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東京への旅の途中、竹芝のメズム東京へ立ち寄りました。版画の陰影をスイーツで表現するというユニークな企画で、国立西洋美術館とのコラボレーションによる期間限定のアフタヌーン・エキシビションです。光と影をテーマにしたスイーツやセイボリーが並び、17世紀オランダの物語を味わいながら静かにたどるひとときとなりました。
一番心を動かされたのは、メインで登場する「後光のパンナコッタ」でした。
ホイップクリーム入りのシュークリームをチョコレートでコーティングした黒いボッシュボールとカカオクランブルで版画の深い影を表し、そこにバニラパンナコッタが光のように差し込む構成です。
カカオの香ばしさとパンナコッタのなめらかさが交互に舌の上を移り変わり、見た目の陰影がそのまま味の起伏になっているように感じました。
このデザートは、同じ形の型が市販されていないため、
星形の凹凸にチョコレートがうまく流れ込まず、作り直すことを何度か繰り返したという話も伺いました。
副総料理長の養父直人さん(マスターキュリナリーアーティスト)によると、レンブラントの作品は絵画も多く残っていますが、今回の展覧会は版画に焦点を当てているとのことでした。
インクが銅版のエッジングに落ちていく様子や、その質感をデザートでどう表現するか、試行錯誤を重ねたそうです。
《百グルデン版画》に描かれたキリストの後光を、皿の上の光と影として置き換えたのがこのデザートの核だと聞き、一皿に込められた背景を知ってから食べると、味わい方が変わってきます。
水面をイメージした内装が印象的で、昼は東京湾を望む水辺のカフェのような落ち着きがあり、夜には天井がブルーに変わると教えていただきました。
窓の向こうには浜離宮恩賜庭園の緑が広がり、訪れた日は雨でビル群がうっすらとかすみ、東京スカイツリーも輪郭だけが浮かぶように見えました。その静けさが、今回のモノクロームをテーマにしたアフタヌーンティーと自然に響き合っていたように感じます。次は夜の時間帯に訪れ、空間がどのように変化するのかも見てみたいと思いました。
アフタヌーン・エキシビションは今回で17回目。クリエイティブディレクターの小泉堅太郎さんが、その時々のテーマに合わせて絵画や彫刻など異なる作品を選び、作家の生い立ちや作品にまつわる物語をメニューへ落とし込んでいるそうです。
タレント(メズム東京でのスタッフの呼称)の方々は気さくに声をかけてくださり、アトリエのような空間にやわらかな温度が添えられていました。
前菜として並ぶ8種のスイーツ&セイボリーは、それぞれレンブラントの人生の一場面に着想を得ています。
レンブラントの生まれ故郷であるオランダのライデンにちなんだポッフェルチェやニシン・サンドから始まり、結婚、代表作《夜警》の完成、晩年までを、味わいながらたどっていく構成です。
一皿ずつに物語があるとわかると、次は何が出てくるのかという楽しみも増していきました。
ドリンクは、ライデンをイメージした前菜とのペアリングで、ノン
「漆黒のエスプレッソ」は、深い苦味と奥行きのある味わい。カカオの風味やパンナコッタの余韻ともよく合いました。
最後にはコーヒーや紅茶をいただき、アフタヌーンティーのプログラムが終了。アートを味わいながら、レンブラントの人生をたどるひとときとなりました。
従来の華やかなアフタヌーンティーとは趣が異なり、
今回はモノクロームの陰影を軸にした構成でした。
色数を絞った表現は難しさもあるはずですが、実際に運ばれてきた一皿一皿はしっかりとおいしく、色数を抑えた潔さと、確かな美味しさが両立していたのが印象的でした。
料理についてお話ししてくださった副総料理長の気さくなお人柄もあって、話を聞くほどに、一皿ごとの手間と物語の深さが見えてきました。版画という平面の表現が、デザートという立体に置き換わっていく過程を知り、素直に感動しました。
次回東京を訪れる際は、夜のブルーに染まる「Whisk」で、このシリーズを味わってみたいと思います。
「アフタヌーン・エキシビション チャプター17『レンブラント―光のオランダ紀行―』」の開催期間は、2026年9月30日までです。
10月からは東京国立博物館とのコラボレーションで、チャプター18が始まります。こちらも、芸術作品がどのように立体的なスイーツへと生まれ変わるのか、興味津々です。
■メズム東京、オートグラフ コレクション
16階 Bar & Lounge Whisk(バー&ラウンジ「Whisk」)
・開催期限:9月30日
・提供時間:
平日/14:00~、14:30~、15:00~、18:00~
土・日・祝日/14:00~、14:30~、15:00~
・料金:7,000円(消費税・15%のサービス料込み)
住所:東京都港区海岸1-10-30
電話番号:03-5777-1111
*写真掲載について、許可をいただいています。