
神聖な空気を深く吸い込んで運気アップ! 心身を癒やす奈良のお寺めぐり
2022.4.25
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今回ご紹介するのは新薬師寺です。超有名な世界遺産の薬師寺ではありませんが、圧倒的な迫力の仏像が触れられるほど間近で鑑賞できるスポットなのです。観光客でごった返す東大寺付近からちょっと足を伸ばすだけで、落ち着いた風情が漂う高畑エリアへ。観光客を見るのではなく、天平時代の名宝と向き合ってみませんか。
新薬師寺は、光明皇后が夫・聖武天皇の病気回復を願って747年(天平19年)に創建されました。当初は100人の僧が住み、七堂伽藍と東西2基の塔が立ち並ぶ大寺院でしたが、平安時代の落雷や台風で主なお堂を消失。唯一残った建物が現在のお堂です。2008年に奈良教育大学構内から当時の遺構が見つかり、東大寺・大仏殿を凌駕する「新薬師寺堂」が発見され、現存の仏像を含めた37体もの仏像が置かれていたといいます。全てが現存していたら、間違いなく世界遺産級の寺域と宝物だったでしょう。
鎌倉時代の建築である南門をくぐると本堂がひっそりとあります。国宝に指定される天平時代の建築で、天井を張らず化粧屋根裏を見せた簡素な造りの内部には、本尊薬師如来坐像と十二神将立像を安置しています。時間が停止したかのような空間にいると、この本堂と仏像が現存していることが尊く感じます。
薬師如来坐像は奈良時代後期から平安時代初期の作と伝わる像高190cmの巨像です。彩色や金箔を用いず、わずかに目と眉に墨、唇に朱を用いるだけの素木像であるからでしょうか、まったく威圧感を感じません。注目は左手にお持ちの薬壺です。時代を超越するかのように金色に輝いています。温和な表情とともにいつまでも眺めていられそうです。1975年の調査では像の体内から平安初期の法華経八巻(国宝)が発見されました。
十二神将とは、薬師如来の世界とそれを信仰する人々を守る大将で、一体につき7000人の眷属を率いているといわれています。十二の方角を守っていることから、干支の守護神としても信仰されています。京都で見る仏像の多くは木彫りですが、こちらは塑像(そぞう)という土を用いた彫刻で、奈良時代の名品(1931年補作の1体を除く)です。表面は青や朱、緑、紫に彩色され、現在も部分的に色が残っているので見つけてみてください。
実は国宝指定の名称とお寺の呼称が異なります。本記事ではお寺の呼称を記載します。ほかにも香薬師如来立像や景清地蔵の体内から発見されたおたま地蔵など、新薬師寺の“不思議な物語”はぜひ現地で確認してみください。ちなみにお名前に「新」とありますが「新しい」「シン・○○」という意味ではなく、霊験新たかな薬師の意です。
■新薬師寺
住所:奈良県奈良市高畑1352番地
電話番号:0742-22-3736
アクセス:JR奈良駅、近鉄奈良駅から市内循環バスで約10分「破石町」下車、徒歩約10分
営業時間:9:00~17:00
入館料:大人600円、高校・中学350円、小学150円
駐車場:10台
URL:https://www.shinyakushiji.or.jp/
今回の「乙な京都™」はいかがだったでしょうか。神聖な春日山の山麓にあり、近くには志賀直哉旧居や入江泰吉記念 奈良市写真美術館などもある高畑エリア。初めての奈良編としては変化球すぎたかもですが、人には教えたくないほどお気に入りのスポットです。