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サローム(こんにちは)!
ウズベキスタンを旅する外国人観光客が楽しみにしているのは、歴史建築がすばらしい古都巡りではないでしょうか。
では、国内観光客はどんな場所を旅行しているのでしょう? もちろん、サマルカンドやブハラといった都市にもよく訪れますが、最近人気が出てきたのがネイチャーツーリズム。とくに有名なのが、タシケントとサマルカンドの間のジザフ州に位置する、「ウズベキスタンのスイス」の異名をもつザーミン(ザアミン、ゾミンとも表記)国立公園です。ここはソ連時代から避暑地や保養地として知られていましたが、国内旅行促進のため最近一気に観光開発が進んでいます。タシケントなどに駐在する外国人も、しばしばここを訪れているようです。
広範囲に見どころが点在しているザーミン国立公園へは、旅行会社をあたってタシケントやサマルカンドから車をチャーターしていくのが定番の移動方法。ただ、アクセスとなる町ジザフから乗り合いタクシーを乗り継いで行くこともできます。また2年前にザーミン国立公園へのアクセス駅としてタシケント―ジザフ間にダシュタバード(ダシュトボド)駅が設置され、1日2便のアフラシアブ号が停まるようになりました。いかんせんザーミン国立公園へはほどんどの訪問客がツアーやマイカーで訪れるため、せっかく作ったのに利用客がほぼいなさそうというのが悲しい実情ですが、ここからタクシーで移動することもできるでしょう。
同じ地名でややこしいのですが、ザーミン国立公園の麓にある町の名もザーミン。ジザフから車で1時間の距離にあります。ジザフやダシュタバードから来た場合は、ここで国立公園行きの乗り合いタクシーに乗り換えることになります(運がよければこの町に寄らない国立公園直行タクシーもあるかもしれません)。昨年には町の郊外に空港が造られ、タシケントからウズベキスタン航空のプロペラ機がやってくるようになりました。
この町自体には特に見どころはありませんが、町の南側の郊外にシャシリク屋がずらりと並んでいるゾーンがあり、ザーミン国立公園へ行く前の腹ごしらえや旅の終わりの打ち上げにおすすめ。暑い時期なら、ぜひ屋外にあるテーブル付き寝台タプチャンに座ってくつろぎましょう。
また町の中にビール醸造所があり、その名もずばりZOMINというブランドのビールが作られています。残念ながら醸造所の見学はできませんが、町の酒屋で買うことができ、上記シャシリク屋にも置いているはずなので、ぜひこのご当地ビールを味わってみてください。
ザーミンの町から南へ進んでいくと、気持ちのいい高原風景になり、山がどんどん迫ってきます。20分ほど走ると現れるのが山々に抱かれた湖、ザーミン貯水池。2019年に公開された日本ウズベキスタン合作映画『旅のおわり世界のはじまり』を見た方なら見覚えがあるかもしれません。ここは映画のラストシーンで登場する場所で、主人公を演じた前田敦子さんがまさにここに立っていたのです。前田敦子さんファンの方はぜひ聖地巡礼にいらしてください。
またここにはクルトの売り場がずらりと並び、地元の人々の間では"クルトバザール"と呼ばれています。クルトとは、ヨーグルトを固め球の形にした食べ物で、カザフ人やキルギス人といった遊牧民にとっての保存食ですが、ウズベク人はもっぱらビールのおつまみとして食べています。このような山岳地帯では自家製クルトを直販する光景がよく見られます。なかなか強烈な味で日本人は好みが分かれますが、試食だけでもぜひ。
ザーミン名物の巨大なナン・カザンパティルや、はちみつもぜひ買って味わってみましょう。
ここからさらに高度を上げていきます。10kmほど南に走るとゲートが現れ、ここからザーミン国立公園に入ります。ここで入場料として1人=1万7000スムの支払いが必要。
ここからは山深い土地ゆえ夏でも涼しく、また天気もころころ変わります。私はここを2度訪れましたが、いずれもちょうどここで雨が降り出しました。下界がどんなに暑くて晴れていても、長袖の服や雨具をもって訪れることをおすすめします。
ザーミン国立公園のシンボルになっているのが、建物全体が湾曲した特徴的な外観のサナトリウム。国立公園ゲートから約20km行ったところにあり、ザーミンの町やジザフからの乗り合いタクシーはここが終点になります。ぜひここに泊まってみたいところですが、宿泊できるのは長期療養者のみ。この周辺の山々はアルチャ(もみの木やヒノキに似た種類の樹木)が多いため空気がきれいで、古くから消化器疾患や皮膚病を患う人々がこのサナトリウムを利用してきたとのこと。
サナトリウム前で売られているザーミンTシャツにも、しっかりサナトリウムとアルチャが描かれています。私が買ったときはたった2万スム(2024年7月現在のレートで約240円)だったので、ぜひお土産にどうぞ。
このあたりには療養ではなく観光目的で訪れた旅行者向けのホテルも点在しており、外国人でも安価で泊まることができます。また企業の保養所も多く建ち並び、このザーミンが古くから知られた避暑地であることを改めて実感することができます。
ここから道は曲がりくねった峠道に。途中にあるのが、ライオンの泉を意味するシェルブロク。その名の通りライオンが水を吐いているような泉で、ウズベク人訪問客がペットボトルやポリタンクを持ち込み、うやうやしく水を入れていきます。
ここにはクマの像もありますが、ご覧の通りちょっとグロテスクな見た目。どうしてこんな恐ろしいクマを作ろうとしたのか、そもそもなぜライオンではなくてクマの像にしたのかと疑問は尽きませんが、この像と記念撮影を撮ろうとする訪問者は絶えず、ザーミンのアイドルになっています。(?)
