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148. 教会も美しいサマルカンド 町に点在する歴史ある教会たちを巡ってみよう

伊藤 卓巳

伊藤 卓巳

ウズベキスタン特派員

更新日
2024年6月13日
公開日
2024年6月13日
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サローム(こんにちは)!

世界的に有名なイスラム建築が集まるサマルカンドですが、実はこの町で注目すべき宗教建築はそれだけではないのです。サマルカンドの観光地をだいたい巡ってしました、ほかにどこかおすすめの場所は? と観光客の方から聞かれたときに、私がよくおすすめしているのは教会巡り。え、サマルカンドで教会? と大抵の方は驚かれますが、イスラム文化が栄えた古都であると同時に、ロシア帝国によって近代化された多民族都市という側面をもつサマルカンドにおいて、教会もまた重要な歴史的宗教建築といえるのです。
タシケント同様(参考記事:42. 日曜は教会巡り!タシケントのおすすめ教会を一挙ご紹介)、サマルカンドでもロシア正教を始めさまざまな宗派の教会があり、興味が尽きません。100年以上の歴史をもつ主要な教会たちはロシア帝国期に開発されたロシア人街に集まっており、日曜日は各教会の礼拝を見学して周ることができます。この記事ではサマルカンドの新たな一面を探るためにぜひ訪れてほしい、見学におすすめの教会4つをご紹介します。

●聖アレクセイ教会(ロシア教会)

サマルカンド最大の教会で、ティムール像から延びる広い大通り、ブリバール通り近くに立地。緑色の屋根の鐘楼にちょこんとのった、いかにもロシア正教の教会らしい黄金玉ねぎドームが美しく映えます。この教会が建てられたのは1912年で、もともとはここに駐屯するロシア兵のための教会だったとのこと。

内部の聖堂は、ロシア教会に行ったことのない方はぜひ訪れて見てほしい、荘厳な空間が広がっています。天井は広く開放感があり、正面の金色の祭壇には聖人のイコンがびっしりと描かれています。
礼拝ではロシア人信者たちがこの聖堂に集まり、私が見学した際は参加者一人ひとりが神父と話したり子供にお菓子をあげたりと、タシケントの大聖堂よりアットホームな雰囲気を感じました。礼拝以外の日も見学可能。教会内の売店では祝祭日が書かれたカレンダーやロシア語聖書など、ロシア正教ならではの品々を購入することができます。

また1月には、極寒の中氷を張った水に信者が浸かって祈る、神現祭という儀式も行われます。見ているだけでもブルブル震えそうな儀式ですが、興味のある方はぜひ。以前の記事で見学レポートをアップしています(91. 真冬に水に浸かるロシア正教の儀式・神現祭をサマルカンドで見学)。

■聖アレクセイ教会СоборСвятителяАлексияМосковского

住所
70BuburMirzoko’chasi,Samarqand
電話番号
+998-66-233-5480
アクセス
サマルカンド駅とレギスタン広場前を結ぶ73番バスなどが停まるShaharxokimiyatiバス停から徒歩約3分。レギスタン広場前からタクシーで約10分
URL
http://hram-alekseevskii.ru/

●聖ジョン・バプテスト教会(カトリック教会)

聖アレクセイ教会からわずか徒歩5分、こちらはサマルカンド唯一のカトリック教会。完成したのはロシア帝国末期の1916年で、第一次大戦のなか、この地へ連れてこられたポーランド人捕虜たちによって建てられました。現在の神父もポーランド人とのことで、タシケントのカトリック教会と同じくポーランドとの結びつきが強い教会なのです。
なお国じゅうで宗教活動が制限されていたソ連時代は、体育館として使用されていたそう。

入口の看板は英語・ロシア語・ウズベク語の3言語表記
私が行ったときは、中庭で神父らしき人物と子供がバスケットボールをやっていました……

聖堂内は小ぢんまりとしており、壁が水色のパステルカラーに塗られているのが目を引きます。ミサは火曜と土曜の夕方、日曜午前にロシア語で行われるほか、日曜夕方に英語でも行われています。私が英語ミサを見学した際は、留学生と思われる南アジア系の参列者が目につき、なかなかの衝撃を受けました。

■聖ジョン・バプテスト教会ЦерковьсвятогоИоаннаКрестителя

住所
86MahmudQoshg’ariyko’chasi,Samarqand
電話番号
+998-66-233-0084
アクセス
サマルカンド駅とレギスタン広場前を結ぶ73番バスなどが停まるShaharxokimiyatiバス停から徒歩約8分。レギスタン広場前からタクシーで約10分

