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サローム(こんにちは)!
世界各国で等しく楽しめる趣味娯楽といえばサッカー観戦。私もスタジアムで試合を見るのが好きで、これまで20ヵ国以上で観戦経験がありますが、試合自体もさることながら現地ファンの応援風景を見るのは本当に楽しいもの。もちろん現在住んでいるウズベキスタンでもこれまで数試合観戦に行きました。
そんなウズベキスタンのサッカー事情について。アジアの中では強豪国に入るのでめちゃくちゃフィーバーしてます!……と書きたいところなのですが、残念ながら盛り上がりはイマイチ。確かに代表チームも国内クラブもそこそこ強くはあるものの、特に代表チームはいつもここぞという大一番で予選敗退してしまい、まだワールドカップやオリンピックといった国際大会のピッチに立ったことはないのです。それゆえウズベク人とサッカートークをすると、いつも自国のふがいなさについての愚痴を聞くことになってしまうのです。
クラブについても、レアルマドリードやバルセロナ、リバプールなど欧州クラブを応援している人は多いものの、ウズベキスタン国内クラブを応援して毎試合足を運ぶという人はかなりまれ。国内リーグ「スーペルリーガ(スーパーリーグの意味)」の試合の観客数は1万人を超えることはほぼなく、3ケタ台の試合もちらほら。平常時はどこも毎試合1万人は入るJリーグがどれだけすごいかを実感します。
しかし、特にサッカーファンの方がウズベキスタンにいらした際は、タイミングが合えばぜひ国内クラブの試合を観戦していただきたいもの(試合スケジュールはサッカー協会サイト https://www.pfl.uz/uzで確認可能。日時が急に変更されることもままありますが…… )。先日観戦した、パフタコール・タシケント(Pakhtakor tashkent)の試合の模様を紹介しましょう。
パフタコールは現在国内リーグ3連覇中のウズベキスタン絶対王者で、ソ連時代は全国リーグ1部に参戦していた伝統クラブでもあります。まだシーズン序盤ですが、この試合時も14チームいるリーグ内で同率首位に位置していました。クラブ名の意味は「綿花労働者」で、この国の主要農産品である綿花にちなんでいます。タシケントではほかにブニョドコルやロコモティフといったクラブがありますが、やはりパフタコールが最も人気。
このクラブが本拠とするのがタシケント中心部にあるパフタコール・マルカジー・スタジアム(パフタコール中央スタジアムの意味。または単にパフタコール・スタジアムとも呼ばれる)。長らく代表チームの本拠地としても使用され、2009年にはワールドカップのアジア予選ではわれらが日本代表もここでウズベキスタンと対戦。日本が勝利し、南アフリカワールドカップ本大会への出場が決まった縁起のいい競技場でもあります。
試合観戦の際は、まずはチケットを買わねばなりません。代表戦などであればともかく、パフタコールの試合なら悲しいかなチケットが売り切れることはまずないので、試合直前に窓口で買えば大丈夫です。このページ最下部の地図内で、Islam Karimov通りと運河が交わる地点あたりにチケット窓口があります。クラブショップと小さなカフェも併設。
チケットはどの席でも1枚3万スム(2022年4月現在のレートで約300円)。一応ゾーンが指定されていますが、しっかりチェックされることはほとんどなく実質全席自由席です。
他国ではゴール裏が熱心に応援するコアなサポーター用ゾーンになることが多いですが、ここではバックスタンド中央(10~15番セクターあたり)にパフタコールのコアサポーターたちが集まります。ひとつしかない窓口にファンが殺到する殺伐とした空間ですが、彼らの圧に負けずに頑張ってチケットを買いましょう。
試合日以外もオープンしているこのクラブショップでは、ユニフォーム(1着20万スム)やタオルマフラー(1枚10万スム)などのチームグッズが買えます。なぜかライバルチームのはずのロコモティフのユニフォームも売っていました。
ウズベキスタンでは欧州クラブのユニフォームはどこでも売っていますが、このような国内クラブのグッズを売っている店はほぼ見つからないので、ここは本当に貴重なお店です。
グッズを買ったらさっそくスタジアムに向かいましょう! この日行った試合は、普段の試合の様子からすれば信じられないほどの数のファンが集まっていました。というのも、この日のお相手は地方都市ナマンガンを本拠とするナフバホールというクラブ。このクラブは優勝経験がないのにもかかわらず、この国では珍しくファンが熱狂的なことで有名なのです。今回も金曜19時のキックオフにもかかわらず、はるばる車で4時間もかかるナマンガンから多数のファンが押し寄せたようでした。
私もスタジアムの前をウロウロしているとナフバホール側のメディアインタビューに捕まり、少し話すことに。パフタコールの応援をする気満々だったのですが、「どっちが勝つと思う!?」と聞かれたので空気を読んでナフバホール、と答えざるを得ませんでした。途端にドッと沸く周囲のナフバホールサポーター。試合ではちゃっかりパフタコールを応援しましたが、その様子が彼らに見つかりませんように…..
