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(前回までのあらまし)LAを1時間遅れで出発、アリゾナ州内では機関車故障による立ち往生により、さらに7時間遅延したアムトラックのサウスウェスト・チーフ号。シカゴでの同日乗り換えは既に不可能になりましたが、それでも列車はひたすらシカゴを目指して走り続けます。
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赤茶けた荒野の広がっていたアリゾナ州やニューメキシコ州を抜け、カンザス州あたりから穀倉地帯である平野部に入りました。風力発電用の巨大な白い風車が立ち並ぶエリア、広大な畑の中にポツンポツンと一軒家が離れ離れに建つエリアなど、何時間もずっと広がる光景は、アメリカでの列車旅ならでは。展望車の窓からゆったり眺めて過ごしていると時間もゆったり流れていきます。時折車内アナウンスで「ただ今右側に風力発電用のプロペラ運搬の貨物列車が見えます」とか、「向かい側の下り列車(西の起点ロサンゼルスへ向かう)のサウスウエスト・チーフ号とすれ違っています」といった情報が入り、ちょっとした見どころを乗客にも知らせてくれます。
一方、列車の遅れは距離が進むにつれさらに拡大していき、本来なら既にシカゴに着く時間を過ぎ3日目の夕方を迎えました。ここで車内アナウンスが入り、普通車乗客にも夕食を無料で用意することを知りました。食堂車の入り口付近で受け取ったのは、ライスに温かいシチュー(ポークドビーンズ)のようなものがかかった一品とスナックパックに水ボトルでした。長い列車旅の終盤に温かい料理はありがたく、身体にしみました。
予定では昼間の午後2時台にシカゴに到着する列車は、日も暮れて日付も変わり、ほぼ12時間遅れ、昼夜逆転の深夜2時台に到着しました。初日や二日目の夜は窓の外は真っ暗でしたが、シカゴ手前になると徐々に住宅や店舗など建物の明かりも車窓から見ることができ、都市部に入ってきたことがわかりました。ただしシカゴのユニオン駅に到着すると、他の列車は無く、人影もまばらで広いプラットフォームも駅舎の中もがらんとしていました。
結果的に遅延が何度も積み重なり12時間もの大幅な遅れとなりましたが、これほど長い列車の遅延を体験するのもアメリカならではスケールかもしれません。アムトラックの公式アプリで乗車中の列車の運行情報を調べることが出来たので、停車駅ごとの遅延状況を記録に取ってみました。途中駅の多くは列車旅でなければ訪れる機会のない、小さな町や初めて聞く街の名前が多く、それもまた列車旅の楽しみの一つです。サウスウェスト・チーフ号に乗ってカリフォルニア州、アリゾナ州、ニューメキシコ州、コロラド州、カンザス州、ミズーリ州、アイオワ州、イリノイ州の計8州を走破することができました。
サウスウェスト・チーフ号(2023年9月4日ロサンゼルス発)のアルバカーキから終点シカゴまでの運行記録(アムトラック公式アプリ情報より)
12.ニューメキシコ州アルバカーキ(Albuqurque, NM)予定9月5日午前11:48発、実際同日19:06(7時間18分遅れ)
13.ラミー(Lamy, NM)予定13:02発、実際20:58(7時間56分遅れ)
14.ラスヴェガス(Las Vegas, NM)予定14:51発、実際22:49発(7時間58分遅れ)※カジノで有名なラスベガスとは同名ですが別の街
15.レートン(Raton, NM)予定16:42発、実際9月6日午前1:14発(8時間32分遅れ)
16.コロラド州トリニダッド(Trinidad, CO)予定17:41発、実際午前2:17発(8時間36分遅れ)
17.ラ・ジュンタ(La Junta, CO)予定19:29発、実際午前3:48発(8時間19分遅れ)
18.ラマー(Lamar, CO)予定20:23発、実際午前4:48発(8時間25分遅れ)
