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谷根千(やねせん)をご存じですか?東京の文京区、台東区にある谷中・根津・千駄木の総称で、江戸後期から明治、大正、昭和時代にゆかりのある建物や史跡が混在し、下町情緒が色濃く残るエリアです。小さな商店街や工房、寺院や狭い路地に昔ながらの住宅地など、どことなく懐かしさを感じながら街あるきをしてみませんか。
谷根千への最寄り駅は地下鉄(東京メトロ)千代田線の千駄木駅、根津駅、JR日暮里駅などがありますが、今回は一番北に位置する日暮里駅を起点にしました。
日暮里駅北口改札を出ると目の前が跨線(こせん)橋になっていて、下御隠殿橋(しもごいんでんばし)というそうです。ここから見える景色は、東京、上野など東京の主要駅から発着する上下合わせて14本もの線路と京浜東北線、新幹線(東北・北陸・山形・秋田・北海道・上越)、山手線、宇都宮線、高崎線、常磐線、京成線と多種多様な路線がひっきりなしに行きかう圧巻の「鉄道銀座」です。橋の欄干にはかつてこの跨線橋下を走っていた新幹線200系電車(東北新幹線の最初期の列車)や寝台特急北斗星などを模したレリーフが飾られ、このバルコニーエリアがトレインミュージアムと呼ばれています。
●下御隠殿橋・トレインミュージアムについて
日暮里駅から御殿坂(ごてんざか)を上がって「谷中銀座」に向かいます。ここは1950年代から昭和の雰囲気を色濃く残す商店街です。「ゆうやけだんだん」と呼ばれる商店街入り口の階段からは眼下に商店街が一望でき、まさに夕焼けの時刻にうってつけの観光スポットです。
谷中銀座を通り抜けると引き続き「よみせ通り」という商店街があり、ここにもいくつか昭和風情のある商店が並んでいます。このあたりでは台東区のコミュニティバス「めぐりん」が走っていて、街の雰囲気に合わせてか、大正ロマンを感じさせるレトロカラーの車体がかわいらしいです。
よみせ通りを突き当りまで歩くと、バス通りに「枇杷(びわ)橋跡」の看板が立っています。昔の東京は今より数多くの小川が流れていたそうで、ここも「藍染(あいぞめ)川」という川が現在は暗渠(あんきょ)※となっているそうです。
※埋め立てや地下化で地表からは見えない水路の事
その暗渠にあたるのが、蛇行した狭い路地の「へび道」で、「千駄木の七曲り」 とも呼ばれています。周囲は主に住宅街となっていますが、道の形をたどっていくと、昔流れていた川の様子が想像できます。
●谷中ぎんざ(谷中銀座商店街)
●台東区循環バスめぐりん(台東区ホームページより)
※谷根千エリアは「東西めぐりん」路線を参照
「へび道」を抜け、少し根津方面に向かうと、「旅館 澤の屋(さわのや)」があります。
いまよりまだインバウンドが高まっていなかった1982年ごろから積極的に海外からの宿泊客を受け入れ、「日本風のおもてなし」と「海外客のニーズ」を融合した家族経営の旅館として、テレビなどでも何度か紹介されたことのある老舗旅館です。
■旅館澤の屋
住所:東京都台東区谷中2-3-11
電話番号:03-3822-2251
URL: http://www.sawanoya.com/nihonngho.html
谷中エリアの住宅街の坂を上がっていくと、「大名時計博物館」という小さな博物館があります。昭和、大正レトロからさらに時代をさかのぼって、ここは「勝山藩下屋敷跡」と書かれた石碑があり、勝山藩(現在の岡山県真庭市)の藩主だった三浦家のお屋敷だったところで、門構えや周囲の石塀から江戸時代の名残も感じられます。博物館自体は敷地内に建つ一部屋だけの小さな建物ですが、展示されている大名時計は当時の太陰暦(たいいんれき)に基づく複雑な時間の読み方を当時最先端の精巧な技法で制作されたものばかりです。この大名時計の時計仕掛けを見学して初めて「午前」「正午」「午後」の本当の意味を知ることができました。
■大名時計博物館
住所:東京都台東区谷中2-1-27
電話番号:03-3821-6913
開館期間・時間:1月15日~6月30日、10月1日~12月24日 午前10時~午後4時
休館日:月曜日、夏季(7月1日~9月30日)、冬季(12月25日~1月14日)
入館料:300円
URL:https://t-navi.city.taito.lg.jp/spot/1078 (台東区公式観光情報サイト)
