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サローム(こんにちは)!
ウズベキスタンを旅するなら必ず訪れてほしいサマルカンドの歴史遺産たちを紹介するシリーズ、トリを飾るのはシャーヒズィンダ廟群。なかなか覚えられない難しい名前ですが、サマルカンドに来たならブルーの世界に浸りたい!という方は絶対にここをスルーしないよう。9世紀から15世紀に建てられたティムールゆかりの人々が眠る霊廟が200mほどの回廊に沿って集まっており、青の都サマルカンドを象徴するような、これぞサマルカンドブルーという圧巻の景色が広がる建築物なのです。
前回紹介したビビハニム・モスクや、そのすぐ脇にあるシヨブバザールから歩行者用の陸橋を越え右折。そのまま歩いていくと10分ほどでシャーヒズィンダ廟群の入口に到達します。道路を挟んだ高台にある歩道からは、このシャーヒズィンダ廟群の全景が眺められます。丘に広がる墓地の真っただ中に、突如アーチや青のドームがにょきにょき生えてきたような光景です。
一口アーチをくぐると左側にはモスクの入口。さらに進むとテラスが広がっていますが、ここも暑いときにお祈りをするためのスペースです。このような木の柱に支えられた高い天井を持つイスラム建築スタイルはアイヴァン様式といいます。グル・アミールについての記事(96. 青のドームが美しい、英雄ティムールが葬られたグル・アミール(ティムール廟))で紹介した、イランなどのイスラム建築でよく見られるイーワーン様式と同じ語源ですが、アイヴァン様式は中央アジアで発達した建築様式です。
通路を挟んで反対側にある窓口でチケットを購入。この窓口を過ぎて右に曲がるとこんなものが。実はこれは羊をと殺するためのもので、神様に捧げるためたびたびここで羊が屠られるとのこと。血は下の窪みにたまるようになっています。
窓口からそのまま通路を歩いていき、階段を登って霊廟に挟まれた回廊へ。この階段は別名「天国の階段」で、段数を数えながら登り、行きと帰りが同じ数なら天国に行けるという言い伝えがあります。そんなの当たり前でしょうに…と思う方こそ、天国に行けるかどうかぜひチャレンジしてみましょう!ウズベク人たちもよくビル・イッキ・ウチ…(1、2、3)と数えながら登っています。
階段の途中には現存する14か所の霊廟のうちの最初の廟、ウルグベクの天文学の先生カズィザデ・ルミの廟とされる15世紀に建てられたコシュ・グンバズ廟(カズィザデ・ルミ廟)があります。
階段を登ったところにあるアーチをくぐると、美しいシャーヒズィンダ廟群の中でも最も心が震えるであろう眺めが目に飛び込んできます。回廊の左右から迫ってくるのは、ビビッドな青のタイルで装飾された霊廟たち。
いずれも14世紀後半に建てられた霊廟たちで、回廊左側にあるのは手前側からティムールの部下の将軍の息子を祀ったアミールゾダ廟、ティムールの姪が眠るシャーディムルク・アカ廟。右側にあるのはティムールの部下の将軍フセインの母親の名が付けられたトゥグル・テキン廟、ティムールの妹の霊廟シリンベク・アカ廟。その隣にはここの霊廟の中では独特の形をしている埋葬者不明の八角形の廟もあります。中でもシャーヒズィンダ廟群で最も美しいといわれているシャーディムルク・アカ廟は、外観もさることながら内部も豪華絢爛。廟内を一部の隙もないほど青のタイルが埋め尽くしています。
また緻密な模様が無数に描かれたシリンベク・アカ廟の内部もぜひ見てみてください。
ゲートをくぐってすぐ左のアミールゾダ廟の脇は小さな階段があり、ここを登ると展望台のようになっています。眼下には墓地が広がり、遠くに見えるのは巨大なビビハニムモスク…と最高のパノラマ。コシュ・グンバズ廟の2つの青いドームも目の前に迫ってきます。
そのまま回廊を進むと、右側は霊廟が途絶え、かつて霊廟が建っていたことを示す土台のみが広がっています。一方左側にはタイル装飾されていない無名の廟が4つ建ち並び、その次に現れるのがティムールの将軍を祀る、14世紀後半に建てられたウスト・アリ・ネセフィ廟。『地球の歩き方』には詳しく載っていませんが、ここも青いドームを頂く外観・青のタイルで彩られた内部ともに大いに見ごたえありです。
その隣にも青い霊廟が建っていますが、埋葬者不明の廟となっており、墓石を覆ったタイル装飾も剥がれかかっています。
さらに行くと屋根がスパッと切り取られたような形の霊廟が。これは15世紀に建てられたアミール・ブルンドゥク廟で、ティムールの部下たちが葬られており墓石も複数置かれています。
ここで現れるゲートをくぐり、シャーヒズィンダ廟群の最奥部へ。ここは3つの青い霊廟に囲まれており、格好のフォトスポットになっています。この3つの霊廟は、左からティムールの妻が葬られたトゥマン・アカ廟、イスラム教指導者の名にちなんだフジャ・アフマド廟、ティムールの妻クトゥルグ・アカの墓とされる廟。
そしてよく見るとゲート東側、回廊から入ってきて右側にも入口があるのが分かるでしょう。ここがシャーヒズィンダのタジク語での意味「生ける王」の由来となったクサム・イブン・アッバースが眠る霊廟への入口。その上部には預言者ムハンマドの言葉とされる、「クサムは私と瓜二つ」という文字が書かれています。このクサム・イブン・アッバースはムハンマドの従兄であったとされています。
伝説によると、イスラム教の布教のためサマルカンドにやって来たクサムはこの地で礼拝しているときに異教徒に首をはねられたものの、そのまま礼拝を終え首を抱えながら深い井戸へと入っていったとのこと。そして彼はここで永遠の命を手に入れ、イスラム世界が危機に陥った時救いに現れるのだといいます。
11世紀に建てられたこの霊廟は、3回通うとメッカに巡礼したのと同じことになると信じられ、ウズベク人礼拝者は皆ここへ入っていきます。通路を抜けると礼拝所が現れ、格子窓越しにクサムの墓石を見ることができます。タイミングが合えば、ここで聖職者や礼拝者たちとともに中央アジア式礼拝オーミンをすることになるでしょう(見よう見まねで彼らの仕草に従うと彼らも喜んでくれるはずです)。このクサム・イブン・アッバース廟の入口扉や墓石の装飾も見事ですが、残念ながら撮影禁止となっています。
あとは回廊を引き返すのみ。悔いが無いようこの青の霊廟たちを最後まで目に焼き付けていってください。
なおこの写真映えする光景にハイテンションになる気持ちは分かりますが、あくまでこのシャーヒズィンダ廟群は神聖なお墓なので限度を越えて騒がないよう。ミニスカート、短パンなど肌を極端に露出した服装も極力避けましょう。また回廊は狭くオンシーズンは大変混み合い、お目当ての写真がなかなか撮れないこともあるので、混雑が予想される時期は朝一番か夕方に訪れることをおすすめします。
それではコルシュグンチャ・ハイル(また会う日まで)!