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南フランス観光の定番・魅力あふれるプロヴァンスの歩き方

守隨 亨延

守隨 亨延

フランス特派員

更新日
2020年3月15日
公開日
2020年3月15日
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フランス南部にあり温暖な地中海性気候に包まれたプロヴァンス地方は、リゾート地が点在する定番のバカンス先です。アヴィニョンやマルセイユ、エクス・アン・プロヴァンスなど個性のある町が多く、恵まれた自然と文化遺産を抱える魅力あふれる地域です。

プロヴァンスについて

マルセイユ近郊にあり景勝地が広がるカランク国立公園@istock

プロヴァンスはフランス南東部にあり、西をローヌ川、北をアルプス、東をイタリア国境に囲まれ、南は地中海に面しています。丘陵地が多く、ブドウやオリーブ栽培が盛んです。そのほかにも酪農や米、野菜、果物が特産品として知られています。地中海性気候のため温暖で、海沿いのサン・トロペなどは保養地として親しまれています。一方で化学、造船など工業、港町を中心にした商業も盛んです。マルセイユやトゥーロンなどは、プロヴァンスを代表する産業都市として有名です。

マルセイユの港に停泊する船@istock

プロヴァンスの歴史は古く、紀元前2世紀にローマの属州に組み込まれていました。その後12世紀にはプロヴァンス伯爵領として、15世紀にはフランス王国領として、その歴史を歩んでいきました。また14世紀にはアビニョンに教皇庁が置かれ、その際にはローマから移ってきたカトリックの中心地として、イタリア・ルネッサンスの影響も受けています。

夜のアヴィニョン教皇庁宮殿@istock

パリからの交通の便がよく、列車はパリ・リヨン駅からマルセイユ方面へ向かうTGVが頻発しています。パリの二大空港(シャルル・ド・ゴール空港とオルリー空港)とマルセイユ・プロヴァンス空港の間は、エールフランスが1日に多くのフライトを運航しています。車ではパリからプロヴァンス方面へ向かう高速道路A6とA7が南へ伸びています。

■プロヴァンス(フランス)の天気&服装ナビ
・URL: https://www.arukikata.co.jp/weather/FR/PVV/

プロヴァンスの玄関口「アヴィニョン」

アヴィニョン市内の様子@istock

アヴィニョンは、中世からの町並みとカトリックの文化が色濃く残る町です。アヴィニョンの転機は1309年、フランス人の教皇クレメンス5世がこの地にローマ教皇庁を移したことに始まります。

当時、フランス国王と教皇庁の間では、権力争いが絶えませんでした。その結果、フランス国王の圧力に屈するかたちで教皇庁が丸ごとアヴィニョンに移されましたのです。教皇庁がローマからアヴィニョンに移されたことは、かつてユダヤ人が新バビロニアに征服され、バビロンに連行されたバビロン捕囚になぞらえて「アヴィニョン捕囚」と呼ばれています。その後アヴィニョンは、100年以上にわたり教皇が鎮座するカトリックの中心地として栄えました。この状態は1377年のグレゴリウス11世まで7代続きますが、それ以降も1417年まではローマに対抗するかたちでアヴィニョン教皇が立てられていました。

教皇庁宮殿に飾られたマリア像@istock

そのためアヴィニョン市内での見どころは、この教皇庁宮殿です。ヨーロッパ最大のゴシック建築で、要塞のような外観に圧倒されます。建物内には多くの部屋に分かれており、14世紀のフレスコ画も残ります。

■教皇庁宮殿
・住所: Place du Palais 84000
・定休日: 無休
・営業時間: 9:00〜18:30(3月)、9:00〜19:00(4〜6月、9〜11月1日)、9:30〜17:45(11月2日〜2月)、10:30〜17:45(1月1日と12月25日)、9:00〜20:00(7月)、9:00〜20:30(8月)
・料金: €12(サン・ベネゼ橋との共通券は€14.50)
・URL: http://www.palais-des-papes.com/

昼間のアビニョン教皇庁宮殿@istock

教皇庁と並んで有名なのが、「アヴィニョンの橋」であるサン・ベネゼ橋。民謡『アヴィニョンの橋の上で』で、広くその存在を知られています。現在のサン・ベネゼ橋は川の半ばで途切れていますが、12世紀に建てられた当時は対岸のフィリップ美男王の塔まで続いていました。現在のような姿になってしまったのは、幾度ものローヌ川の氾濫を受けて壊されたからです。

