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サローム(こんにちは)!
日本の大都市よりもずっと公園が多い印象のタシケント。市民の憩いの場となり、休日は家族連れでにぎわう公園が多いですが、中にはニッチな分野のファンを歓喜させるような特殊な公園もあります。今回ご紹介する戦勝記念公園がまさにそれで、軍事マニアやいわゆるミリオタ(ミリタリーオタク)の方にはぜひおすすめしたい場所なのです。
ウズベク語でG'alaba bog'i(ガラバ・ボギ)、そしてロシア語でПарк победы(パールク・パベーディ)と呼ばれるこの公園。パベーディとは「勝利の」という意味ですが、これ単体で第二次世界大戦(ソ連の呼び名でいうと大祖国戦争)の勝利を表すこともあるのです。同名の公園はロシアをはじめ旧ソ連諸国全土にありますが、タシケントにこの戦勝記念公園ができたのは2020年5月9日と最近のこと。この5月9日は旧ソ連界隈に造詣の深い方ならご存じ、第二次大戦におけるソ連の戦勝記念日です。ウズベキスタンでは「追憶の日」という名前の祝日になっています。
外国人旅行者の入場料は8万スム(2022年11月現在のレートで約1000円)。かの有名な世界遺産レギスタン広場の入場料の約2倍となかなか強気な価格ですが、ソ連時代の、そして独立後のウズベキスタンの戦争・軍事関連の展示をここで余すことなく見ることができるのです。
東側入口から入ると重々しい大通りがまっすぐに延びています。この大通りでは陽気な曲調のウズベク軍歌(?)が流れており、シュールで妙なギャップがあります。
東側入口から入ってすぐ、大通りの北側には塹壕のようなものが掘られ、銃弾が飛び交う効果音も流れていました。私が行ったときは家族連れは見かけませんでしたが、ここで塹壕ごっこをする子供もいるかもしれません。
そして大通り南側にあるのがウズベキスタン軍の戦車、大砲、そして戦闘機といった兵器たち。あいにく私は兵器に関しては全くのド素人なので詳しく解説できないのが残念ですが、好きな方にとってはずっと見ていられるはずです。
さらに進むと、駅に止まった機関車が出現。こちらは戦時中の駅を再現した空間です。
駅の中も忠実に再現され、出征する兵士のマネキンや彼らを見送る家族の絵を見ることができます。また実際に戦時中兵士として従軍していたウズベク人鉄道員に関する展示もありました。
大通りに戻ってどんどん進むと、モニュメントや像がめくるめく出現。こちらも険しい顔をした出征兵士の家族の像や大きな手だけのモニュメントなど、一見怖い作品がそろっています。戦争をテーマにしたものばかりなので当然なのですが。
大通りの突き当りは「栄光の博物館」という名の博物館になっており、その上には兵士たちの像と白亜の塔が立っています。この塔に向かって登っていくこともできますが、見切り発車でオープンしたのか、私が行ったときはむきだしのコンクリートになっていた塔の周りに職人さんがタイルを敷き詰めているところでした…。
それでは博物館に入ってみましょう。いきなり現れるのは球型のモニュメント、そのわきにはお土産屋さん。ここでぜひミリタリー趣味の方が喜びそうなお土産物を取り揃えてほしいところなのですが、今のところあったのは軍事ものと全く関係ない民族衣装や布地ばかりでした…。
そして展示スペースへ。1階は壁や天井が黒く塗られた暗い雰囲気が漂いますがそれもそのはず、人類最悪の戦争といわれた第二次大戦の独ソ戦関連の展示エリアなのです。独ソ戦の流れと、この戦争にウズベク人兵士たちがどのように関わっていたかがよく分かる内容になっています。
またこの国の博物館では珍しく、英語表記が充実しているのもありがたいところ。残念ながらウズベキスタンでは外国人旅行者が訪れる博物館でもウズベク語・ロシア語表記しかないことが多々あるのですが、この博物館は外国人相手にも気合が入りまくっているのが分かります。
しかしレニングラード包囲戦やスターリングラード攻防戦といった悲惨な戦いにも、ウズベク人兵士が動員されていたとこの展示を見て初めて知りました。戦争への徴兵という体験は誰にとっても辛く厳しいものですが、文化も言語も故郷と異なる遠く離れたロシアで、慣れない寒さの中戦わざるを得なかったウズベク人兵士たちの苦しみは、心中察するに余りあります。兵士が家族に宛てて書いた手紙もここに残されており、70年の時を超えて寂しさや悲しさがひしひしと伝わってきます。
2階は独立後のウズベキスタンの軍事に関する展示スペース。軍装や武器、勲章メダルなどを見ることができます。
最後に公園内の食事について。大通りの北側に、その名もカフェ・ズヴィズダー(ロシア語で星の意味)という名の軽食堂があり、ここで食事をとることができます。
が、私の訪問時はお客はほぼいなかったはずなのに満席、しかも軍服を着た軍人さんの多いこと。戸惑っていると近くのテーブルに座らされ、このプロフ食べて!とのこと。他にメニューは?と聞くとこのプロフしかないと言います。おかしいなあ…
と思ってよく聞くと、この公園だか隣の軍事施設だかのお偉いさんの誕生日パーティーをやっていたよう。しかもこちらがウズベク語を話すと知るや、ぜひスピーチしてあげて!と言われ、全く知らないウズベク人のために誕生日祝いのお言葉を差し上げることになったのでした(笑)
私みたいな素人にとっても興味深いものばかり、そしてその筋の方なら一日中いても飽きなさそうなこの公園。今までありそうでなかったタシケントの新しいかつディープな見どころとして、今後旅行者でにぎわうかもしれません。
それではコルシュグンチャ・ハイル(また会う日まで)!