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しばらくフランスについて書いていましたが、本日は本拠地イギリスの記事です。(ノルマンディー旅行の続きは次回!)今回はずっと書きたかったテーマ、「サンデー・ロースト」です。アフタヌーン・ティーは日本でも人気で「ヌン活」という言葉もあるくらいですが、イギリスでアフタヌーン・ティー以上に一般的なサンデー・ローストは、まだまだ日本での認知度が低い気がします。今日は筆者が愛するサンデー・ローストについてご紹介します。
サンデー・ローストはイギリスの伝統的な日曜日の食事で、肉のロースト、ロースト・ポテトとヨークシャー・プディング(シュークリームの皮のようなもの、グレービー・ソースを注ぐ受け皿にもなる)、スタッフィング(パン粉やハーブを丸めたもの)、グレービー・ソース(ローストの肉汁にワイン・ブイヨンなどを加えて煮詰め、塩・こしょうなどで味を調えて作るソース)などで構成されます。付け合わせにはボイルしたブロッコリー、キャベツ、ニンジン、パースニップ(ニンジンに似た根菜ですがニンジンより甘くてナッツのような風味がある)などが提供されます。
サンデー・ローストの起源は教会の日曜礼拝後に食べられていた食事とされています。イギリス国教会では日曜礼拝の前に断食があり、礼拝後に普段よりも豪勢な料理で断食の終わりを祝うという慣習がありました。(ちなみに、金曜日は魚のみを食べる日とされていたので、現在でもイギリスでは金曜日にフィッシュ&チップスを食べる人が多く、食堂の日替わりメニューなども金曜日はフィッシュ&チップスになることがままあります。)1700年代後半頃からは、日曜礼拝に出かける前に肉と野菜をオーブンに入れて、礼拝から帰ってくるとちょうどローストが完成していてすぐに食事を始められる形が定着したそうです。産業革命時代らしい効率的なスタイルですね。また、一説では15世紀のヘンリ7世の時代に王の衛兵たちが日曜礼拝後にロースト・ビーフを楽しんだことが起源という説もあり、それもあって王の衛兵は「ビーフ・イーターズ(Beefeaters)」と呼ばれました。ロンドン塔では現在でも赤い伝統衣装を着た衛兵たちがこのように呼ばれています。
色々歴史的なことを書きましたが、サンデー・ローストは人々の生活に浸透しており、家族の集まりが日曜日にあればサンデー・ロースト風のメニューを料理したり、日曜日の昼過ぎに友人同士でパブに出かけてサンデー・ローストを楽しんだりします。時間帯としては現在のロンドンでは午後1-3時頃に食べられることが多いようです。ワインやビールをお供に、ほろ酔いで家族や友人とワイワイ語らいながらゆっくり食事を楽しむのが定番です。
パブや肉料理メインのレストランだとかなりの確率で日曜日にサンデー・ローストを提供していますが、当然味はピンキリで、評判が良い店は事前予約が必要です。極端な例ですが、ブリストルにある人気パブでは、サンデー・ローストの予約が何と4年待ちなのだそうです! 4年待つに値する味、と記事にありますが、どれだけ美味しいのか気になるところです。この例からもイギリス人のサンデー・ローストにかける情熱をお分かりいただけるかと思います。今回は4年待たなくても訪問できるロンドンのおすすめのお店をご紹介します!
なお、肉々しいのが苦手な方も、大抵のお店にはちゃんとベジタリアン・メニューがありますので、ご心配なく。
仲間内で一番気に入っているサンデー・ローストのスポットが「The Camberwell Arms(ザ・カンバーウェル・アームズ)」です。もともとグルメな友人が「とある記事で紹介されていたサンデー・ローストを提供するパブに行ってみたい」と言って5年ほど前に予約してくれたのがこの店です。直近の2022年のイブニング・スタンダート誌でも栄えある「Best Sunday Roast In London(ロンドンのベスト・サンデー・ロースト)」の1つに選ばれています。*
失礼ながらカンバーウェルというエリアに馴染みもなく、このパブの他に行く機会もないのですが、多少のアクセスの悪さを差し引いても行く価値があります!
