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Visit Finland(フィンランド政府観光局)主催の現地視察で2022年6月26日~7月2日にヘルシンキとタンペレを旅してきました。ウィズコロナ時代の旅のハウツーをはじめ、最新のフィンランドを数回に分けてレポート。今回は首都ヘルシンキの最旬スポットを中心にお届けします!
出入国情報など基本的な旅の情報はこちらの記事でご紹介したとおりですが、数年ぶりに訪れたヘルシンキは、バカンスを楽しむ人であふれ、コロナ禍以前と変わらない夏の風景がありました。とはいえ、スーパーマーケットなどの入口にはアルコール消毒液が置かれていたり、たまにマスクをしている人も見かけたので、感染対策への配慮は伺えますし、その方法は各自の判断に委ねられているように感じました。
冬が長く夏が短いフィンランド。夏は太陽の光を浴びるため屋外で過ごす人が多く、町の中心部にあるエスプラナーディ公園では芝生に座っておしゃべりを楽しむのが定番です。カフェもテラス席から埋まっていくなど、日差しを存分に浴びながら夏を謳歌するのがフィンランド流。
では屋内の観光スポットはどうだろう、とふたつの名所を訪れてみました。まずは、世界一の図書館と呼ばれる「オーディ」。フィンランド建国100周年を記念して2018年末に建てられ、2019年には「公共図書館オブ・ザ・イヤー」に選ばれました。国から国民へのプレゼントとして造られたユニークな図書館で、本を読めるだけでなく、楽器を演奏できたり、3Dプリンタが使えたり、ミーティングスペースがあったりとコミュニティ空間としても市民から愛され、ヘルシンキの新名所として定着しています。
図書館のフロアは、老若男女問わず多くの方が静かに本を読んだり勉強したり、日本の図書館と変わらない光景ですが、広めのキッズスペースが設けられていて、子どもたちは楽しそうに遊んでいました。観光客もウエルカムで、デザイン性の高い建物を見るだけでも価値があります。しかも図書スペースにはフィンランドのデザイナー、エーロ・アールニオのボールチェアが! さすがデザイン大国、なんて贅沢な……。ぜひ訪れた際はボールチェアに腰掛けて、目に留まった本を広げて、つかの間の地元っ子気分を味わってみてください。
■オーディ(Oodi)
https://www.oodihelsinki.fi/
お次は、オーディと同じく2018年にオープンした美術館「アモス・レックス」へ。こけら落としの展示が日本のチームラボだったことでも話題になりました。20世紀前半の実業家アモス・アンダーソン氏のコレクションと、現代アート中心の企画展が楽しめます。訪問時はこれまた日本人アーティスト川俣正さんの「The Nest」展を開催中でした(2022年9月4日まで)。リサイクルセンターの木製家具を用いた作品だそうで、遠目にも目立つユニークなアート。
この場所はもともと1936年のオリンピックのために造られた「ラシパラツィ(Lasipalatsi)」という複合施設で、その地下に展示室が設けられています。地上に飛び出た不思議な形の丸窓は地下からのぞくことができます。図書館も美術館も、もともと騒ぐような空間ではないので、もちろんこちらも静かに鑑賞。ただ、企画展によっては触れたり書いたりといった体験型のアートもあるので、鑑賞後は手を洗うなどして感染対策を。夏は屋外に出ている人が多いせいか、美術館はまったく込み合っておらず、一点ずつじっくり鑑賞することができました。おしゃれなグッズの多いミュージアムショップはおみやげ探しにもぴったりです。
■アモス・レックス(Amos Rex)
https://amosrex.fi/
今回訪れた町の中心部で最も賑わっていたのはプール付きのサウナ「アッラス・シー・プール」。鮮やかなベリーや野菜、子ども服や雑貨の屋台が連なるマーケット広場のそばにあります。3種のプールが楽しめる、年中無休のアーバンサウナは、町歩きの途中にさくっとと寄れる立地も魅力。2022年6月に新しいサウナ小屋ができたばかりで、サウナの中から、海に面したヘルシンキの町並みを眺めることができます。
プールは、子ども用と、25mの温水、夏でもキンキンの冷水の3種類。温水プールは身長160cmの女性でも足が届かない深め設計で、レーンによってはクロールやバタフライで本気のスイミングをしている人も。冷水はサウナ後のクールダウンにぴったりですが、かなり冷たいのでご注意を。広々とした施設は町の中心部とは思えないほどリゾート感のある開放的な空間でした。
■アッラス・シー・プール(Allas sea pool)
https://allasseapool.fi/
フィンランドを代表するテキスタイルブランド「マリメッコ」。町の中心部から少し離れた本社には、最新アイテムを揃えるショップと、旅行者も利用OKの社員食堂、そして型落ちした洋服や食器がお得に買えるアウトレットが併設されています。以前から日本人旅行者にとってマストスポットのこちらですが、もちろん元気に営業しています。今は旅行客が少ない分、ゆっくり品定めができるうえ、夏はセールの季節!さらにお得にゲットできます。各店40ユーロ以上の買い物で免税手続きが可能。アウトレットでも適用されますのでお忘れなく。
■マリメッコ本社(Marimekko)
https://www.marimekko.com/
フィンランドの伝統料理といえば、ミートボールやサーモンステーキ、トナカイのローストやシナモンロールなどが定番。初めてのフィンランドなら一度は老舗店で食べてみることをおすすめしますが、最近は北欧料理をモダンにアレンジしたおしゃれなレストランが増えていて、地元の人で賑わっています。ここ数年のトレンドとしては、だいたいどのレストランにもビーガン料理があるのと、地産地消且つ無駄なゴミを出さないといった取り組みをしており、食の面からもエコやサステナブルの姿勢が伺えます。