■サン・ベネゼ橋
・住所: Boulevard de la Ligne 84000
・定休日: 無休
・営業時間: 9:00〜18:30(3月)、9:00〜19:00(4〜6月、9月1日〜11月1日)、9:30〜17:45(11月2日〜2月)、9:00〜20:00(7月)、9:00〜20:30(8月)
・料金: €5(教皇庁宮殿との共通券は€14.50)
・URL: http://www.avignon-pont.com/

ローヌ川に伸びるサン・ベネゼ橋@istock

教皇庁宮殿とサン・ベネゼ橋の間にあるプティ・パレ美術館には、アヴィニョン派絵画やイタリア絵画が揃っています。ボッティチェリ『聖母子』などを所蔵しています。

■プティ・パレ美術館
・住所: Palais des archevêques Place du Palais des Papes 84000
・定休日: 火曜、1月1日、5月1日、12月25日
・営業時間: 10:00〜13:00、14:00〜18:00
・料金: 無料
・URL: http://www.petit-palais.org/

フランス第二の都市「マルセイユ」

マルセイユ旧港@istock

プロヴァンス随一の都市がマルセイユです。フランス第二の都市で、パリ、リヨンに次ぐ都市圏を形成しています。

同所の歴史は古く、紀元前600年頃までさかのぼります。当時フォカイア(古代ギリシアの都市で現在のトルコ共和国のアジア側の西端)人が入植し、マルセイユの辺りはマッサリアと呼ばれました。紀元前2世紀にはローマの属州に。その後、当地を支配する為政者は時代とともに変わりつつも、地中海に面した貿易の要地として栄えてきました。現在は通商港に加えて、工業都市としても地位も築いています。

@istock

旧港を中心に見所が点在しており、旧港から南へ高台を登っていった先にノートルダム・ド・ラ・ギャルド・バジリカ聖堂が鎮座しています。ロマネスク・ビサンチン様式の建物で、聖堂からはマルセイユ市内や地中海のパノラマを楽しめます。

■ノートルダム・ド・ラ・ギャルド・バジリカ聖堂
・住所: Rue Fort du Sanctuaire 13281
・定休日: 無休
・営業時間: 7:00〜18:30
・料金: 無料

ノートルダム・ド・ラ・ギャルド・バジリカ聖堂の鐘楼には黄金のマリア像が立つ@istock

旧港から遊覧船に乗って向かうイフ島は、政治犯の監獄としても使われたことがある島です。アレクサンドル・デュマの小説『モンテ・クリスト伯』では、主人公であるダンテスがイフ島に幽閉されます。フランス革命初期を引っ張った中心人物のミラボー伯は放蕩者として、若い頃ここに閉じ込められた時期もありました。

■イフ島
・住所: 旧港フラテルニテ埠頭(Quai de la Fraternité)から出向
・定休日: 10〜3月の月曜、1月1日、12月25日
・営業時間: 10:00〜17:00(1月2日〜4月1日、10月2日〜12月)、10:00〜18:00(4月2日〜9月30日)
・料金: €6
・URL: http://www.chateau-if.fr/

イフ島@istock

地中海世界の歴史と文化、他民族交流をテーマに開館したヨーロッパ地中海文明博物館(MuCeM)もマルセイユならではの施設です。100万点近い収蔵品があり、宗教的、社会的、政治的に常に変化してきた地中海世界について学べます。同博物館はアルジェリア生まれのフランス人建築家リュディ・リチオッティによる設計です。17世紀に建てられたサン・ジャン要塞とは橋で結ばれています。

■ヨーロッパ地中海文明博物館
・住所: promenade Robert Laffont (esplanade du J4) 13002
・定休日: 火曜
・営業時間: 11:00〜19:00(5・6・9・10月)、10:00〜20:00(7・8月)11:00〜18:00(11〜4月)
・料金: €11
・URL: https://www.mucem.org/

≫≫≫ フランス最古の港町マルセイユの歩き方

旧港の先端にあるヨーロッパ地中海文明博物館@istock

町並みが美しい芸術の町「エクス・アン・プロヴァンス」

エクス・アン・プロヴァンスの町並み@istock

エクス・アン・プロヴァンスは、昔からイタリアやアルプスへの交通の要所でもあり、12世紀末にプロヴァンス伯爵領の首都となった町です。15世紀から16世紀にかけて大学や高等法院が置かれ、プロヴァンス地方の政治・学問・司法の中心地でした。町中には17〜18世紀の建物が多く残ります。

