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サローム(こんにちは)!
広いウズベキスタンの中でも、砂漠の中の世界遺産都市ヒヴァがある北西のホラズム地方(XorazmまたはKhorezm)は、かつてホラズム王国やヒヴァ・ハン国といった独自の王国があっただけあって特殊な地域といわれています。ウズベク語のホラズム弁は特徴的な方言で、この言葉を話すとどこの地域にいてもあ、ホラズム人だねとバレてしまう(らしい)。宗教色は薄く、皆陽気で何かあるごとにお酒を飲んで踊りだしてしまう…というのが彼らのステレオタイプです。確かにこの地方の伝統舞踊、ラズギダンスはウズベク人の誰もが知っており、他の地域でもよく踊られているほどです。
そして独特なのは食文化も同様。ぜひヒヴァに立ち寄ってホラズム料理を食べていただきたいのですが、タシケントからは飛行機か夜行列車でないとアクセスできず、ウズベキスタン旅行の際は泣く泣く行程から外した方も多いはず。ところがタシケントにもこのホラズム料理が食べられるお店があるのです!本日はそのお店を、摩訶不思議な料理とともにご紹介しましょう。
お店の名前はカミシュ。地下鉄ノヴザ駅から徒歩圏内の好立地です。入口にはさっそく見慣れない料理写真が並んでいるほか、
ホラズムプロフやホラズム産川魚の文字も出ており、さっそくホラズム愛(?)をアピールしています。
聞くところによると、ここはやはり故郷の味が恋しいホラズム民がよく集まっているよう。東京の沖縄料理屋で沖縄県民が集まるのと同じノリでしょうか。さらに以前ホラズム地方の中心都市ウルゲンチで働いていた私の知人の日本人たちも、ホラズムの文字に惹かれたのかわざわざタシケント滞在時にここで食事したことがあるそうです。恐るべしホラズムパワー…。
私が行ったのは平日昼下がりだったため、あいにくお客はまばらでホラズム民を見つけることはできませんでした。店内は2階建てですが、1階は飲酒禁止、2階ならお酒が飲めるとのことで迷わず2階へ向かって生ビールを注文。
メニューを見ると、さっそくタシケントではお目にかかれない料理の数々が見つかります。このお店での私のターゲットは2つ、ホラズム料理代表格の「トゥフムバラク」と「シュヴィト・オシュ」。もちろんメニューにもあったので早速注文します。
まずはトゥフムバラクが運ばれてきました。バラクとは一般に水餃子のことで、ロシアのペリメニにも似た料理。
ところがこのトゥフムバラク、見た目が何と真っ黄色。そう、トゥフムとはウズベク語で卵の意味で、トゥフム・バラクとは卵が入った餃子のことなのです。
ひき肉ではなく卵が入っただけで食感が全く異なり、他の卵料理と全然違うような何とも形容しがたい味が口の中に広がります。ディップ用のヨーグルトもついてくるので、味変にどうぞ。
実は日本滞在時にこのトゥフムバラクを作ろうとしたことがあったのですが、何度やっても皮から卵液がこぼれてしまい、作るにはなかなか難易度の高い料理と判明したのでした。この薄い皮でどうやって作っているのか、そもそも餃子のような料理は世界各地にあるのに、最初に作った人はどうして卵を入れてみようと思ったのか…。
メニューを見ると、このトゥフムバラクがもりもり載ったハンスキー・ミクス(王のミックス)なるメニューもありました。見た目も美しいので大勢で来られた際はぜひ!
続いてシュヴィト・オシュ。シュヴィット・オシュやシヴィット・オシなどの表記も見られますが、『地球の歩き方 中央アジア』の料理ページにも載っているそこそこ有名な料理です。といっても基本的にはヒヴァなどのホラズム地方でしか食べられない貴重な料理。
こちらも見た瞬間からインパクト絶大。麺がまさかの緑色!
まるで海藻を思わせる見た目ですが、もちろんド内陸国のため海藻などあるわけがありません。この正体は香草を練りこんだ麺で、普通の麺料理とは異なる爽やかな風味が味わえます。この料理は当地では夏限定の料理で、確かにこのさっぱりした麺は砂漠の熱波に襲われるホラズム地方の夏にぴったりの料理かもしれません。
しかしこれもまた凝った料理ですこと。何で他の地域では思いもよらないようなこんな料理を発明してくるんだろう…。
もちろん郷土料理はその地で味わうのがベストですが、タシケントで変わり種のウズベク料理を食べたくなった時はぜひこのお店を候補に入れてくださいね!
それではコルシュグンチャ・ハイル(また会う日まで)!