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国内外の旅行に関するニュースを徐々に目にする機会が増えてきました。この連載では、世界の主要観光局に自国のコロナの状況やその間の政治的な動き、旅行に関する施策を聞いていきます。第2回はニュージーランドです。
ニュージーランドは国民の安全を守るため、非常に厳しいロックダウンや制限を続けてきました。一方でオーストラリアとのトラベルバブル開始など再開に向けた取り組みも積極的に行っています。ニュージーランドの“今”を伝えます。
話し手:ニュージーランド政府観光局 ゼネラルマネージャー・インターナショナル グレッグ・ワッフルベイカー氏(Gregg Wafelbakker – General Manager International Tourism New Zealand)
聞き手:地球の歩き方総合研究所
※インタビューは2021年7月16日に実施されました。そのため、現在の現地状況と異なる部分があることを予めご了承ください。また、文中、文末に一部、●月●日時点でと入れる状況補足をしています。
Q1.それではまずニュージーランドでの新型コロナウイルスの影響をお聞かせください
2020年3月に拡大感染に対処するためレベル1~4の4段階の警戒レベルが設定されました。レベル1が最も低いものですが、それでも国境は閉鎖しました。現時点ではニュージーランド全土がレベル1に指定されており、今後、地域ごとに変わる可能性もあります。
レベル1では公共交通機関利用時のマスク着用や消毒などの基本的衛生管理が求められますが、国内の移動に関する制限はありません。
Q2. 観光地への影響や現状はいかがですか?
影響は甚大です。ニュージーランドにおける旅行産業は貿易における輸出産業の最も大きな担い手で、全労働人口の8%以上が従事していました。
他国同様、現在は私たちも国内旅行振興に注力をしていますが、調査によると国内旅行の12泊分の消費が海外からのお客様の1人分の消費にあたり、海外からのお客様の大幅な減少で約1290万NZドルもの減収になることが見込まれています。
現在は、国内旅行は再開され、先日まではオーストラリアとの国境も再開していました。
彼らの満足度を高めることで方向転換できている企業も多いですが、海外をターゲットにしている企業、は困難を強いられています。
Q3.オーストラリアとのトラベルバブル(国境再開)について
2021年4月18日からオーストラリアとは隔離なしで入出国ができるようになりました。友人や家族を訪ねに来た方も多く、経済的にも良い影響を与えています。
しかし残念ながら、オーストラリアの所々で小さな感染拡大が起きているため、現在は9月下旬まで(予定)一時中止をしています。
このオーストラリアとの国境再開は大きな一歩でしたが、残念ながら海外からのお客様が無くなっている分の損失を補填できるものではありません。
Q4.ワクチン接種の状況はいかがですか?
政府は今年中にすべての国民にワクチン接種の機会を提供できるようにすることを目標としています。
(※2021年7月末の時点では約25%[1回目、2回目の合計]が接種済み、当社調べ。8月中旬時点では対象となる全てのニュージーランド在住者は9月1日から予約を取ることができるようになっています)
Q5.コロナ後も続きそうなライフスタイルの変化はどういったものでしょうか?
在宅勤務やフレックスで働く人が増えています。コロナ禍以前からその傾向はあったのですが、今はニューノーマルになったといえるでしょう。
また、接触者追跡システムの使用というのも大きな変化ですね。
飲食店ではかなり以前からQRコードでの注文やキャッシュレス決済がありましたが、最近はカードを手渡すのをためらう人もいるので、非接触タイプの決済方式を使う人が増えていますね。
Q6.日本との国境再開に向けてのプランはいかがでしょうか?
安全な状態になるまで入国制限は続きます。年内の制限解除は難しいのでは、と政府は見ているようです。(*1)
Q7.旅行に関して何か長期的な変化はあると思われますか?
再び旅行ができるようになったとしても、そこにはいくらかの不安が残ると思います。
そこで、ニュージーランド観光業界の公式認証クォールマークに「新型コロナウイルス・クリーン認証」のロゴを導入しました。
このロゴがある宿泊・観光施設はクォールマークの認定を受けているだけでな く、新型コロナウイルス防疫対策を実施していることを証明するものです。
旅行者の方々には観光局のホームページを参照していただきたいと思います。
Q8.今後の観光戦略・ロードマップはどうお考えですか?
