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クラフトビールの人気がジワジワと高まっています。今アメリカ国内には9000を超える醸造所がありその数は年々増加しているそうです。「グレートアメリカンビアファスティバル(Great American Beer Festival以下GABF)」は、国内500の醸造所、2000のビールが終結し、参加者はのべ4万人のアメリカ最大のビール祭りです。今年は3年ぶりに開催されました。ビール好きの方、お祭り好きの方、その両方が好きな方、ぜひ体験してほしいお祭りです。
まずは、GABFの歴史について説明します。1982年6月3日〜5日、コロラド州ボルダーのホテルのイベントルームで開催されましたイベントがGABFの始まりといわれています。その時は24の醸造所、47のビールのみで、参加者は800人程でした。そのイベントが評判だったこともあり、翌年もその翌年も開催され、ついに4年後には州都デンバーに移り開催されるようになりました。イベントの規模はどんどん大きくなり、多くの人で賑わうようになりました。2020、2021年はコロナの影響でパブリック開催は中止となっていましたが、ようやく40年の節目となる今年になって再開しました。地元ニュースにまでなっていたので期待の大きさが伝わります。
夕方から始まるイベントは3日間続きます。アメリカで飲酒可能になる年齢は21歳からのため、入場の際にI Dを確認されます。引換券となるオリジナルティスティンググラスを片手に、いざ会場へ! 好きなブースに行って1oz(約30ml)のビールを注いでもらいます。いくら飲んでも大丈夫。結果的に最終日まで品切れにはなりませんでした。
GABFはアメリカのブルワーズ協会が主催しています。みんなでおいしいビールを飲んで楽しむ目的以外にも、100を超えるビールのスタイルを競う審査もやっています。(審査員の中には日本の著名なビール評論家の先生もいらっしゃいます)受賞ビールも試飲できるようになっているので、受賞ビールのあるブースには長い行列ができていました。
ティスティングノートを持参して書き込んでいる人もいます。こういう方からおすすめのビールを聞いてもいいでしょう。金曜日は翌日が休みのためか、特に参加者がワイワイ楽しんでいたようです。
会場にはギフトショップもあり、コスチュームコンテスト、カラオケコーナー、ライブコンサートなども行われていました。
会場の一角ではサイレントディスコが開催されていたのですが、参加者は装着したヘッドフォンから音楽が流れて踊っているので、その音楽が聞こえていない私からすると無音の中で黙々と踊っている人がいてなんとも奇妙な光景に見えました。
ビアフェスティバルに必須なのが、「プリッツエルネックレス」。ハードタイプのプリッツエルの穴にリボンを通してネックレスにしたものです。ビールを飲みながらこれをポチッとリボンから外し、ポリポリとおつまみにします。なかにはプリッツェルの間にチーズを入れたり、ジャーキーに穴を開けて糸に通したり、マスタードをジップロックに入れてネックレスにくくりつけている人もいました。スナックを持参している人も多く、筆者も次回は作って持っていきたいと思いました。フードトラックも来ていたので、しっかり食べたい方はホットドックやタコスを食べていました。ラーメンの試食を発見。ここにもラーメンブームが巻き起こっていました。〆のラーメン文化がアメリカにも定着するといいな。
アメリカでは1976年に小規模醸造所向けの酒税が減税。1979年にホームブルワリーが解禁され、クラフトビールの歴史の基盤が作られました。基本的なヨーロッパのスタイルからアメリカ独自の進化を遂げ現在では約9000の醸造所があるといわれています。第1回GABFからずっと参加している醸造所のひとつが、「シエラネバダ(Sierra Nevada Brewing Co)」クラフトビール解禁の年にできた醸造所です。また、アメリカのクラフトビール第1号でもある「アンカー社(Anchor Brewing Co)」にも長い列ができていました。この2社はカリフォルニアのブルワリーですが、もはやアメリカを代表するクラフトビールのブランドとなっています。ビールを注いでいる彼らの清々しい表情には作り続けてブランドになってそして継続していく自信と希望を垣間見ました。できて間もない新進気鋭の醸造所と老舗醸造所、西海岸、中西部、東海岸のものと、とにかくアメリカ中のビールを楽しむことができます。