谷中の寺町界隈には重厚な仏閣だけでなく、歴史がはぐくんだ不思議な光景があります。その一つが「谷中のヒマラヤ杉」です。狭い路地の三叉路に建つ「みかどパン」屋さんの軒先の木が巨木に成長して家に食い込むような形になっています。『美しい日本の歴史的風土100選』にも選ばれ、台東区の保護樹木でもあるそうです。(2020年の台風で枝折れの影響もあり、近年かなり大掛かりな剪定があったようです)
ヒマラヤ杉の裏手には溶岩のような黒い岩と小さなお社があつらえた、「谷中富士」という富士塚があります。富士塚の発祥は江戸時代にさかのぼり、富士山信仰(富士講)に基づき、富士山の溶岩などを使ったミニチュア富士を作ったもので、都内だけでなく関東各地に今もいくつか残っているそうです。
谷中と上野の境界エリアである上野桜木交差点まで来ると、「カバヤ珈琲」という、昔ながらの木造二階建ての店舗も含め観光客に人気の喫茶店があります。大正時代にミルクホールとして創業して以来、谷中のシンボル的な存在の喫茶店だそうです。2009年(平成20年)に往時の町家風外観を保全しつつ大規模な改修を経て現在に至るそうです。名実ともにレトロな喫茶店で人気メニューのたまごサンドやルシアン(コーヒーとココアのミックス)などを味わってみたかったのですが、入店まで1時間待ちと言われるほどこの日は混雑していたので、通りを挟んで二軒隣にある「清浄無垢(せいじょうむく)」という喫茶店に入ってみました。こちらはモダンな店内ですが、メニューは和風あり、レトロありと多彩で、セットメニューを頼むと店内にある駄菓子を一つおまけしてくれるというサービスもありました。
カバヤ珈琲の向かいにはしたまちミュージアム(2023年4月までの名称は下町風俗資料館)の付設展示場として、「旧吉田屋酒店」の建物が一般公開されています。1910年(明治40年)の木造店舗には大きな酒樽や帳場など細部にわたって内装が再現されています。
■谷中のヒマラヤ杉
住所:東京都台東区谷中1-6-15
参照:https://t-navi.city.taito.lg.jp/spot/1122 (台東区公式観光サイト)
■谷中富士
住所:東京都台東区谷中1-6-14
■カバヤ珈琲
住所:東京都台東区谷中6-1-29
電話番号:03-3823-3545
営業時間:火~日 午前8時~午後6時(フードラストオーダー午後5時)
月曜定休(祝日の場合は翌日定休日)
インスタグラム:https://www.instagram.com/kayabacoffee/
参照資料:https://taireki.com/kayaba2/(NPOたいとう歴史都市研究会)
■清浄無垢(せいじょうむく)<喫茶店>
住所:東京都台東区上野桜木2-10-5
電話番号:03-6761-1269
営業時間:午前9時~午後6時
定休日:第一火曜日
URL:https://seijyoumuku.com/index.html
■旧吉田屋酒店(したまちミュージアム付設展示場)
住所:東京都台東区上野桜木2-10-6
開館時間:午前9時30分~午後4時30分
休館日:月曜日(祝日の場合は翌平日)、年末年始
入館無料
URL: https://www.taitogeibun.net/shitamachi/shitamachi_annex/
上野桜木交差点から南に延びている「芸大さくら通り」を抜けると、美術と音楽の最高学府のひとつ、東京藝術大学のキャンパスにたどり着きます。音楽学部の校門や一部の建物は明治のころからありそうな古いレンガ造りの建物が残っていて、フェンス越しからでも少しその様子はうかがえます。毎年9月に開催される藝祭(げいさい・大学祭)は音楽・美術両学部の学生たちによる完成度の高い神輿や作品の発表が学生・一般問わず人気を呼んでいます。
起点の日暮里駅へ戻るには、谷中霊園を通り抜けていきます。谷中霊園も都内有数の歴史ある都営墓地で、徳川幕府最後の将軍、徳川慶喜をはじめ、明治、大正、昭和時代の著名人が多く埋葬されています。春には桜の名所として訪れる日も多いようです。
霊園の敷地内には1644年建立の天王寺五重塔がかつてありました。1772年に火災で焼失し、1791年に再建されたものは1957年(昭和32年)まで谷中のランドマークとして存在していたそうですが。放火により再度焼失したのちは礎石と記念碑のみ残されています。
谷根千まちあるき、いかがでしたでしょうか。このエリアにはほかにも画廊がたくさんあったり、朝倉彫塑館、寺町美術館、森鴎外記念館など様々なミュージアムがあるほか、せんべい屋や和菓子屋など、なつかしい商店を見て歩くだけでもワクワクする散策コースです。東京の街歩きまだまだ奥深いと感じます。