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歌舞伎俳優の中村鷹之資さんが4月9日、パリ市内にあるパリ日本文化会館で行われた歌舞伎イベントに出演。舞台上で鷹之資自身が化粧や着物の着付けをし、歌舞伎の舞台裏を解説する「女方ができるまで」が行われました。あわせて「藤娘」と「石橋(しゃっきょう)」も披露しました。
鷹之資さんにとって今回の渡欧は初めての海外公演。パリで4月9日から2日間、開かれている公演を皮切りに、ローマ、ケルンの国際交流基金日本文化会館でも開催。演目はいずれも「女方ができるまで」と「藤娘」を行い、パリ公演のみ「石橋」が加えられています。
公演に先立ち、パリ日本文化会館で開かれた会見で、鷹之資さんは「パリを訪れることができて本当に嬉しい」と集まったフランスメディアに挨拶。「パリという街の文化、芸術水準の高さ、それらに関わる人たちが自分の国の文化に誇りを持っている姿に本当に感銘を受けました。私も日本の歌舞伎を代表して今回来させていただいた。皆様に歌舞伎の魅力を精一杯伝えられれば」とパリ公演の抱負を述べました。
演目について「藤娘という役は、男性中心に演じる役者でも必ず稽古をする基本的な女方の踊り」と説明。「今回踊らせていただくにあたって、ストレートに藤娘の魅力が伝わるように、古典的に演じる藤娘(潮来出島)にしたいと思いました。今回のヨーロッパ公演が、私にとっても新たな何かきっかけになる公演になればいいと思っています」と語りました。
パリ公演に見どころは、女方の藤娘と立役の石橋という、対照的な2演目を見られるというところ。「石橋は私の家の天王寺屋にとってゆかりのある演目。それを今回演じられて光栄です」と述べました。
鷹之資さんは、5代目・中村富十郎の子として誕生。富十郎さんが高齢でもうけた子供だったため、鷹之資さんは、若くして父である富十郎さんを亡くしています。「私の父は、私が11歳の時に亡くなってしまいました。ですので、私は父から多くのことを学ことができなかったんです。そんな中で父が教えてくれた唯一のことがこの獅子の毛を振るというものなんです」と石橋との縁を説明。
「まだ私が10歳の時に、父と『連獅子』という演目を踊らせていただいた時のことなんですけれども、稽古場でジャケットを着て見ていた父が、急に私の子供用の獅子の毛を頭にかぶって、実際に踊って見せてくれたんです。歌舞伎の世界では、先輩が後輩にものを教える時は、マンツーマンで、直接口伝えにいろいろなことを教えるんですけれども、その時の父の、毛を振ってくれた姿や、言ってくれたことは私の一生の宝ですし、今でも大事に守っています」と当時の思い出を語りました。
会見では日本で大ヒットした映画『国宝』についての質問も出ました。同作品は、2025年の第78回カンヌ国際映画祭の独立部門「監督週間」において世界で初めて上映されています。
鷹之資さんは「今まで歌舞伎を見ていなかった人や若いお客さまが大変増えた」と前置きして、「今、歌舞伎を始めとする日本の伝統芸能は存続の危機にある部分が大きい。400年続いた歌舞伎がこれからも続いていくためには、そうした一人一人の、日本だけでなく海外の方からも歌舞伎の関心が増え、劇場へ足を運んでいただきたいと思っています」と述べました。
『国宝』に関連づけて、重要無形文化財保持者(人間国宝)だった中村富十郎さんの息子として生まれて、プレッシャーを感じることはなかったのかという質問も出ました。
鷹之資さんは「特別なプレッシャーを感じたことはない」と答えつつも「歌舞伎において血筋や家柄というのはすごく大きな意味を持っていて、私の場合で言えば、この世界において父が亡くなるということは、首が無いのも一緒だと言われるくらい父親の存在というのは大きい。私は映画で言うと、血筋がある家の人間として生まれましたが、父を早く亡くしたために、大変な苦労がありました。父が亡くなってからは、母が女手一つで私を守って育ててくれまして、他にもいろいろな方の力と、先生方に教えをいただいたことによって、今までやってくることができたと思っています」と自身のこれまでを振り返りました。
会見後は、集まったフランスメディアに対して、通し稽古も公開。ヨーロッパ公演を経験しての、さらなる飛躍が期待されます。
■パリ日本文化会館(Maison de la culture du Japon à Paris)
住所:101 bis Quai Jacques Chirac 75015 Paris
URL:https://www.mcjp.fr/
日時:「女方になるまで」2026年4月9日、10日