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サローム(こんにちは)!
ウズベク人の人生において、絶対にといってもいいほど欠かすことのできない通過儀礼が結婚。早くに結婚し、子供とともに幸せな家庭を築くことが、ウズベク人にとって人生最大のステータスといっても過言ではありません。結婚してますか?子供は何人いますか?という日本では完全にアウトな質問もこの国では当たり前で、私たち外国人にもしばしば(というか頻繁に)この質問を投げかけてきます。
今年10月は、私にとって何かと結婚式(ウズベク語で「To'y トイ」)にご縁があった1か月でした。まずは10月上旬、サマルカンドとタシケントで別々に暮らし外国内週末婚状態(?)にあった妻と、いつもお世話になっているタシケントの日本料理店ふる里(61. 待望の日本料理屋「ふる里」オープン!タシケントで本格日本食を味わう)で結婚パーティーを敢行。日本人、ウズベク人の知人70人ほどを招待し、日本人演奏家の方による弦楽器ドゥタール演奏やこの国の結婚式伝統儀式ケリンサローム、ウォッカを入れて行った鏡開きといったイベントを入れ込んだ、日ウズ折衷スタイルの変てこなパーティーを執り行いました。ほぼ手作りのウエディングパーティーとなったため進行はかなりグダグダでしたが、ゲストの方々は心から楽しんでくださったようでした。コロナ禍に日本で結婚したためまだ結婚式を挙げられていなかった私たちにとっても、一生の思い出に残る感動の日になりました。
本題からそれるのでこのパーティーについては詳しくは紹介しませんが、気になった方はぜひ私の個人ブログをご覧ください。
タシケントで結婚パーティーを開催した件。 – takumiの世界ふらふら街歩き
そしてこの月の末、サマルカンドで行われる同僚の友人の結婚式にも参列することに。この新郎とは今まで一切面識がなく、日本ならばまず式に招待されることのない間柄。しかしこ国の結婚式はゲスト招待のハードルが格段に低く、「誰だっけこの人…?」と思われそうな関係の人も平然とゲストとして招かれます。なんせ参列者が100人、200人を越えるのは当たり前で、私のような友人の同僚やら遠い親戚、果てはその辺の旅行者などあらゆるゲストが参列するのです。
ウズベキスタンや中央アジアを旅行中、現地の人に式に誘われ、見ず知らずの新婚夫婦を祝うことになった、、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。私も学生時代中央アジアを旅しているとき、サマルカンドで1回、そしてタジキスタンの田舎で2回、結婚式に呼んでもらった経験があります。新郎新婦とどんな関係であろうと、とにかく多くの人に祝ってもらえればもらえるほど幸せになる…という考えがあるのかもしれません。
結婚式には行けなくても、レギスタン広場で前撮りしているタキシード姿の花婿とウエディングドレス姿の花嫁を見た!という旅行者の方は必ずいるはずです。サマルカンドを訪れた旅行者の誰もが向かうレギスタン広場ですが、新郎新婦にとっても格好のフォトスポットとなっており、結婚式を挙げるとここでフォトセッションをするのが定番になっているのです。出くわした際はぜひTabriklayman(おめでとう)!と声をかけてみてください。
多くのゲストを呼んだり、カメラマンや結婚衣装を手配して前撮りを行ったりすることから察しが付くかと思いますが、この国で結婚式を行うのはとにかく多くのお金が必要。ウズベキスタンの結婚式は1日がかりの大イベント、新郎新婦にとっては文字通り一世一代の晴れ舞台で、さらに婚約式にあたるフォティハ・トイなど式の前にも行う伝統儀式が度々あり、その度多額のお金が飛んでいきます。ウズベキスタン人の平均年収は日本人の数分の一といわれますが、結婚式の総費用は1万ドル以上かかることも当たり前だそう。子供の結婚式費用を稼ぐため、親が外国に出稼ぎに行くというケースもたびたび見られるほどです。
