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(※2024年2月追記:残念ながらこちらのお店は2023年クローズしたとのこと。)
サローム(こんにちは)!
ダゲスタンという地域をご存じでしょうか? 中央アジアのスタン系諸国のひとつでウズベキスタンの近隣にある……わけではなく、位置しているのはロシア国内。私が勝手にロシアのスタントリオと呼んでいるロシア内の3つの共和国がタタールスタンとバシュコルトスタン、そしてこのダゲスタンなのです。タタールスタン共和国やここの主要民族のタタール人の味、タタール料理がタシケントで食べられることを先月解説しましたが(64. タシケントで味わえるタタール料理はロシアと中央アジアのいいとこ取りな味!?)、さらにマイナーでニッチにもほどがあるダゲスタン料理のレストランもタシケントにあります。そのお店の名が「パパーハ」で、ティムール広場と繁華街オイベック・ミラバッド地区の中間地点という便利な立地にあります。
お店の詳細の前にまずダゲスタン共和国とはどこぞや、ダゲスタン料理とは何ぞや? アゼルバイジャン、ジョージア、アルメニアの3カ国はカフカス(コーカサス)三国といいますが、もともとカフカス地方とはその北のロシア領内をも含む呼称。このロシア側の地域は北カフカスと呼ばれ、その中にあるのがダゲスタン共和国です。南側はアゼルバイジャン国境、東側はカスピ海に面し、「山の国」という意味の通り険しい山岳地帯が国土の多くを占めています。また古くからこの山々が人々の交流を妨げていたため土着の文化が色濃く残り、世界でも屈指の多民族・多言語地域となっています。
ダゲスタンの文化はやはりロシアよりもアゼルバイジャンやジョージアの方が近いようで、ここの店名のパパーハもカフカス地方一帯の伝統帽の毛皮の帽子のこと。料理もカフカスならではの食材や味付けで、ジョージア料理を食べたことがある方ならイメージしやすいでしょう。ただダゲスタン料理自体は日本で食べられる機会がほとんどない激レア料理で、ダゲスタンに行ったことのある方もなかなか珍しいためこの料理を味わったことのある日本人はほぼいないはず。だからこそ、タシケントで食べられる外国料理の中ではおすすめ度が最高レベルの料理なのです。
それでは小ぢんまりながらおしゃれな雰囲気のお店に入ってみましょう。店内で迎えてくれるのは、お店の名前になったパパーハなどダゲスタンやカフカス地方らしい品々。軽快なカフカス音楽がBGMでかかっているのも相まって、今にもキレッキレのカフカスダンサーが出てきそうです。
メニューはロシア語表記のみで写真もありませんが、店主が優しく説明してくれるのでぜひおすすめ料理を聞いてみましょう。
ダゲスタン料理ビギナー(私もですが)の方がまずおさえておくべき料理がヒンカル。民族料理に詳しい方なら、同じカフカス地方のジョージア料理のヒンカリと同じでしょ?と思うでしょうが、実際見るとびっくり。粉もの料理であるのはヒンカリと同じですが、なんと生地と羊肉の塊がセパレート状態、別々で出てくるのです。生地をディップするのは甘くないヨーグルトやクルミペーストのソースで、いかにもカフカスらしいお味。肉はゆで汁につけて食べます。
もうひとつの代表料理がチュドゥ。ほかの地域でもよくあるミートパイのような料理ですが、生地がトゥルントゥルンで弾力があり、食べ応えあるおすすめの一品。
またカフカス共通の料理であるドルマもおいしく、ぜひ食べてみたいものです。
さらにお酒好きにはうれしいことに、このお店はビールの種類が豊富。ほかのお店ではなかなか置いていないクラフトビール各種が飲めるのです。ダゲスタン料理とクラフトビール、何という個性のぶつかり合いでしょう……。
店主もダゲスタン出身で、いつかぜひ旅行に来てくれとおっしゃってくれました。私も以前からずっと行きたいと思っていた地域なのですが、もともとロシアの中では治安的に不安定といわれている場所で、さらに昨今の国際情勢でロシア自体への旅も遠のくばかり。いつか必ず行って本場の味を食べてみたいものです。
それではコルシュグンチャ・ハイル(また会う日まで)!