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車内で調理しながらできたての料理を販売するフードトラック(キッチンカー)。アメリカでの起源は19世紀初頭に馬車を利用したものと大変古いのですが、2010年代に都市部の公園やストリートイベントの会場で数多く見られるようになり、現在ではすっかりおなじみの飲食販売のスタイルとなりました。アメリカの郊外ならではの、消防署が会場となって定期開催されているフードトラック広場を見てきました。
移動式屋台は、2010年代以前もワシントンDCのナショナル・モール(博物館やメモリアルが集中している観光名所)で多く見られましたが、ホットドッグやスナック菓子、飲み物やアイスキャンディなどの軽食に限られていました。
2010年頃から、観光地から少し離れたオフィス街の公園に、昼時になるとキッチンを装備した大型のバンやトラックが集まり、ギロ(ギリシャ風サンドイッチ)やタコス、ピザや中華や韓国料理など、多彩な料理が味わえるようになってきました。
そして、2010年代後半あたりから、アメリカ各地の郊外でもフードトラックの料理を買い求めることが出来るようになってきました。その会場としてよく利用されているのが、なんと地元の消防署なのです。
米国消防局U.S. Fire Administrationによると、全米の消防士のおよそ7割がボランティアなのだそうです。大都市や大きな自治体はフルタイムの消防士を抱えた消防署(つまり、日本の消防署と同じ)を備えていますが、郊外や地方の自治体では、古くから地元の有志によるボランティア消防署Volunteer Fire Departmentがあります。消防士たちは普段他の仕事を持ちながら消防士の訓練を受け、交代で出動をしています。自治体からの財政支援はありますが、消防署の敷地をフードトラックや誕生日パーティーの会場などに貸し出すことで財政の不足分を補っている部分があります。
消防署が駐車場の敷地を提供し、フードトラックが集まり営業をするというスタイルは、日本ではまだ一般的ではないかもしれません。しかし、よく考えると、半民間であるボランティア消防署にとっては、賃貸料という収入が得られ、フードトラックのベンダーにとっては、万が一の時は消火に駆け付ける消防車がすぐそばにあること、地域住民が集まりやすいロケーションと広さがある利点があり、双方にとってウィンウィンの関係にある様に思われます。