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79. 絶えず変わり続ける発展著しい大都市タシケント 12年前と今の風景を比較してみた

伊藤 卓巳

伊藤 卓巳

ウズベキスタン特派員

更新日
2022年11月29日
公開日
2022年11月29日
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サローム(こんにちは)!

初めていらっしゃる方は誰もが驚くタシケントの都会っぷり。古代シルクロードの面影が残る歴史とロマンの国…というイメージで来ると、ビルが建ち並び車があふれるタシケントの光景を見て面食らうのも当然でしょう。
人口200万を超える中央アジア最大の都市で、今も発展を続けるウズベキスタンの首都タシケントですが、街の景観がガラッと変わったのはここ10年ほどのこと。私が初めてウズベキスタンを訪れたのは12年前の2010年ですが、当時とは今ほどの都会らしさはなく、いい意味で古臭さが残り日本の都市とは全く異なる独特の雰囲気を持った町でした。これが2か国目の海外旅行だった私にとっては見るもの感じるもの全てが新鮮で、この感情が以降の旅馬鹿人生につながっていくことになったのでした。
ありがたいことに当時撮った写真がまだ残っているので、現在のタシケントの写真を比較してその変貌具合を皆さんにお見せしましょう!

当時と今のタシケントの大きな違いを挙げるときりがありませんが、まず挙がるのが何といってもトラム(路面電車)の有無でしょう。旧ソ連圏の大都市にはたいてい道の真ん中をガタゴト音を立てて走るトラムがある(あった)のですが、タシケントも例に漏れずたくさんの路線が市内を網羅していました。

タシケント駅近くの鉄道博物館前に停まっていた、レトロな車両のトラム

しかし車がどんどん増えていくタシケントでは次第に不便な存在になっていき、2016年に最後の路線が廃線。タシケントからトラムが姿を消してしまいました。

面白いのがその後の経緯で、何と当時トラムのなかったサマルカンドの町で路線が敷かれることになり、タシケントから車両を持ってきたのです。現在サマルカンドトラムは2路線運行中で、タシケントで活躍していたトラム車両が第2の人生を送っています。
さらに今年、大統領によりタシケントトラムを復活させるという計画が発表されました。ただ渋滞が深刻な問題になっているほど車が増えまくってしまったタシケントでは、このニュースをあまり歓迎していない市民が多い、、という話ですが…。

ミラバッド地区、グランドミールホテル前の交差点にて。かつてここにはトラムの線路や停留所がありましたが、
今は跡形もなくなくなっています…。

ただ日本や欧州では、コストがかからず環境にも配慮した交通機関としてトラム再興の動きが高まっており、タシケントでもまたトラムが走る可能性が出てきたというのはとても興味深いところです。この町で渋滞の脇をトラムがすいすいすり抜けていく様子はなかなか想像できませんが。

トラム廃線跡もわずかながら残る。こちらは市内南部、フェルガナ通り脇の橋梁跡

このほか12年前の写真を見返してぜひ取り上げたかったのが、市内の主要バザールの一つアライバザール。かつて訪れたときは入口にOLOY BOZORI(ウズベク語でアライバザールのこと)と書かれた大きなアーチがシンボルのように立っていました。これをくぐってバザールに入ると、モザイク画が美しい屋根に覆われた食料品売り場。当時はさっそく美味しそうな大きいスイカを見つけたので一切れ分だけもらうつもりで買うと、半玉分渡され困惑した記憶があります。

現在は入口のアーチは撤去され、食料品売り場の屋根も新しいものに代わっています。売り場の配置も大きく変わっているほか、当時はなかったスーパーマーケット「カルジンカ」がバザール脇に建っています。

ウズベキスタンではタシケントでもそれ以外の地方都市でも、近年古い建物を取り壊し新しく整備したバザールが多くなっています。かつての姿を見られないのは残念ですが、利用者にとっては便利なのでしょう。
余談ですが、タジキスタン各都市のバザールでは今でもまだまだソビエト時代の建物が健在でした。隣国なのにバザールの建物一つをとってもこんなに違うとは興味深いですね。

一方、チョルス―バザールのシンボル、青いドームの建物は12年前と同じで、喧騒に包まれるカオスな感じも当時と変わりありません。ここはぜひ数十年先もこのままであってほしいものです。

2010年当時のチョルスーバザール。夕暮れ時に行くと売り場がほぼ開いておらず、あまり楽しめませんでした…。
現在のチョルスーバザール

そのチョルスーバザール横にあるタシケントきっての由緒あるモスク、ジュマ・モスク。こちらも昔も今も礼拝者の姿は絶えず、外観も大きく変わっていないものの、屋根の色がシルバーから深緑色に。
近年ウズベキスタン全体でモスクの改修や建設が相次いでいますが、これら新しいモスクはほぼ屋根の色が深緑色、青緑色、ライトブルーのいずれかなのです。シルバーの屋根のモスクや宗教建築が残っていれば、まだ改修されていない貴重なものという証です。

12年前のジュマ・モスク
ほぼ同じアングルから撮った現在のジュマ・モスク

最後にお見せしたいのが、このチョルスーバザールからほど近い旧市街エリア。ザルカイナル通りを中心として縦横無尽に路地が広がるこの地域は、タシケントでは珍しく中世の趣を感じられるエリアで、『地球の歩き方』でもチョルスーバザールからハスティマム広場へ至るおすすめの散策スポットとして書かれています。前特派員の齋藤さんもここの魅力を記事にされていました(路地を抜けると、そこは…? 旧市街の歩き方)。

私が訪れた時も、迷路のような路地を気の向くまま歩くと井戸端会議してるおばちゃんやサッカーする子供たちなどに出会い、タシケントの中でも特に印象深かった場所でした。

現在の姿はどうでしょうか。チョルスーバザール方面から入るとまだ当時と変わらない風景が残っているものの、その奥には工事中の巨大な建物がそびえ立っています。来年の完成を目指して建設が進むイスラム文明センター(Center of Islamic Civilization)です。

さらに進むと路地が高いフェンスで止められ、家々も取り壊されている光景を目にします。このセンターを中心とした再開発が現在進行中のようです。
この旧市街の入口でたむろしていた男性たちに上記の12年前の写真を見せ、今の姿を確かめにこの場所に行きたいんだけど…と聞いてみましたが、多分更地になってしまったとの返事でした。確かに世界のどの都市もスクラップアンドビルドの過程を繰り返して発展してきたと分かってはいるものの、かつて旅行で降り立ったお気に入りの場所が無くなりつつあるという事実に寂しさを感じます。
タシケントのような発展著しい都市では今ある景色がいつ無くなってもおかしくありません。今後もできるだけ風景を写真に収め、記録を残していこうと思っています。

お見せできたのは限られた写真でしたが、うら若きビギナー海外旅行者が12年たつとただの中年男性に変わってしまった私のように、タシケントもこの12年間で色々と変化したことが少しでもお分かりになったかと思います。皆さんももしかつて旅行した国や都市を久々に再訪する機会があれば、ぜひ変わった個所や変わっていない個所をこの目で比較してノスタルジーに浸ってみてはいかがでしょうか?

それではコルシュグンチャ・ハイル(また会う日まで)!

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