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ワシントン記念塔というと首都ワシントンDCにある全長555フィート(約169m)のオベリスク(上部に向かってやや細くなる四角柱)が最も有名ですが、隣町であるボルチモアには、ワシントンDCの記念塔よりも70年近く前に完成したワシントン記念塔があります。規模は小さいながらも、この塔からさまざまなボルチモアの歴史的背景を知ることができます。(撮影・掲載許可済)
ボルチモアの鉄道玄関口、ペン・ステーションPenn Stationからチャールズ通りCharles Street沿いに南方面に15~16分ほど歩くと、通りの真ん中が細長い公園地帯になり、歴史的な風情のある建物が立ち並ぶマウント・バーノン地区Mount Vernon neighborhoodがあります。地区の中心には円柱の塔の頂点にジョージ・ワシントン初代大統領の立像を配したワシントン記念塔Washington Monumentがあり、周囲にはウォルターズ美術館The Walters Art Museum、ピーボディ音楽院Peabody Institute of the Johns Hopkins University 、マウント・バーノン・プレイス・メソジスト教会Mt. Vernon Place United Methodist Church、メリーランド歴史文化センターMaryland Center for History and Culture などが立ち並ぶボルチモアの歴史地区です。
ここにある「ワシントン記念塔」は1815年に完成し、最近では建立200年にあたる2015年に向け、大規模な修復が施されました。頭頂部のワシントン像を含めた全長は178.8フィート(約54m)、展望台は120フィート(約36.5m)という高さですので、小ぶりな塔ですが、1799年に亡くなった初代大統領ジョージ・ワシントンの記念碑としては、全米で最も古い建造物として知られています。首都ワシントンDCにある有名なワシントン・モニュメントの方は、1848年に建設開始しましたが、南北戦争などによる工事の長期中断を経て、1885年に落成していますので、いかに早期の記念塔であったかがうかがえます。
ボルチモアとワシントンにあるふたつの「ワシントン記念塔」には意外な共通点もあります。ボルチモア郊外(ボルチモア郡)にはかつて良質な白大理石の採掘場があり、ボルチモアとDC両方のワシントン記念塔には同じ採掘場から掘られた大理石が使われています。19世紀半ばのボルチモアでは、あらゆる公共建物やタウンハウスなどの一般住宅にいたるまで、玄関口の階段を大理石でつくることが流行し、家の大理石の階段を磨くことがボルチモアの伝統ともいわれていたそうです。
塔の内部はギャラリーと呼ばれるロビー空間に塔の歴史や概要を紹介するスクリーンパネルがあり、中央部には塔の先端まで上がれる227段のらせん階段への扉があります。階段は人が交差するのがやっとで、最上階の展望部分もたいへん狭いため、一度に階段エリアに入れるのは5人までと制限されています。壁はレンガ造りで階段は大理石製。館内案内の方にうかがうと、レンガ壁は2015年に修復されたものであるが、階段の大理石は建設当時からのオリジナルであるとのことです。
227段の階段はさほどきついものではありませんが、窓がほとんどないレンガ壁だけの空間のなか、狭い大理石のらせん階段を、足を踏み外さないようゆっくり回るように上り下りすると、中世の世界にタイムスリップしたような不思議な感覚を体験できました。
最上部の展望台は、バルコニーの手すり位置が低すぎることから、現在は階段の踊り場からガラス越しにしか見学できませんが、それでも東西南北四方の景色がはっきり見ることができます。