ザ・カンバーウェル・アームズは2014年にオープンした明るくてモダンなパブです。こちらのサンデー・ローストの特色は、メインのメニューが数人でシェアするスタイルということでしょう。ローストチキンとポークベリーは2人から、筆者グループが毎回注文するスロー・クックのラム肩肉の煮込みは3人前から注文できます。店は新しいものの、メニューは奇をてらわないので、王道のサンデー・ローストが食べられます。(モダンな店では現代的にアレンジされていることも多いです。)ちなみに一人前から頼めるローストもいくつかありますが、本来のサンデー・ローストはみんなで切り分けてシェアするものです。
さて、筆者イチオシのラム肩肉の煮込みなのですが、本当にとろける柔らかさです。重めの赤ワインと相性抜群です。残念なサンデー・ローストの典型が「パサパサした肉」と言えると思うのですが、こちらのラムは真逆です。しっとりしていて、至高です。3人前のラム肉のサイズは大きいですが、美味しいのでどんどん進んでしまいます。また、特筆したいのがロースト・ポテトです。ロースト・ポテトなんてどれも同じと侮るなかれ。本当に美味しいローストポテトは一回茹でてから揚げているので、外側がカリカリで中がホックリしているのです。更にこちらのパブでは揚げる際に何らかの工夫がされているようで、味が深いんですよね。グレービーか何かを使ってるのでしょうか、わからないですが、ロースト・ポテト史上最高に美味しかったです。気の合う友人と語らいながらのサンデー・ローストは本当に幸せな時間です。更に食事が美味しいともっと楽しいので、料理のクオリティが間違いない、ザ・カンバーウェル・アームズで美味しいイギリスの伝統に触れてみてください。
家族や友達の集まりが自宅であった時におもてなしのサンデー・ローストが作れたら素敵ですよね。ということで、行ってきました、お料理教室、サンデー・ロースト版。チキンとビーフのロースト、ヨークシャー・プディング、ローストポテトにグレービー・ソース、付け合わせの野菜の作り方を教えてくれるクラスで、所要時間は約3時間+食事の時間でした。イケメンのイギリス人シェフが化学的な見地から教えてくれる最高の肉の焼き加減(サルモネラ菌が死滅するよう十分加熱するけれど、焼きすぎてパサパサになってしまわない絶妙な温度と調理時間)はとても勉強になりました。こちらの料理教室は家族経営だそうですが、スタイリッシュなスタジオで電飾や旗などが可愛いです。さらにシェフのテーブルの頭上にミラーがついていて、離れていてもシェフの手元がしっかりと見えるようになっています。お値段は一人110ポンドと決して安くはないですが、レッスン後の食事&ワイン代(一応飲み放題)も含まれていて、一生使えるサンデー・ローストのスキルも身に着けることができるなら高すぎないかも?英語で大丈夫な方はぜひトライしてみてください!関係ないですが、筆者の友人はパートナーの誕生日に料理教室のチケットを贈って(自分は参加しない)、料理をマスターして自宅で披露してもらうという素晴らしい作戦を実行しているそうです。ご参考まで。
最後に比較的簡単な「ヨークシャー・プディング」の作り方をご紹介します。
材料:
卵 1個
水または牛乳 75ml
小麦粉 60g
塩 テーブル・スプーン半分
①オーブンを220度に熱しておく
②大きなボウルに小麦粉を入れ、真ん中に穴をあけておく。卵と牛乳を足して、よく混ざるまで泡だて器で徐々に泡立てる。塩を加えて15分間ほど置いておく
③マフィン型のそれぞれの穴に底が十分にカバーされるくらいのサラダ油(分量外)を注いで、型をオーブンに入れて温める
④②のミックスを注ぎやすい形のジャーに移す
⑤型をオーブンから出し、素早くミックスをそれぞれの穴に均等に注ぐ
⑥型をオーブンに戻し、14-15分ほど、または金色になってしっかり膨らんだら取り出す。
とても簡単ですよね!ぜひローストとグレイビー・ソースと合わせてイギリスのサンデー・ロースト気分を味わってみてください♪