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サローム(こんにちは)!
イスラム教徒のウズベク人が多数派の国ウズベキスタンですが、かつてシルクロードを通じて多くの民族が行き交い、またソ連に属していた歴史もあって今もあらゆる人種が住む多民族国家という一面もあります。その中にはもちろんキリスト教徒も。
彼らの信仰のよりどころになっている教会は国内各地にありますが、中でもクリスチャンの比率が他地域より多いタシケントにはさまざまな宗派の教会があります。私たち日本人にとっても教会という場所は興味深い空間であり、またイスラム教の国で見る教会やその信者たちの姿は欧米などの教会とはまた違った印象を与えてくれるものです。というわけで、意外に思われるかもしれませんがタシケントでは教会巡りも楽しめるのです。特に各教会で礼拝が行われる日曜午前が狙い目。
それでは旅行者の方にぜひ見学していただきたい、タシケントの個人的おすすめ教会を紹介してまいりましょう。
ロシア系住民が多いタシケントでは、宗派別に見ると当然ながらロシア正教の教会が最も多いのですが、ここがウズベキスタンのロシア正教の総本山となる大聖堂。黄金のドームとスカイブルーの外壁のコントラストがなんとも美しい教会です。創建は帝政ロシア時代の1871年で、なんと150年以上の歴史をもちます。
起源はロシア軍が建てた病院と墓地に併設された教会で、現在もすぐ近くに軍病院があり、この教会自体もГоспитальная церковь(病院の教会)との異名を持ちます。
毎週日曜の礼拝にはロシア系住民が集まり、聖堂は礼拝者で埋め尽くされます。祭壇や数々のイコンを鑑賞して聖堂を満たす香炉の匂いを嗅ぎ、礼拝者の歌声で響く聖歌を聞いていると、クリスチャンでなくとも心が澄み渡るような気分に。
敷地内ではヤルマルカ(マーケット)をやっていることも多く、ピロシキなどのパンやロシア産はちみつ、マトリョーシカなどを安くゲットできます。クリスマス(ロシア正教では毎年1月7日)やロシア正教のイースター・ペサハには特別礼拝などが開かれるので、スケジュールが合う方はぜひ訪問を。
こちらもロシア正教の教会で、1902年創建と大聖堂同様由緒ある教会。タシケント第一墓地の名をもつ広大な墓地、ボトキン墓地の中にあります。小さいけれど鮮やかな青い屋根の尖塔がいくつも立っているのが印象的。大聖堂に比べると小ぢんまりとした教会ですが、やはり内部も見応えがあります。
こちらは堂々とした出で立ちの、石造りが美しいカトリック教会。1912年設立と、やはり100年以上の歴史があります。建築家はポーランド人、最初の司祭はリトアニア人だったとのこと。地下にある入口から入場し、階段を上って広々とした聖堂に入ると、美しいステンドグラスやオルガンに目が惹かれます。ただソビエト時代は教会としての機能が失われて倉庫などとして使われており、独立後に再び整備されて信徒が集まるようになったそう。
ここでは毎週日曜に英語、ロシア語、韓国語、そして月に1回のみですがポーランド語と、なんと4言語のミサが行われています。まさに多民族都市タシケントを象徴するような教会といえるでしょう。私はロシア語と韓国語のミサを見学しましたが、ロシア語ミサは出席者数十名ほどとなかなかの盛況ぶり。韓国語ミサは出席者は多くなかったものの、韓国語で賛美歌を歌っている様子が見られました。
また教会敷地内にはポーランドの石碑が。第二次大戦時にポーランド兵士が捕虜としてこのタシケントの地へ連行されたことが、ここに記されています。
カフカスのユダヤ人とも呼ばれ、全世界にあるコミュニティの結束力と信仰心のあつさで知られる民族アルメニア人。本国アルメニアは、世界最古のキリスト教国とされています。ウズベキスタンにもアルメニア系住民が数万人ほど住んでいるといわれ、タシケントとサマルカンドにアルメニア教会があります。このうちタシケントにあるのが、市内東部に位置する聖フィリップ教会。
アルメニアといえば独特の形のアルメニア文字。私も十年以上ほど前アルメニアに旅行した際、この不思議な文字の虜になってしまいました。もちろんこの教会でもこの文字を見ることができます。
2年ほど前にサマルカンドのアルメニア教会を訪れた際、タシケントの教会とサマルカンドの教会の間で日曜礼拝が隔週で行われている旨を聞いていたのですが、先日幸いにもここの礼拝を見学することができました。決して広くはない空間で十数人のアルメニア系住民が集まっているのみでしたが、礼拝(アルメニア語で行われていた)も賛美歌の歌唱も熱気が入っており、心打たれるような雰囲気でした。
またおみやげコーナーもあったのでのぞいてみると、売られていたマグネットに描かれていたのは国旗と国章、そして「アルツァフ」の文字。このアルツァフとは、アルメニアが支持している自称独立国ながらアゼルバイジャンとの係争地であり、2020年にはアルメニアとアゼルバイジャンの間で大規模な紛争が起こってしまった地域ナゴルノ・カラバフの別名なのです。
なおこのアルメニア教会については、前特派員の齋藤さんが詳しいレポートを書かれていますので、ぜひあわせてご覧ください。
タシケントでアルメニア教会を探す旅(前編)
タシケントでアルメニア教会を探す旅(後編)
最後に紹介するのが、ウズベキスタン唯一のドイツ系教会。タシケントの町のど真ん中にあり、往来が激しく大きな施設やおしゃれなレストランなどが建ち並ぶ通りにひっそりと建っています。
この教会は現在まで建物が残っている教会としてはタシケントで最も古く、1896年の創建。ほとんどの建物が崩壊した1966年の大地震でも無事だったそうです。
設立者は当然ながらドイツ人。当時はこの地にドイツ系住民がそれなりにいたそうですが、第二次大戦期にソ連と敵対国民になってしまったドイツ人の多くが本国へ引っ越し、戦後閉鎖されて倉庫などとして使われていたとのこと。独立後の90年代に教会としての活動が再開しましたが、タシケントのドイツ系住民はさらに減る一方で彼らの母語もロシア語のため、先日礼拝を訪問したときは参加者は10人足らずで礼拝もロシア語で行われているという状況(聖書はドイツ語・ロシア語の2言語併記)。先述のアルメニア教会と比較すると、どうしても寂しさがぬぐえませんでした。
ドイツ大使館からのフォローもなく、管理費用が足りず困っているという話も聞いたので、訪問の際はぜひ少しでも寄付を。
タシケント市内にはほかにも小規模なロシア教会がいくつかあるので、ご興味のある方はぜひ。ただし上記で紹介した教会を含め、小さい教会では外国人や旅行者に慣れていないことも多いので、スタッフに出会ったら念のためМожно войти?(モージナ・ヴァイチー?:中に入っていいですか?)と聞いてみることをおすすめします。
なお各教会に行かれる際は露出度の高い服は控え(ロシア教会やアルメニア教会では女性はスカーフなど頭を覆うものが必須)、静かに見学するようにしましょう。また写真撮影は禁止のところが多いので、どうしても撮りたければスタッフにМожно сфотографировать?(モージナ・スフォトグラフィーラヴァチ?:写真を撮ってもいいですか)と必ずたずねましょう。
それではコルシュグンチャ・ハイル(また会う日まで)!