19.カンザス州ガーデンシティ(Garden City, KS)予定22:50発、実際午前8:49発(9時間59分遅れ)
20.ドッジ・シティ(Dodge City, KS)予定23:47発、実際午前10:12発(10時間25分遅れ)
21.ハッチンソン(Hutchinson, KS)予定午前1:39発、実際午後12:15発(10時間36分遅れ)
22.ニュートン(Newton, KS)予定午前2:19発、実際午後12:59発(10時間40分遅れ)
23.トペカ(Topeka, KS)予定午前4:40発、実際15:44発(11時間4分遅れ)
24.ローレンス(Lawrence, KS)予定午前5:09発、実際16:21発(11時間12分遅れ)
25.ミズーリ州カンザス・シティ(Kansas City, MO)予定午前7:28分、実際18:19発(10時間51分遅れ)
26.ラ・プラタ(La Plata, MO)予定午前9:33発、実際20:42発(11時間9分遅れ)
27.アイオワ州フォート・マディソン(Fort Madison, IA)予定午前10:49発、実際22:37発(11時間48分遅れ)
28.イリノイ州ゲールズバーグ(Galesburg, IL)予定午前11:48発、実際23:43発(11時間55分遅れ)
29.プリンストン(Princeton, IL)予定午後12:38発、実際9月7日午前12:39発(12時間1分遅れ)
30.メンドータ(Mendota, IL)予定午後12:59発、実際午前1:02発(12時間3分遅れ)
31.ネイパーヴィル(Naperville, IL)予定14:00発、実際午前2:00発(12時間0分遅れ)
32.終点シカゴ・ユニオン駅(Union Station, Chicago, IL)予定14:50着、実際午前2:30(11時間40分遅れ)
シカゴのユニオン駅はアムトラックの主要な駅で、ここから発着する路線は多くありますが、午前2時ともなるとさすがに他の列車は動いておらず、駅も閑散としていました。シカゴが最終目的地の人たちはそのまま駅の外へ出ていきましたが、数名の駅員が「乗り継ぎ予定の乗客はこちらに集まってください」と、プラットホームの近くの別室のようなところへ誘導されました。
シカゴでの乗り継ぎ便を逃した、全部で20人くらいの乗客たちが集まりました。すると、アムトラック指定のホテルと駅構内で利用できる計3回分の食事クーポン、そして夜食としてサンドイッチの入ったランチパックが用意されていました。係員の説明によると、ユニオン駅から指定のホテルへのシャトルバスも用意されていているとのことでした。
私の当初の乗り継ぎは、シカゴを午後6時40分に出発するキャピタル・リミテッド号を利用する予定でしたが、サウスウェスト・チーフ号の遅延で乗り継ぎが不可能になることが確定した段階で、自動的に翌日午後5時55分にシカゴを出発するカージナル号に振り替えられ、その情報はアムトラックの公式アプリとメール(チケットの購入時にメルアドや携帯番号を登録しておくと、変更案内などが届く)で確認することができました。
思いのほか、アムトラック側の手厚い対応があったのですが、私は指定のホテルは利用しませんでした。というのも、到着が深夜になるのが確実になった段階で、シカゴの治安を考えて、先手を打って列車内から自分でホテルを予約していたからでした。乗車中に車掌さんにもっと質問しておけば良かったかなというのが反省点です。ホテルは利用しなければ後でホテルからアムトラックに請求が来ないだけだから大丈夫と言われたので、夜食のパックと翌日用の食事クーポンだけいただき、シカゴ駅を一旦離れました。シカゴ駅のような大きな駅でも深夜2時台ではさすがにタクシーも殆ど走っておらず、ウーバーの配車アプリを使って自分の予約したホテルまで移動することができました。20年前のグレイハウンドバス横断旅と今回では携帯アプリの有無が格段に時代の違いを感じました。(第4回ルポへつづく)