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サローム(こんにちは)!
数々の名車を生み出したかつての超大国、ソ連。ソビエト・ロシアクラシックカーは日本でも多くのファンがいます。当時のソ連は気軽に旅行することができず、実物を見る機会が限られていたため、よりミステリアスかつ魅力的に見えるのかもしれません。
ご存知ソ連の構成国のひとつだったウズベキスタンですが、今回ご案内するのはその筋の方々必見のタシケント科学技術博物館。ソビエト・ロシア車マニアにとって垂涎でしかない空間がここにあります。あわせて、タシケントの町角で見つけた古格好いい車もご紹介しましょう。
タシケント科学技術博物館(英語でTashkent Polytechnical Museum)があるのはティムール広場から徒歩5分の好立地。2万スムの入場料を払って1階の展示スペースへ入ると、向かって右はいきなりクラシックカーいっぱいの世界。20世紀はじめの自動車黎明期の名車として、100年以上前に販売されたフォード・モデルT(T型フォード)や、何十年もの間生産が続いた有名大衆車であるフォルクスワーゲン・ビートルなどが展示されています。
その奥に展示されているのがピカピカのソビエト車。この中で最も古い車のひとつが、軍用ジープのGAZ-67です。この車の製造が始まったのは第二次大戦中の1943年で、そのまま戦場に投入されました。どんな悪路でも進んでいきそうないかついフォルムで、いかにもソ連の軍用車両といった顔つきです。
戦後すぐ大衆車として普及したのが、写真右のGAZ M-20ポベーダと左のモスクヴィッチ407。ポベーダとは「勝利」を意味し、第二次大戦戦勝国になったことからのネーミング。このモデルは約10年間で生産台数20万台以上と大量生産されました。一方モスクヴィッチとは「モスクワっ子」を意味し、安価な小型乗用車として国民に親しまれました。
そしてこちらがチャイカ GAZ-13。根強いファンが多い名車中の名車ですが、その理由のひとつはソ連共産党のお偉いさんや、各国の大使御用達の車だったから。パレードや外国の要人来訪時にも使われたとのことで、見るからに気品あるオーラが漂っています。
ちなみにチャイカとはカモメの意味。後継モデルのチャイカ GAZ-14もその隣に展示されています。
このコーナーではクラシックカーだけではなく、そのほかの乗り物についての展示もあります。帝政ロシア時代に開業したトラム(2016年に廃止)や、戦後運行を開始したトロリーバス(2010年に廃止)は、長い間市民の足として親しまれてきました。
この国は農業国ということで、トラクターについての展示も。村に最初のトラクターがやって来て踊り狂う村人たち、というシュールすぎる再現図もありました。
一方博物館に入って左側のゾーンは独立後生産された車両の紹介。国内の自動車工場の模型などもありますが、目立つのはネクシア、スパーク、コバルト、ラセッティ、マリブといったシボレー車の展示の数々。ウズベキスタンに旅行・滞在されたことのある方はお気づきになったかもしれませんが、この国はかつては韓国メーカーの大宇ブランド、現在はシボレーブランドの車が圧倒的に多いのです。これらは国内東部アンディジャン州のアサカという町にあるウズオート・モーターズという企業の工場で生産されたもの。
ウズベキスタンは外国車にかかる関税が極端に高いため、これら安価で買えるシボレー車が大多数というわけなのです。もちろん少数ながらBMWやトヨタ車などを持っている人もいます。
この中でもレアなのが、ボディにマジックペンで何やら書かれたスパーク。実はこれは2010年に生産されたスパーク第一号の車で、当時大統領だったカリモフ氏がサインしたものなのです。こんなサインがある車、世界でここだけでしょう(笑)
こちらは乗り合いバンであるダマス。タシケント市内ではもっぱら荷物の運搬用に使われいますが、地方に行くほど出現率がアップし、自家用車として一家に一台持っていたり、バスの代わりに走っていたり……とオールマイティな車。町によっては道路や駐車場がこのダマスで埋め尽くされていることもあります。大家族が多いウズベク人にはぴったりの、この国で愛され続けている車です。
2階に上がるとテーマが一転、おもしろ科学コーナーに。自転車発電(体重50kg以下の訪問者に限り体験可能)や一面鏡張りの迷路、全てが逆さまになった部屋など、子供も大人も楽しめるエリアになっています。子供の頃に社会見学でこのような場所に行った方もいるのでは?
最後にタシケントで撮影した、注目すべき車についてご紹介。この博物館では展示がありませんが、ソビエト車の代表的な自動車ブランドといえばジグリ(ラーダ)。こちらもダマスと同じくウズベキスタンでは主に田舎でよく見られますが、タシケントでもちらほら見ることができます。白い車がほとんどのシボレー車と違い、緑や青など車によって色が違うので目を惹きます。
またタシケント市内にはジグリの名を冠したバーもあります(17. ソ連ノスタルジーあふれるタシケントのおすすめ飲み屋・ジグリバー)。
ザ・ソビエト車! と言いたくなるようなこのバン。愛称をブハンカといいますが、これは塊のパンの意味。さすがにこの車はタシケントでは激レアで、見かけたらかなりラッキーです。
そして博物館にあったソ連製ジープですが、たまにタシケントの道路わきで放置されているのを見かけます。しかもпродаётся(売り出し中)とプレートが貼られていることも。果たしていくらするのか、そして需要はあるのか見当もつきませんが、気になる方は入手方法を探ってみては。
以上、充実の車コレクションがあるタシケント科学技術博物館を、ウズベキスタンの車事情とともにご紹介しました。自動車ファンの視点から見てもなかなか興味深い町であるタシケント。ぜひ道行く車に注目してみてください。
それではコルシュグンチャ・ハイル(また会う日まで)!