そして、ウズベキスタンで最も豪勢に結婚式を行うと言われているのが、見栄っ張りが多いといわれるサマルカンド人なのだそう。特に夜の披露宴は、他のウズベク人があっけにとられるほどすさまじい規模だといいます。生粋のサマルカンド人の式はド派手にやるからな!楽しみにしてろよ!と同僚にさんざんハードルをあげられ、期待を胸に結婚式当日を迎えました。
結婚式の朝は、花婿・花嫁それぞれの実家からスタートします。花嫁側の実家では、花嫁の父親がナホール・オシ(朝のプロフ)といわれるプロフを作り、親戚や近所の人たちに振る舞います。
一方花婿側の実家にも、彼の親戚や友人たちが続々と駆け付けます。その後皆で花嫁の実家へ…というのがこの国の結婚式の流れ。私も一応花婿側の友人ということになっているので、まずは同僚と共に花婿の実家へ。
花婿宅では、中庭に男性たちが集まり、おしゃべりに花を咲かせていました。女性は部屋の中に集まり、式の準備を行います。花婿も親しい友人たちとともに奥の部屋で身支度をしているようで、まだ姿を見せていません。
活動先の観光案内所で知り合った日本人旅行者の方3人もこの場にお連れしており、花婿宅に謎の日本人4人が居座ることになりましたが、周囲の人々は誰一人嫌な顔せず親しく話しかけてくれます。花婿の年齢は28歳で、この国の平均結婚年齢より少し上とのこと。留学や仕事でロシアに行っていた時期があり、結婚適齢期を少し過ぎてしまったようです。日本人からすると十分適齢期のように思えますが…。
一方花嫁の年齢は24歳だそうで、こちらも平均結婚年齢より少し上。とにかく女性の結婚と出産が早いのがウズベク人の特徴で、大学在学中に結婚することもしばしば。
気になる2人の出会いは、花婿側の両親が親戚を通じて花嫁を紹介してもらったのがきっかけ。いわゆるお見合い婚です。以前別の知人に聞いた時は、サマルカンドでの恋愛婚とお見合い婚の割合はちょうど半々ぐらい。タシケントでは最近恋愛婚の方が多くなっており、田舎ではまだお見合い婚が主流とのことでした。この花婿のように外国居住経験がある男性は、地元で交際相手や結婚相手を見つける時間が少ないので、両親が積極的に結婚相手を探す傾向にあるとのことです。
…といった話を聞いていると、13時頃になってついにタキシード姿の花婿が中庭へ出てきました。すかさずスタンバイしていた楽団が軽快な音楽を奏で、友人たちが激しく踊り始めます!
そのまま玄関まで出て、車へ乗り込みます。さすが見栄っ張りのサマルカンド人、もちろん車もよくある車種ではなく、しっかりベンツが用意されていました。このような車を半日用意するだけでも、500ドルはかかってしまうとのこと…。
私たちも同僚の車に乗り込み、花嫁宅に向かう花婿を追いかけます。かつては車ではなく馬で花嫁宅へ駆けつけていたのだろうか、などと思いを馳せながら…。
花嫁宅が近づいてくると、車列が一斉にクラクションを鳴らします。花嫁とその家族に迎えに来たことを伝えるため鳴らすのだ、と同僚。この光景はウズベキスタンで暮らしていると時折見かけますが、車の中から体験することができる日が来るとは!
クラクションが鳴ってときに発見しましたが、花嫁宅のご近所でもう1軒、結婚式を行っている家があるようです。ただでさえ若者が多く、そこかしこで結婚式が行われているウズベキスタン。そして最も結婚式がよく行われる時期が、気温がちょうどいい10月とのことなのです。ジューンブライドならぬオクトーバーブライドですね。
車列はついに花嫁の実家へ。ここでこの国の結婚式ならではの伝統儀式を次々と体験することになりましたが、その模様はまた次の記事でお送りします。そう、ウズベキスタンの結婚式を語りつくすには、1つの記事にはとうてい収まりきらないのです…。