現在のエクス・アン・プロヴァンスにある裁判所は19世紀の建物@istock

エクス・アン・プロヴァンス生まれの著名人といえば画家のセザンヌです。セザンヌは印象派として活躍したのち、キュビズムなど20世紀の画家に大きな影響を与えました。1906年にその生涯を閉じましたが、晩年はエクス・アン・プロヴァンスで暮らしました。晩節4年間を過ごしたアトリエが、現在でも旧市街北側レ・ローヴの丘に残っています。アトリエ内はセザンヌの生前そのままの状態で保存され、画材などが展示されています。

セザンヌの父が所有していた別荘「ジャ・ド・ブッファン」やセザンヌ自身が足繁く通いキュビズムのアイデアになったといわれている「ビベミュスの石切り場」もエクス・アン・プロヴァンス近郊に点在しています。

■セザンヌのアトリエ
・住所: 9 Avenue Paul Cézanne 13100
・定休日: 1・2月の月曜、5月1日、12月25日
・営業時間: 9:30〜12:30と14:00〜17:00(3・10・11・12月)、9:30〜12:30と14:00〜18:00(4・5月)、9:30〜18:00(6〜9月)
・料金: €6.50
・URL: http://www.cezanne-en-provence.com/

セザンヌの絵画のモチーフになったサント・ヴィクトワール山@istock

エクス・アン・プロバンスのメインストリートがミラボー通りです。ド・ゴール将軍広場(ロトンドの噴水)からフォルバン広場(ルネ王の噴水)を結んでいます。通り沿いにはセザンヌやゾラが通ったカフェ「レ・ドゥー・ギャルソン」があります。通りを境に北側が旧市街、南側が旧貴族の館などが立ち並ぶマザラン地区です。

ロトンドの噴水@istock

旧市街の北側には、サン・ソヴール大聖堂が建っています。建物自体は、最も古い部分で2世紀といわれ、おもに5〜17世紀の各時代の構造物と建築様式で成り立っています。ロマネスク様式の回廊やメロヴィング朝(481〜751年に成立した王朝)の洗礼堂、15世紀に描かれたニコラ・ロフマン『燃ゆる茨』などがあります。

■サン・ソヴール大聖堂
・住所: 34 Place des Martyrs-de-la-Résistance 13100
・定休日: 無休
・営業時間: 8:00〜19:30
・料金: 無料
・URL: https://paroisses-aixarles.fr/aix-saintsauveur/

サン・ソヴール大聖堂の隣にはタピストリー美術館がある@istock

TGVでエクス・アン・プロヴァンスへ向かう場合は、TGVは市内のエクス・アン・プロヴァンス・サントル駅ではなく、郊外のエクス・アン・プロヴァンスTGV駅に着きます。TGV駅からエクス・アン・プロヴァンス市内のバスターミナルまではシャルバスが運行しています。

そのほかのおすすめ観光スポット

リュベロン地方自然公園の渓谷@istock

●神秘の泉「フォンテーヌ・ヴォークリューズ」
リュベロン地方の村フォンテーヌ・ヴォークリューズには、年間平均6.3億立方メートルというヨーロッパ1位の湧出量を誇る泉があります。村内には14世紀のカヴァイヨン司教の城跡、ロマネスク様式の教会などが残っています。20世紀半ばまでは村の主要な産業として製紙業が行われており、製紙水車も見学できます。

フォンテーヌ・ヴォークリューズの湧水はソルグ川となって流れていく@istock

●フランスの美しい村のひとつ「ゴルド」
リュベロン地方自然公園内にあり、岩山にへばりつくように町並みが広がっています。16世紀ルネッサンス時代の城が建ち、斜面には石造りの家々が並びます。1982年に設立された協会「フランスで最も美しい村」のひとつにも選ばれています。

山にへばりつくように広がる村の様子が分かる@istock

●最高峰ワインの地「シャトー・ヌフ・デュ・パプ」
ローヌ川沿いにある世界的に有名なワイン生産地です。国が定める基準に従い、シャトー・ヌフ・デュ・パプで作られたワインはAOC(原産地呼称統制)として「シャトー・ヌフ・デュ・パプ」を名乗ることができます。全体的には力強く個性あるワインである傾向が強く、高級ワインも多いです。村名はフランス語で「教皇の新しい城」の意味。かつてここにローマ教皇の別荘があったことに由来します。

シャトー・ヌフ・デュ・パブの特徴である大きな丸石の土壌@istock

プロヴァンス地方のおもなイベント

ローヌ川とアルルの町並み@istock

●エクス・アン・プロヴァンス音楽祭(7月)
エクス・アン・プロヴァンスで毎年7月前半から中旬にかけて開かれる、オペラとクラシック音楽の映画祭です。1948年から続いており、ザルツブルク音楽祭やグラインドボーン音楽祭、バイロイト音楽祭と並ぶヨーロッパを代表する音楽祭です。市内にあるプロヴァンス大劇場やジュ・ド・ポム劇場、メニエ・ドペッド館などを会場に行われます。