峠道を登り切ると、タジキスタン国境になっている3~4000m級の山脈がついたてのようにそびえ立っている景色が見られます。この山々を目の前で眺められる絶好のロケーションにあるのが、Ramada Encore by Wyndham Zomin、Tryp BY Wyndham Zomin、Wyndham Garden Zominと3軒続けて並ぶウィンダム系列の最新ホテルたち。いずれも外資系ホテルらしく設備は申し分ないので、宿泊するならこのいずれかのホテルに泊まるのがおすすめです。このホテルゾーンには大型サウナ施設も建っており、また周囲には簡単なハイキングコースもあります。
そして先述のサナトリウムとこのホテルゾーンを結ぶのが、昨年夏に開通したロープウェイ。標高2000mから2500mまでを一気に移動することができ、キャビンからはサナトリウムやアルチャの森、そして美しい山々を一望することができます。運賃は片道6万スム。もし車をチャーターしている場合も、ぜひ往復どちらかはこのロープウェイに乗ってみてください。「ウズベキスタンのスイス」の異名のためか、このロープウェイはスイスの会社によって造られたそう。
ホテルゾーンから車で5分で、ザーミン国立公園最新かつ最大のランドマークにたどり着きます。それが去年12月に開通した、深い渓谷に架かる歩行者専用つり橋。この長さ300m、谷底からの高さ150mのスリル満点のつり橋を渡ろうと、いま国内全土から観光客が押し寄せているのです。
橋を渡るためのチケットは5万スムですが、あまりのフィーバーっぷりのためオンシーズンの週末は大混雑するよう。現に私が日曜に訪れた際も、チケット窓口も橋の入口も相当なカオスっぷり。橋が人であふれると危険なためか入場規制が図られていましたが、お客を入口でせき止めているときも警備員にキレ散らかすおじさんたちや隙あらば入口に体をねじ込もうとするおばさんたちが出現、なかなかストレスフルな経験を味わいました。平日か土日の朝いちばんに訪れるのがよさそうです。
橋を渡りきったところにはバンジージャンプ台があり、30万スム(2024年7月現在のレートで約3600円)でバンジージャンプを体験することができます。万一何か起きれば……という不安がよぎったビビリな私はあいにくやりませんでしたが、われこそはという方はぜひチャレンジしてみてください。安全性の保証はできませんが、大自然のなかのバンジーで高さもかなりあることを考えると、この値段は格安のはずです。
このつり橋の奥も国立公園は続いていますが、一気に悪路になるため観光客はわずか。その分、ダイナミックな風景を独り占めすることができます。国境警備兵たちが管理する立入禁止区域もあるため、このエリアに行くにはザーミンを熟知したガイドや運転手が必要でしょう。
ウズベキスタンの定番観光コースにはまだまだ組み込まれてはいないものの、シルクロードのイメージとはまた違ったウズベキスタンの一面を見たい方、そして町の喧騒を逃れて自然でリフレッシュしたい駐在員の方におすすめできる、このザーミン国立公園。特に今ウズベキスタン国内で話題のスポット、ロープウェイとつり橋はお見逃しなく!
なお私の個人ブログでは、この記事では載せられなかった観光情報やホテル情報などを載せています。旅行計画を立てられている方はこちらもぜひご覧くださいませ。
ジザフ州(ジザフ/ザーミン国立公園)・シルダリヤ州(グリスタン/ヤンギイェル)情報! – takumiの世界ふらふら街歩き
それではコルシュグンチャ・ハイル(また会う日まで)!