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こんにちは! カリフォルニア特派員のかんです。
只今、歴史情緒と洗練された現代が交差する東京・日本橋に位置する三井記念美術館にて、茶の湯を嗜む方や器好きにとって見逃せない特別展「館蔵の茶碗100撰 ―国宝から手造茶碗まで―」が開催されています。
同館が誇る200点以上の茶碗コレクションのなかから、国宝・重要文化財をはじめ、豪商・三井家300余年の歴史に育まれた茶碗100点が勢ぞろいする圧巻の展覧会です。館蔵品のみで構成された茶碗展としては約30年ぶりの規模となる本展だとか。今回、その見どころと展示の特徴をご紹介します。
では、特別展を追ってみましょう。最初に展示室1に入ると、重要文化財を含む屈指の名品が貴方を迎えてくれます。街中で見かける特別展のチラシに掲載されるお茶碗が、最初の展示室で一度に来客に対峙する工夫は、さすがです。
では、どんなお茶碗が並んでいるか、ご紹介しましょう。
<樂長次郎 作「黒樂茶碗 銘 俊寛」(重要文化財)>
千利休の侘茶の世界を体現する、静謐で引き締まった佇まいの黒楽です。
轆轤を使わず手の中で土を押し広げ、内側と外側を箆(へら)で削り出した長次郎特有の手捏ね(てづくね)技法による一碗です。無駄な装飾を徹底して削ぎ落とした直線的な立ち上がり、わずかに内側へ抱え込むように納められた口辺、そして畳付きにどっしりと座る小ぶりな高台。誇張のない静けさの中に、掌で茶の温もりを直に受け止めるための純粋な造形美が宿っています。
<本阿弥光悦 作「黒樂茶碗 銘 雨雲」(重要文化財)>
長次郎の「静」に対し、光悦のダイナミックな「動」が際立つ名碗です。大胆に箆で削り落とされた稜線の陰影が魅力的です。漆黒の釉薬が腰のあたりで途切れ、素地の赤褐色が覗く幕釉(まくぐすり)の景色は、一天に黒雲が広がり、今にも雨が降り出しそうな気配です。
<樂道入 作「赤樂茶碗 銘 鵺(ぬえ)」(重要文化財)>
樂家三代・道入(通称ノンコウ)による一碗。赤土に透明釉を掛けた鮮やかな発色の中に、黒褐色の斑文や白く濁る部分が入り混じり、頭は猿、尾は蛇という伝説の妖怪「鵺」に見立てられたという通り、妖艶でとらえどころのない景色を描き出しています。濃茶・薄茶どちらを点てても緑が鮮烈に映える、江戸初期の美意識を象徴する優品です。
これほどの茶道具が一堂に並び、ガラス越しに360度近い視点で掌のなかの造形美を観察できるのは、圧倒されるばかりです。
展示室2では、日本で焼かれた陶器として国宝に指定されている「志野茶碗 銘 卯花墻(うのはながき)」を単独展示しています。
轆轤挽きしたあとに手でたわませた楕円形の筒形は、両手で包み込んだときに指が自然と掛かり、手馴染みが良さそうに思えます。たっぷりと掛けられた白濁の長石釉は、ぽってりとした雪のような柔らかさ。素地の上に鬼板(鉄絵の具)でざっくりと引かれた縦横の格子文様と、釉が薄くなった部分にふわりと赤く発色した「火色(ひいろ)」が、初夏の垣根に咲く白い卯の花の情景を連想させます。茶を点てたときの緑色と、ぽってりとした白い見込(みこみ)のコントラストを想像しながら、そして茶を服した後に現れる茶溜まりの景色を想像しながらじっくりと対峙したい逸品です。
展示室3では、なんと、国宝茶室「如庵」の再現とそこに置かれたお道具の取り合わせを愉しむことが出来ます。筆者は丁度先日 国宝の茶室「如庵」を参観してきたばかり。感慨が深まります。
床の間のしつらえとともに、茶碗が茶席の中でどのように息づくかを体感できます。
展示室4では、唐物・高麗茶碗から和物茶碗への展開をたどることができます。また、この展示室のお茶碗は、写真撮影が可能です。(アイキャッチに使用したお茶碗銘『うたた寝』はこちらの展示されていました)
大井戸茶碗「上林井戸」や銘「須弥(別銘 十文字)」(伝 古田織部所持)など、織部好みの「破格の美」を象徴するようなあえて十字に割って継ぎ直したとされる迫力ある逸話を持つ茶碗が展示されています。
後半の展示室(展示室5~7)では、三井家とゆかりの深い永樂家(保全・和全)の華やかな茶碗や祥瑞写、さらには三井家歴代当主自らが土をひねり釉をかけた「手造茶碗」が並びます。道具を蒐集・愛玩するだけでなく、自らも茶の湯の世界に深く身を投じていた三井家の美意識と歴史の厚みが直に伝わってきます。
この秋、ぜひ、手のひらの小宇宙に込められた名匠たちの技と三井家の美意識を味わいに、日本橋へ足を運んでみてください。
【館蔵の茶碗100撰 ―国宝から手造茶碗まで―】
会期:開催中(11月23日まで)
会場:三井記念美術館(東京都中央区日本橋室町2-1-1 三井本館7階)
三井記念美術館への歩き方:東京メトロ銀座線・半蔵門線「三越前駅」A7出口直結・東京メトロ銀座線・東西線・都営浅草線「日本橋駅」B9出口より徒歩約4分・JR「新日本橋駅」出入口1より徒歩約3分・JR「東京駅」日本橋口より徒歩約7分
当日券:一般1200円・大学/高校生700円・中学生以下無料
ウェブサイト:https://www.mitsui-museum.jp/exhibition/index.html
【美意識の源流と対比を楽しむルート(六本木・白金台)】
午前: 泉屋博古館東京で「唐物誕生」を鑑賞(茶の湯デザインの源流である中国陶磁の端正な美をインプット)
昼: 六本木から南北線で白金台へ移動
午後: 畠山記念館の「異国への憧れ」を鑑賞(中国にとどまらず、朝鮮・東南アジアなど海を越えたアジア古陶磁が日本の数寄屋空間でどう調和するかを味わう)
【王道と破格の美を比べるルート(日本橋・丸の内)】
午前: 三井記念美術館の「館蔵の茶碗100撰」で国宝・重要文化財をはじめとする茶碗の最高峰を堪能
午後: 丸の内の静嘉堂文庫美術館へ移動し、「民藝SHOCK!!」で河井寬次郎が挑んだ土と暮らしのエネルギーを感じる
芸術の秋です。魅力的な展覧会が目白押しのこの季節、どうぞぜひ展覧会に足を伸ばしてみてくださいね!