●神の聖母教会(アルメニア教会)

聖ジョン・バプテスト教会から目の前の通りを北側に歩いて5分ほど、アルメニア教会にたどり着きます。ウズベキスタンとアルメニア、一見何の関係もなさそうですが、アルメニア人は「カフカスのユダヤ人」と呼ばれるほど全世界にディアスポラ(元々の居住地を離れて暮らす共同体)が散らばっており、現在のウズベキスタンにもティムール帝国期の15世紀に最初のアルメニア人がやってきたといわれています。その後ロシア帝国時代にさらにアルメニア人住民が増え、1903年にこの教会が建てられました。

教会の尖塔は八角形のドーム。敷地内にはハチュカリと呼ばれる石でできた十字架が立っています。これらはいずれもアルメニア教会の特徴で、アルメニアから遠く離れたウズベキスタンでも彼らのスタイルに則った教会を建てました。古代アルメニア王国は4世紀にキリスト教を国教とし(それゆえアルメニアは世界で最も古いキリスト教国といわれる)、それ以来アルメニア人は世界に散らばりながらも自分たちの信仰をかたくなに守り続けてきたのです。

特徴的なアルメニア文字

内部には上記ふたつの教会よりさらにこじんまりした聖堂があります。神父がタシケントのアルメニア教会(42. 日曜は教会巡り!タシケントのおすすめ教会を一挙ご紹介)も兼務しているため礼拝は隔週で行われるそうで、私が訪れた時は神父さんがこの教会やアルメニア正教の説明をしてくれました。現在サマルカンドに1500人近く、ウズベキスタンに4~5万人のアルメニア系住民が住んでいるとのこと。

別の機会に見学した時は、なんと民族衣装姿のアルメニア人が! このときはナウルーズが近い時期だったのですが、近隣の街でのナウルーズイベントに出演予定の方々だったようです。貴重な姿を見せてもらい感激しました。
彼らと少し話しましたがアルメニア語はあいさつ程度しか分からないそうで、母語は完全にロシア語になっているよう。

■神の聖母教会ЦерковьСвятойБогородицы

住所
70MahmudQoshg’ariyko’chasi,Samarqand
電話番号
+998-90-911-9433
アクセス
サマルカンド駅とレギスタン広場前を結ぶ73番バスなどが停まるBirinchihammomバス停から徒歩5分。レギスタン広場前からタクシーで約10分

●聖ポクロフスカヤ教会(ロシア教会)

この教会は上記3つの教会から少し離れたところにあります。建てられた年代も同じロシア教会の聖アレクセイ教会より古く、1903年の設立。アニメやおとぎ話に出てきそうな、青白の市松模様の屋根が目を引きます。
ここもほかの教会同様宗教施設の機能が失われ、1998年に再度使われるようになったとのこと。

小ぢんまりした聖堂にはたびたび近所の住人が訪れ、静かに祈りを捧げています。
この地域はロシア帝国期以来ロシア系住民が多く住むエリアで、この教会の近くには聖ゲオルギ教会「Храм Святого Георгия Победоносца」というもうひとつの教会があり、その背後にはロシア人墓地が広がっています。

■聖ポクロフスカヤ教会ХрамПокроваПресвятойБогородицы(Покровскаяцерковь)

住所
24XuseynBoyqaroko’chasi,Samarqand
アクセス
サマルカンド駅とレギスタン広場を結ぶ3番バスなどが停まるGUM-MakonMallバス停から徒歩5分。レギスタン広場からタクシーで約10分

なお、いずれの教会も観光客が訪れることはほぼなく、スタッフは外国人や旅行者に慣れていないため、念のためМожно войти?(モージナ・ヴァイチー?:中に入っていいですか?)と聞いてから中に入ることをおすすめします。
また各教会に行かれる際は露出度の高い服は控え(ロシア教会やアルメニア教会では女性はスカーフなど頭を覆うものが必須、逆に男性は帽子などを取るよう求められる)、静かに見学するようにしましょう。写真を撮りたいときもスタッフに、「Можно сфотографировать?(モージナ・スフォトグラフィーラヴァチ?:写真を撮ってもいいですか)」と必ず尋ねましょう。

それではコルシュグンチャ・ハイル(また会う日まで)!

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