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山形市七日町。山形市役所が立つ目抜き通りであり、市民に中心市街地と認識されながら、ガイドブックにはなかなか載らないこのエリア。ここは今、地方都市が注目する「2040年への大改革」の舞台になっています。
単なるビル建設ではなく、町全体を「歩くほど幸せになるまち」に変えようという壮大なプロジェクト。現在、国土交通省は全国の都市再生において「人中心の街づくり(ウォーカブル推進)」を強力に後押ししており、山形市のこの挑戦はその先進モデルとして期待されています。
私がこの町の明日を伝えたいのは、ここが新しくなるからだけではありません。かつてそこにあった「歩く幸せ」を、私たちがもう一度取り戻そうとしているからです。文字通り「山形の歩き方」にぴったりのこのエリアについて、長年変わらないお気に入りの場所と、これからできる新たな見どころを今後も少しずつリポートしていきます。
私の原風景のなかには、いつも母と歩く七日町の景色がありました。ペーパードライバーだった母の手を引かれ、老舗の本屋さんで立ち読みをしたり、アズ七日町の図書館へ行き、ホールでは発表会のピアノを弾く。町中にジャスコがあった時期もありました。そこは、車に乗らなくても広い世界とつながれる特別な場所でした。
特に、ミスタードーナツ山形七日町ショップのことは、今でも鮮明に覚えています。ジュークボックスのある1階から螺旋階段を登った先の2階には、なぜかメリーゴーランドの木馬「カルーセル」がいて、その背中越しに眺める七日町通りの景色は、子供ながらに特別なものでした。今になって調べてみると、あのデザインはミスタードーナツが来たる21世紀への期待を込め、当時希望する店舗に取り入れていた「21型」という50年代アメリカンテイストのデザインで、いま唯一残る店舗も福岡県にあるのだとか。
あのミスドが入っていた「TAN6ビル」こそ、まさに今、再開発の槌音が響こうとしている中心地です。そして、その北側にあったのが、七日町の象徴だった老舗百貨店「大沼」です。1700年に創業し、320年以上の歴史を紡いできた大沼は、単なる商業施設ではなく、山形市民にとって「ハレの日」を象徴する場所でした。お歳暮やお中元のやりとり、特別な日の食事。町の品格そのものだったその看板が、2020年1月、全国でも珍しい「県内から百貨店が消滅する」という衝撃とともに幕を下ろしました。
2000年代から町の外側に広大な駐車場を備えたイオンモールが誕生しており、便利さと引き換えに、私たちは「車で目的地へ行き、用が済んだらすぐ帰る」という効率的な暮らしにも慣れていきました。いつしか七日町を歩く時間は、私たちの日常から少しずつ、遠ざかっていったのです。
その目指す姿は、かつての私たちが知っている姿よりも、ずっとダイナミックです。
山形市の新年度当初予算案は、一般会計の総額が前の年度から11%増え、過去最大の1171億4600万円に達しました。この力強い予算編成を背景に動き出すのが、七日町を「滞在そのものを楽しめる空間」へと再定義する挑戦です。
1. 再開発の核となる「七日町第1ブロック東地区」
大沼跡地や、かつてミスドが入っていたTAN6ビルを含む約1ヘクタールを一体的に整備する計画です。
• 3つのエリア構成: 全体を3つのエリアに分け、段階的に解体・整備が進められます。
• 新ビルの建設: 15階建てと7階建ての2棟の複合ビルを建設する構想です。
• 多機能な融合: 飲食店などの商業施設に加え、図書館などの公共施設、さらには高層マンション(居住機能)を組み合わせ、大沼が担っていた「町のリビング」としての機能を、新しい時代にふさわしい形で再生させます。
• スケジュール: 総事業費は約300億円。2040年度までの全体完成を目指し、長期的な視点で「歩くほど幸せになるまち」を実現しようとしています。
2. 「健康医療先進都市」との連動
七日町の再開発は、山形市が進める「市立病院済生館」の建て替えとも深く連動しています。
• 医療×文化×商業: 病院という「医療の核」と、七日町が持つ「文化・商業」の強みを融合。多世代が安心して暮らせるシンボルエリアを目指します。
• 新「山形市民会館」: 文翔館のすぐ隣(旅篭町)に移転新築される市民会館が、歴史的な景観と最新の芸術拠点を繋ぎ、散歩の質をより豊かなものにしてくれます。
◾️山形市ホームページ 山形市中心市街地グランドデザイン
https://www.city.yamagata-yamagata.lg.jp/shiseijoho/keikaku/1006997/1004016.html
TAN6ビルから山形市役所前へ延びる目抜き通りを9分ほど北へ進むと、そのつきあたりに、荘厳な石造りの建物が現れます。旧県庁舎であり、現在は山形県郷土館として愛される「文翔館」です。
文翔館の魅力はまた改めて記事にしますが、この庭園では、いま春の息吹が静かに、でも力強く芽吹いています。
先人たちが紡いできた町の歴史や文化は、私たちのアイデンティティであり、価値でもある。今回の再開発は、単に古いものを壊して新しいビルを建てるのではありません。文翔館に代表されるこのエリアの深い歴史、そしてこの庭園に息づく四季の自然を踏まえ、その価値を未来へと繋いでいく作業なのです。七日町に点在する魅力的なスポットを、歩くことで一本の物語として繋いでいく「回遊性」の向上を目指して。
「車を置いて、ちょっと歩こうよ」
そう自信を持って言える山形市・七日町の未来への旅に、みなさんも招待します!