現在、海外からの観光客は事実上0(ゼロ)ですので、これから人数が増えるのは自明です。ですので、この人数を旅行業の回復を示すKPI(指標)とはみなしません。
経済、環境、社会、文化という4つの分野において、その情勢を図るための指標がそれぞれありますので、これにより数やその支出額のみに依拠しない指標で情勢を読み取ることができます。
もちろん、数や支出額も見てはいますが、数字で表されないデータを得るため、観光客からのフィードバックをいただき、国民にも海外からの観光客をどう思うか、といった意見を集めています。地方にもっと観光客が訪れれば、地元の人たちの観光客に対する印象も良いものになると考えています。
また、将来に向けて「Enrich Aotearoa」(エンリッチ・アオテアロア[=マオリ語でニュージーランド]を豊かに)というコンセプトも持っています。これは観光客の力を借りて、ニュージーランドをより良い国にしようというもので、観光客の方々にも先述の4つ、経済、環境、社会、文化に貢献していただきたいのです。
これまでは今持っているものを大切にしようという「サスティナビリティ」に焦点をあてていましたが、これからは旅行業を通じて国をより豊かにすることが目標です。
この新たな目標に近づくためには、いろいろな形でニュージーランドを豊かにしてくださる観光客に注目する必要があります。
今後はこの4つの分野すべてに貢献してくださる「上質な観光客」について考えていきたいと思っています。
例えば、地方を訪れていただいて、2~3週間過ごしていただけるとそれだけでその小さなコミュニティに貢献したことになります。この場合、そこでどのくらい消費したかということは焦点ではないのです。この場所を訪れ、人と人とのつながりを作り、コミュニティの結束を強くすることになるのです。
先住民マオリについて知り、文化的な多様性を学ぶ、ということもニュージーランドのコミュニティや文化を強固なものにすることにつながっていくのです。
Q9.今後PRしたい新しいテーマはどういったことでしょうか?
継続して発信してきている「100 % Pure New Zealand」のキャンペーンとともにニュージーランド政府観光局のブランド力を維持、そして高めていくことをとても意識しています。
そして、入国制限解除後には、海外の方に一番初めに旅行する国にニュージーランドを選んでいただきたいと思っています。オーストラリア、アメリカ、中国が最も市場規模が大きく、日本ももちろん重要な市場です。
これら主要ターゲットに対するメッセージでは3つのマオリ語の言葉を掲げていきます。
歓迎やもてなしを意味する「manaakitanga」、私たちの大地や環境保護を意味する「katiakitanga」、そして家族を意味する「whanau」です。
ニュージーランド人が互いに気にかけ、そして協力し合うということを表しています。どんな困難に陥ろうとも、誰しもが家族のように振る舞い、助け合うことが必要です。
これらのテーマはコロナ禍以前からもありましたが、日本からのお客様にはこの3つの言葉の意味を思い、そして今まで以上に広大な自然とつながり、それを満喫したいと感じていただけるようにしたいと考えています。
さらに「100% Pure New Zealand」キャンペーンに加えて、「Pure Welcome」というフレーズも掲げていきます。ニュージーランドが日本からのお客様の来訪を待ち望んでいることを伝えていきたいのです。
手法としてはデジタルメディア、SNSなどを活用して、ニュージーランドに興味がある方や以前訪れていただいた方々にアプローチをしていきます。
Q10.ワーケーション先としてのニュージーランドについては?
日本とは時差が3~4時間しかありませんから、日本の方がワーケーションで訪れるにはとても良い場所だと思いますよ。
Q11.日本人旅行者に知ってもらいたい旅先はありますか?
多くの方々が期待することの一つとして「くつろぎ」が挙げられると考えています。
ニュージーランドは日本と同じく車は左側通行です。なので、運転の心配はありません。
ぜひニュージーランドにいらした際は車で人里離れた場所まで足を運んでいただき、広々とした空間での「くつろぎ」を楽しんでいただきたいですね。
Q12.最後に地球の歩き方読者へのメッセージをお願いします。
日本とニュージーランドが地理的に似ているということはほとんどのニュージーランド人が知っていますが、実は日本のことを学べば学ぶほどさらに多くの共通点が見つかるのです。
例えば、日本に「おもてなし」という言葉があるように、ニュージーランドにも「manaakitanga」という言葉があります。このように日本とニュージーランドが同じ精神を持ち合わせていることをとても嬉しく思います。
また日本の皆さんがニュージーランドにいらしてくださるのを心から楽しみにしています。
(*1)2021年8月12日にアーダーン首相は国境再開に関して、外国人の入国規制を来年、条件付きで緩和すると発表
写真提供:ニュージーランド政府観光局
■ニュージーランドの観光情報
・ニュージーランド政府観光局: https://www.newzealand.com/jp/
■地球の歩き方総合研究所
・URL: http://www.arukikata.co.jp/research/report01.html
※当記事は、2021年9月5日現在のものです