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7月1日(金)にショックなニュースが飛び込んできました。ウズベキスタン西部、カザフスタンやトルクメニスタンと国境を接し、ウズベキスタン内の自治共和国として一定の自治権が与えられている地域であるカラカルパクスタン共和国で、首都ヌクスなど各都市で大規模デモが発生したとのことでした。ウズベキスタン政府が提示したウズベキスタン共和国憲法の改憲案に、カラカルパクスタン共和国の自治権を縮小する旨の条項が含まれていたとのこと。自治権の制限や独立権の剥奪ともとれる内容ではないか、と不満を持った人々が抗議集会を開き、大規模デモに発展したとのことです。この混乱の中で死傷者が出たという情報もあります。
これを受けてミルジヨエフ大統領はこの条項を取り下げるとの声明を出しましたが、その発表と前後してカラカルパクスタン共和国全土に非常事態宣言が発令されました。発令期間は8月2日の0時まで。21時から7時までの夜間外出禁止令、カラカルパクスタン共和国への出入りや地域内の移動の制限などが主な内容となっています(https://kun.uz/uz/news/2022/07/02/qoraqalpogiston-respublikasida-favqulodda-holat-elon-qilindi 参照)。移動にどれほどの制限がかかるのかまだ不明ですが、すでにカラカルパクスタン共和国発着の列車やタシケント―ヌクス間国内線の運行停止、カザフスタン国境の閉鎖が発表されています。
残念ながら、当面の間カラカルパクスタン共和国への旅行や観光は見合わせたほうがよさそうです。ヌクスの「サヴィツキー記念カラカルパクスタン共和国国立美術館(サヴィツキー美術館)」やムイナクの「アラル海の船の墓場」など、魅力あふれる見どころがいくつもある地域なのですが……。
カラカルパクスタン共和国の民族構成を見ると、ウズベキスタン全体で見ると少数民族にあたるカラカルパク人、そしてウズベク人、カザフ人がそれぞれ3割前後(http://geografiya.uz/h-viloyatlar/1186-qoraqalpogiston.html 参照)。私は今年4月にここを訪れたばかりですが、少なくとも一端の旅行者から見ると彼らがうまく共存しており(ウズベク人だが母語はカラカルパク語、などという人も多いとのこと)、穏やかで優しい人が多い好印象の地域でした。また積極的に独立運動をしている様子も全くありませんでした。それだけに、今回のニュースは私にとってかなりの衝撃でした。
私は政治や民族問題についてはそこまで深い知見がないということもあり、この記事ではこの問題の詳しい背景には触れないでおきます。ただありきたりの言葉ですが、今回の騒乱でこれ以上誰も亡くなることなく、そして民族同士の遺恨も残ることなく、この地に早く平穏が訪れることを願うばかりです。
ガイドブックや旅行サイトではウズベキスタンは比較的治安のいい国として紹介されることが多いですが、地域や時期によっては状況が一変し、突如このような事態に陥る場合もあります。今回の件でも、もしカラカルパクスタンに旅行者の方がこの時期にいらっしゃれば、生命に危険が及んだり、他地域への移動ができなくなっていた恐れがあります。ウズベキスタンに限らずですが、ご旅行の際は外務省の海外安全情報配信サービス「たびレジ」(https://www.ezairyu.mofa.go.jp/tabireg/index.html)に登録しておき、渡航前も現地滞在中も、治安に関する情報収集は欠かさないことをおすすめします。身の安全に関わるリスクを少しでも減らすために、ぜひ万全の対策をなさって旅行を楽しんでくださいね。