マーケット広場の目の前にある「サールトルイェット(Salutorget)」は、銀行だった建物を改装したレストラン。クラシックで落ち着いた雰囲気が漂う店内で、盛り付けも美しい北欧料理がいただけます。小エビがたっぷりのったシュリンプトーストの前菜と、メインはノーザンパイク(カワカマス)のすり身のハンバーグ、デザートにはスターアニス(八角)を使ったパンナコッタの3皿コースで53ユーロ。
■サールトルイェット(Salutorget)
https://www.salutorget.fi/
ただでさえ物価の高い北欧で、ここ最近の円安は旅行者にとってダブルパンチ!毎日コース料理は食べられませんが、アラカルトよりはお得なのと、カフェでサンドイッチやドリンクなどを頼んでも意外といいお値段になるので、お財布と相談しながらメリハリを付けて利用しましょう。手頃に楽しむならマーケット広場の屋台グルメや、港に面した屋内市場「オールド・マーケットホール」での軽食もオススメです。
フィンランドらしいシナモンロールやカレリアパイなどはホテルの朝食ビュッフェに並ぶことも多いので、朝食が充実したホテルを選ぶのも手。カレリアパイとは、フィンランド東部のカレリア地方に由来するパンで、ミルク粥をライ麦生地で包んで焼き上げたもの。初めて食べたときは甘くもしょっぱくもない薄味に正直ピンとこなかったのですが、何度か食べるうちにその素朴な味わいにはまってしまいました。朝食ビュッフェによっては塩気の効いたエッグバターが置かれていることがあるので、それを上にのせて食べると味変してまた違ったおいしさが楽しめます。
今回宿泊したのはヘルシンキ中央駅のすぐそばにオープンしたばかりの「スカンディック・グランド・セントラル・ヘルシンキ」。すぐそばというより、もはや駅舎とくっついているようにも見えますが、それもそのはず、元はフィンランド国鉄の本社として100年以上使われてきた建物なのだそう。1909年築で、数年間のリノベーションを経て、2021年4月にホテルとして生まれ変わりました。
国鉄本社時代の会議室やオフィススペースを改装して造られた約500の客室には、窓から駅のホームが見える部屋があったり、廊下の壁に“ディレクターの部屋はあちら”“秘書室はこちら”といった、会社の名残を示す案内板が残されていたりと、鉄道好きにはたまらない造りになっています。
設計は、ヘルシンキ中央駅も手がけた建築家エリエル・サーリネン。19世紀後半から20世紀にかけて活躍したフィンランドを代表する建築家で、フィンランドにアールヌーヴォーを広めたひとりと言われています。館内はアールヌーヴォーにアールデコ様式も取り入れられた美しい柱や壁の装飾など、建築好きにとっても楽しいホテルです。客室のドアの手前にあるのはオフィス時代のドア。安全上の理由から客室のドアとしては使用できないそうですが、当時を伝える貴重なものとして残してあるのだとか。またこのホテルにはフィンランドで最も長い廊下(全長159m!)があるので、宿泊時には館内を探検してみてください。
フィンランドのホテルにはたいてい宿泊者が利用可能なサウナが付いており、こちらのホテルにも地下に備わっています。また16の客室には部屋付きのサウナも。前述のとおり朝食ビュッフェも充実していて、中庭に面したテラスでも食べることができます。テラスの家具もエリエル・サーリネンによるもの。中央駅から徒歩1分という立地も魅力的なうえ、フィンランドの歴史的な空間に泊まれるおすすめのホテルです。
■スカンディック・グランド・セントラル・ヘルシンキ(Scandic Grand Central Helsinki)
https://www.scandichotels.com/hotels/finland/helsinki/scandic-grand-central-helsinki
今回数年ぶりにヘルシンキを訪れて、治安もよく、コロナ禍以前と変わらない町の様子に安堵しました。夏のフィンランドは日差しがまぶしく空気がキラキラしていて、町なかを歩くだけでも、世界ってこんなにきれいだったんだと、心躍る気分を味わえます。旅の解放感や高揚感がそう感じさせるのかと思っていましたが、実はフィンランドは「世界一空気がきれいな国」という称号も得ています。WHOによると大気中の浮遊粒子物質が世界で最も低い値なのだとか。「世界幸福度ランキング」で5年連続1位を獲得しているフィンランドですが、空気まで世界一とは……恐れ入りました。
町歩きの途中に立ち寄った「hakola」は1963年創業のインテリアショップで、ビタミンカラーのすてきなアイテムがたくさん揃っています。すべてフィンランド国内で製造しているのだそう。この数年で新しいスポットもたくさん生まれていますが、どれも環境を守ることはもちろん、古い建物を利用したり、地産地消や、歴史・文化を継承していくという意味でのサステナブルな姿勢も強く感じられました。ぜひ次回の旅先選びの参考にしてみてください。早く世界的に安心して旅ができる日が来ることを願ってやみません。
取材協力
Visit Finland(フィンランド政府観光局) https://www.visitfinland.com/ja/
ヘルシンキ観光局 https://www.myhelsinki.fi/
TEXT&PHOTO: 地球の歩き方出版編集室 由良暁世
※当記事は、2022年8月8日現在のものです
〈地球の歩き方編集室よりお願い〉
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◎外務省海外安全ホームページ
・URL:https://www.anzen.mofa.go.jp/index.html