・URL: https://festival-aix.com/

●アルル衣装祭(7月)
毎年7月第一日曜にアルルで開かれる、伝統衣装に身を包んだ人々が集うイベントです。1903年に始まりました。異なる時代衣装に身を包んだ400人以上の参加者が毎年います。市内の通りを練り歩いたり、市内の古代劇場でショーが行われます。3年に1度選出される「アルルの女王」が主宰し、衣装祭に花を添えます。

・URL: http://www.festivarles.com/

●アヴィニョン演劇祭(7月)
毎年7月上旬から下旬までアヴィニョンで開かれる、国際的に有名な演劇祭です。フランスの演出家であるジャン・ヴィラールが1947年9月に開催した「アヴィニョン芸術週間」が元になっています。期間中は世界各国から演劇や芸人、観光客が集まり、市内は昼夜お祭り騒ぎに包まれます。国内外から招待された一流カンパニーが出演する公式イベントの「イン(In)」と、非公式に集まったカンパニーが自主公演を開く「オフ(Off)」というふたつの枠組みがあります。

・URL: https://www.festival-avignon.com/

プロヴァンス地方の料理・特産品

オリーブには、さまざまな種類がある@istock

プロヴァンス地方の料理は、地中海の太陽と海の恵みを存分に生かした料理です。トマトなどの野菜やハーブ、ニンニクを使い、見た目にも色鮮やかでフランス北部とはまた異なった味付けです。代表的なものは、魚介や茹でた野菜に付けて食べるニンニクを使ったマヨネーズソースのアイオリや魚介をサフランとともに煮込んだマルセイユ料理であるブイヤベースなど。料理のベースには特産のオリーブオイルが使われます。

魚介のブイヤベース@istock

天然素材だけを使い製造されるマルセイユ石鹸(サヴォン・ド・マルセイユ)も特産品のひとつです。伝統的製法のマルセイユ石鹸は、植物油と水酸化ナトリウム(オリーブやココナッツ、アブラヤシから抽出)と水のみを用いて作られます。マルセイユとその周辺には現在4社が営業を続けており、工場見学や直売所などを併設している会社もあります。

マルセイユ石鹸は植物油の含有量が72%以上と定められている@istock

プロヴァンスで生産される各種ハーブも特産品として人気です。プロヴァンス地方の料理にはハーブが欠かせません。6月末から7月上旬にかけてはラベンダーで、満開の花々を見ることができます。リュベロンにあるセナンク修道院では、開花時になると紫色の花が12世紀のシトー派の修道院の前を彩る美しい景色に出合うことができます。

■セナンク修道院
・住所: 84220 Gordes
・定休日: 無休
・営業時間: 10:00〜17:00(日曜は14:00〜)
・料金: €8(ガイドツアー)、€9.50(タブレットを使った個人見学)
・URL: https://www.senanque.fr/

セナンク修道院とラベンター畑@istock

プロヴァンスのおすすめのホテル

マルセイユの町並みと奥にノートルダム・ド・ラ・ギャルド・バジリカ聖堂@istock

●ホテル・ド・ロルロージュ(アヴィニョン)
市庁舎やオペラ劇場のある時計台広場に面したホテル。旧市街の中心部にあり、どこへ行くにも便利な立地です。

・住所: 1 Rue Félicien David 84000

●オテル・ル・コルビュジエ(マルセイユ)
ル・コルビュジエが設計した集合住宅「ユニテ・ダビタシオン」の一部を宿泊施設に転用したもの。同建物は2016年に「ル・コルビュジェの建築作品」として世界遺産に登録されており、歴史的建造物の中で泊まれます。市内中心部から少し離れるため建築好きな人向けです。

・住所: 280 Boulevard Michelet 13008

●サン・クリストフ(エクス・アン・プロヴァンス)
ロトンド近くの便利な立地で、ミラボー通りや観光局もすぐ近くにあります。アールデコ様式にプロヴァンスと現代的なテイストを加えたデザインです。

・住所: 2 Avenue Victor Hugo 13100

南仏プロヴァンスへ!

プロヴァンス北部にあるクレステ村@istock

プロヴァンス地方はフランス北部と異なり、景色や食べ物、気候がすべてがらりと変わります。風光明媚な場所ばかりで何度訪れても飽きさせない地域です。パリとセットで訪れて、ゆっくりとその違いを比べてみてください。

PHOTO: iStock

※当記事は、2020年3月11日現在のものです。

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