
炭鉱の歴史を芸術に変えたランス(Lens)の魅力と観光情報
2023.8.23
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パリから高速列車TGVで約1時間の距離にあるフランス北部の町、ランス。かつてヨーロッパ有数の炭鉱の町として栄えましたが、炭鉱が閉鎖してからは活気はなくなり、さびれた印象を受ける場所でした。しかし2012年にルーヴル美術館の別館ができると、芸術の町として再び注目されるようになりました。
フランスには二つのランスがあります。一つはシャンパンの産地として有名なReims(ランス)。もう一つが今回紹介するルーヴル美術館の別館があるLens(ランス)です。どちらもカタカナ表記だと「ランス」になってしまいますが、フランス語の発音では明確に異なります。
後者のLens(ランス)は、元は炭鉱の町だった雰囲気を今も残しています。ルーヴル・ランスは旧炭鉱の敷地に作られていますし、アールデコ建築のSNCF(フランス国鉄)ランス駅から北東にある中心街も、炭鉱労働者で活気があったかつての残り香を、各建物から感じられます。
Lensは炭鉱労働者に支えられた経緯からサッカーも強く、近年は日本人選手の所属と活躍もあって、前者のReimsもサッカー(スタッド・ランス)で日本における注目度は上がっていますが、後者のLensは強豪RCランスのホームタウン。「サン・エ・オール(Sang et Or:血と黄金)」という愛称を持つ赤と黄をカラーにするチームは、常にリーグアン(フランス1部リーグ)で上位を争っています。
ランス(Lens)の見どころは、まずルーヴル・ランス。そして旧炭鉱の景色です。ルーヴル・ランスはSNCFランス駅の西。同駅から整備された遊歩道を歩いて約20分で到着します。
駅から美術館までは「BULLE 1」と「Ligne 41」の2種類のバスも出ています。BULLE 1のバスは8分ごとに出発しますが、停留所「Parc Louvre-Lens」は美術館から600mの距離にあるため、バスを降りてからも少し歩きます。BULLE 1のバスは30分ごとに出発し、美術館から200mの距離にある停留所「Louvre-Lens」に停まります。足の不自由な人は、後者がおすすめです。
美術館は常設展は無料。企画展は有料です。常設展の展示スペースは「時のギャラリー(La Galerie du Temps)」と呼ばれる、広大なスペースに時系列でさまざまな地域の美術品が並べており、従来の美術館にはないユニークな展示方法を採っています。西洋のこの美術品ができた時代に、東洋ではこのような美術品が作られていたというようなことが分かります。美術館時代のデザインは日本の建築家ユニットSANAAが担当しています。
駅からルーヴル・ランスまでの遊歩道からは、採掘に伴う岩石廃棄物の集積跡であるボタ山を眺めることができます。
■ルーヴル・ランス(Musée du Louvre Lens)
住所:99 rue Paul Bert 62300
URL:https://www.louvrelens.fr/
ノール・パ・ド・カレ地域圏にあるランスは、同じ地域にあるリールなどと同様にフランドル地域の食べ物が名物です。黒ビールで煮込んだ牛肉のシチューであるカルボナード、パンをビールに浸してチーズで焼き上げたウェルシュなど。
この辺りの地域は気温が低くブドウ栽培にはあまり適さず、ワインではなくビールの産地です。そのためおいしいビールも多く、ビールを料理に使うことも多いです。
フランスのビール文化を体験してみたいと思う人は、フランス北部も旅程に入れて巡ってみても良いかもしれませんね。