スタジアムに入ってもナフバホールファンの数と野太い声援が目立ちます。コアなサポーターに限ると間違いなくパフタコールファンの数より多かったでしょう。神宮球場や横浜スタジアムを阪神ファンがジャックしてしまうようなものでしょうか。
なんと試合途中からは紙吹雪や花火を使った応援も。
とはいえパフタコールサポーターもかなりの数。10年前もここでパフタコール戦を観戦したことがあるのですが、当時より間違いなくファンの数が増え、チャント(応援歌)の種類も増えていました。
そしてさすがとにかく明るいウズベク人たち、彼らに混じって応援しているとどんどん声をかけてきます。自分の好きなチームを外国人も応援しているのがうれしいのでしょうか。海外サッカー観戦の際はいつもスタジアムでのファンとの交流を楽しみにしている私にとっては、楽しい限りです。
なおJリーグではスタグル(スタジアムグルメ)を楽しみにしているファンの方も多いですが、残念ながらここでのスタグルらしきスタグルはクラブショップ隣の小さなカフェ、スタジアム手前で売っているポップコーン、そしてスタジアム内ではこのテントで売られているのみ。定番スタグルはヒマワリの種で、座席付近はたいてい種の殻だらけです。アルコール類も売っていません。
またペットボトルや瓶入りの飲み物を持ってスタジアムに入ろうとしても、入口で没収されてしまうのでご注意。
肝心の試合内容ですが、押せ押せでゴールに迫るものの決定力が足りないパフタコールと必死に守るナフバホールという構図で時間がすぎていきました。ところが残り10分で、パフタコールのセルビア人エースFWチェランが均衡が破る値千金のゴール! そのまま守りきったパフタコールが1-0で勝利、まだ4試合目ですが同率首位をキープ。
試合終了後に選手達がファンのもとに挨拶に来ると、マラツィー!(よくやった!)と言って出迎えます。勝ち試合を見られて本当に何よりでした。
ちなみにこの試合の観客動員は1万2000人を超えていたそうです。前述のとおりイマイチ盛り上がりに欠けるウズベキスタンサッカーで、こんなに観客の数が多い試合を見られるなんて感謝感激です。
なお現時点で27試合を終えたウズベキスタン1部リーグで、この試合は観客動員数3位。1位と2位はナフバホールの主催試合で、最も観客動員が多かった試合は2万人弱だったそうです。絶対に一度はナフバホールの本拠地で観戦しなければ……。
最後に日本とウズベキスタンのサッカー関係について少し説明しましょう。これまで代表戦や、クラブ大会のACL(アジアチャンピオンズリーグ)などでたびたび相まみえる両国。少しでもサッカーに詳しいウズベク人は日本人選手やJリーグクラブの名を知っており、この国で観戦した試合でもファンが私にホンダ! オカザキ! ミナミノ! 浦和レッズ! ガンバ大阪!などと叫ばれることがたびたび。ホンダはまだ現役なのか、とっくに監督とかになったと思ってたから驚いたよ!なんて言われたことも。
またウズベキスタンでプレーした日本人選手も数名いらっしゃり、なかでも柴村直弥選手はパフタコールやブハラで2年半プレーした名選手です。さらに今年、ウズベキスタン女子代表監督に本田美登里監督が就任といううれしいニュースも。また、これまでJICA青年海外協力隊サッカー隊員が各都市にたびたび派遣され、ウズベキスタンサッカーの発展に尽力してきました。これからもよきライバルとして、両国間のサッカー分野での交流が続くことを願っています。
今年の6月には、23歳以下日本代表がアジア王者を目指すU-23アジアカップという大会がウズベキスタンで開かれる予定で、ぜひ若き日本代表の応援に行きたいと思っています。
なお私の個人ブログでは、これまでウズベキスタンで観戦した試合や訪れたスタジアムの詳細レポートを綴っています。ニッチな記事すぎて需要があるのかどうかわかりませんが、さらにウズベキスタンサッカーについて知りたくなった方はぜひご覧ください!
海外サッカー観戦記12 ウズベキスタンリーグ・パフタコールvsシュルタン@タシケント
海外サッカー観戦記24 ウズベキスタンカップ・AGMKvsナサフ@アルマリク
海外サッカー観戦記25 ウズベキスタンリーグ・パフタコールvsナフバホール@タシケント
海外サッカー観戦記26 ウズベキスタンリーグ・オリンピックvsキジルクム@タシケント
海外サッカー観戦記28 ウズベキスタンリーグ・ブニョドコルvsナサフ@タシケント
日本一詳しいウズベキスタンサッカースタジアムガイド!
それではコルシュグンチャ・ハイル(また会う日まで)!