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サローム(こんにちは)!
サマルカンドの町が最も輝いた、ティムール帝国時代。この時期は歴史に名を残す武将や学者が何人も現れましたが、その中でティムールに次ぐ著名な歴史人物といえばミルゾ・ウルグベク。ティムールの孫にあたり、統治者としてだけではなく学者としても名を馳せ、政治面だけでなく文化面でも影響力の大きかったティムール帝国を体現するような人物と言えるでしょう。彼の銅像やその名が付いた道路はウズベキスタン各地に存在しています。
彼の業績で最も有名なのが天文学。ウルグベク自身が教壇に立って神学や天文学を教えていたという、サマルカンドの観光の中心レギスタン広場内のウルグベク・メドレセでもその業績をうかがい知ることができますが、同じくサマルカンド市内にあるウルグベク天文台にもぜひ寄ってみましょう。サマルカンドを代表する見所の一つで、ツアーに含まれていることも多いこのウルグベク天文台についてご案内します。
ウルグベク天文台があるのは、市内西部のアフラシアブの丘の向こう、チュパン・アタの丘と呼ばれる高台。中心部の見所から少し離れているので、天文台だけ訪問するならタクシーやバスを使って向かうとよいでしょう。またはアフラシアブ博物館、ダニエル廟とあわせて周るとちょうどいい散歩コースになります。
この天文台は15世紀前半に建てられましたが、ウルグベク自身は天文台完成の約20年後に自分の息子が送り込んだ刺客によって暗殺されます。天文台はその後活動が止まり、長い間土に埋もれて眠ることに。20世紀前半にロシアの考古学者ヴャトキンが発掘調査を行ったことで、長い時を経て再びこの天文台がサマルカンド市民の知られるところとなりました。建造当初からずっと親しまれてきたレギスタン広場などの歴史建築と違い、このようなエピソードがある建造物もまたロマンがありますよね。
ただ直径46メートル・高さ30メートル、円形で美しい3階建ての建物だったといわれる天文台ですが、現在見ることのできるのは天文台の基礎と巨大六分儀の地下部分のみ。この六分儀は高さ約40m、長さ約63mあったとのことで、その遺構を見るだけでもスケールの大きさを想像することができます。
すぐ近くにある博物館にも入ってみましょう。小ぢんまりとした博物館ですが、ウルグベクの天文学者としての功績をここで学ぶことができます。
ウルグベクの天文学における業績はたくさんありますが、中でも有名なのが、十分な器具もない時代にも関わらず1年間の長さをほぼ正確に測ったこと。当時ウルグベクが割り出した時間と、現在の精密機械で計測した時間との差は1分にも満たないといわれています。
また1018という気が遠くなりそうな数の星を発見し、天文表に記録しました。この天文表はヨーロッパの天文学者にも知れ渡ることとなり、天文学界に衝撃を与えました。これらの功績の舞台になったのがこのウルグベク天文台であり、博物館では当時の貴重な資料や天文台、六分儀などの復元模型などが展示されています。
展示を見てまわっていると、いきなり"Tokugawa Yoshimune"の文字を見つけて驚きました。ウルグベクと同様、徳川吉宗も統治者兼天文学者だったのですね。
それにしても、なぜウルグベクはこれほどまでに天文学や星に興味があったのでしょうか。英雄ティムールが青という色を好んだことにも通ずるものがあると思いますが、サマルカンドの空が透き通るように青く、君主たちをも魅了していたのではないかというのが勝手な個人的推測です。
ここに住んでいる筆者も、どこまでも鮮やかな空の青さや夕焼けの美しさに改めて気づき、見入ってしまうことが度々あります。サマルカンドにいらっしゃった際はぜひ空をゆっくり眺め、この地で天文学の発展に貢献したウルグベクという人物に思いを馳せてみてください。
それではコルシュグンチャ・ハイル(また会う日まで)!