずつかき混ぜさせていただきました。あとの参加者は、U-pop(ウズベクポップ)の爆音がかかる中みんなでダンス。儀式めいた厳かなスマラク作りの脇で人々が踊り狂っているのは、なんともシュールな空間でした(笑)
またこのときお酒を飲むと縁起が悪いといわれているようで、全員素面で参加。しかし私は2年前もサマルカンド近郊の村の知人宅でスマラク作りに参加したのですが、当時はウォッカを振舞われてベロベロになった後スマラクをかき混ぜたのでした。あんなことやってよかったのだろうか…。
このようにダンスをしたりしながら家族やご近所さんで一晩中スマラクをかき混ぜ続けるのが、伝統的なナウルーズの過ごし方。今回はスマラク職人を呼んでおり、私たちは徹夜することなく眠りにつくことができました。
明けて翌日。大鍋のスマラクは前日のサラサラとした状態とは大違いで、ドロッとしたペースト状になっています。これをスマラク作りに参加した全員に振る舞い、お開きになります。こういう場以外の職場などでも、どこからかスマラクが回ってくることが多く、気づけば冷蔵庫の中はスマラク入りの瓶がゴロゴロ…ということも。
このように、何でも合理化が求められるこのご時勢になんとも非効率極まりないこのスマラク作り。とはいえ最近はスーパーで年中売られている工場製スマラクも出回り、食べようと思えばいつでも食べられる状況にあります。またついこのあいだ会話した学生さんは、スマラクは美味しくないし好きじゃないと言っており、"若者のスマラク離れ"も始まっているのかもしれません。
けれど、やはり古くから脈々と受け継がれているこのような貴重な習慣はぜひこれからも残ってほしいもの。このスマラク作りを通じて家族やご近所の絆がより深まるという側面もあり(現に私たちもホストや参加者間の仲がこれを機に一気に深まりました)、しばらくは無くなることはなさそうです。
なお今回ホストしてくださった方はサマルカンドで旅行会社やカフェを運営されており、日本人旅行者がこの国に戻ってくるであろう来年にはぜひ観光客対象のスマラク作りツアーを開催したいとのこと。ナウルーズ前後に旅行を計画される方は、ぜひこちらの旅行会社ホームページをチェックしてみてくださいね!
SRP TRAVEL | ウズベキスタン現地旅行会社
それではコルシュグンチャ・ハイル(また会う日まで)!