アメリカでの飲酒のシーンで感心するのが、「お酒は大人の飲み物で、“酒の席での出来事”はない」という文化です。17時半からラストコール21時45分で22時終了の開催時間の間、とにかく好きなだけ飲めるんです。しかし、酔い潰れて介助が必要、端っこで粗相しているという人はひとりもいませんでした。また大笑いはしますが、奇声を発したり、暴れて騒いでいる人も皆無でした。欧米では、酔った勢いで何かをやらかしてしまった場合、そこでお付き合いは終わってしまうと言われています。のべ4万人の参加者がいましたが、“お酒に飲まれてしまった人”を見なかったのは、お酒は大人の飲み物でパブリックの場をわきまえる飲酒の教育があるかもしれません。
一般的なことですが、万が一、飲酒による迷惑行為があった場合は、セキュリティーによって速やかに会場外に連れていかれます。この会場にもいたるところにセキュリティや警察の方達が待機していました。彼らの表情が穏やかだったのはそんな心配はないだろうと思っているのかもしれません。
イベント終了後はタクシー乗り場にたくさんのペディキャブが並んでいました。人力車の前部分が自転車になってような乗り物で、デンバーではペディキャブに乗って市内を巡るツアーもあるなど、ポピュラーな乗り物なのだそうです。
このイベントに参加して「来年も行きたい!」と強く思いました。とても楽しく、ビールを知るにはとても良い機会だったのはもちろん、イベントが開催されたデンバーの町がとてもかわいい綺麗な場所だったことも筆者的には好印象でした。人も優しく自然がすぐ近くにあり、冬支度をしているリスを町のいたる所で見ました。
GABFに出店しているビールのトレンドとしては、2013年~2017年はホップをがっつり使用し、強い苦みを感じられるアメリカンIPA(American India Pale Ale) が人気でしたが、2018年~2021年頃は、トロピカルな風味が特徴のエールの仲間、ヘイジーIPA(Hazy India Pale Ale)へと人気がシフトしました。ちょうどそのころに爆発的にヒットしたのがフレーバー付きの低アルコール微炭酸飲料「ハードセルツアー」。とても飲みやすく、新しいビールのカテゴリーとして注目を集めました。
気になる今年はというと、またアメリカンIPAの人気が再燃しているとのこと。ヘイジーIPAの流行の波がひと段落し、再びビール本来の苦味を求める人が増えてきたのかもしれませんね。
またノンアルコールビールも各醸造所が力を入れていたようです。最近アメリカでも聞かれるアルコール離れの一例かもしれません。
来年は9月に開催予定です。筆者はすでに気持ちはデンバーです。今度は大好きな列車の旅アムトラックで行ってみたいと思っています。
■グレートアメリカンビアフェスティバル
・URL: https://www.greatamericanbeerfestival.com
■コロラド州デンバー市
・URL: https://www.denvergov.org/Home
■コロラドコンベンションセンター
・URL: https://www.denver.org/meetings/convention-center/
自然と都会が魅力のテキサスとコロラドを中心に、人気のニューメキシコ、アリゾナ、グランドサークルを加えたガイドブック。
『地球の歩き方 ガイドブック B14 ダラス ヒューストン デンバー グランドサークル フェニックス サンタフェ 2020年~2021年版』
URL: https://hon.gakken.jp/book/2080131200
※当記事は、2022年10月18日現在のものです
〈地球の歩き方編集室よりお願い〉
2022年10月18日現在、国によってはいまだ観光目的の渡航が難しい状況です。『地球の歩き方 ニュース&レポート』では、近い将来に旅したい場所として世界の観光記事を発信しています。渡航についての最新情報は下記などを参考に必ず各自でご確認ください。
◎外務省海外安全ホームページ
・URL: https://www.anzen.mofa.go.jp/index.html
◎厚生労働省:新型コロナウイルス感染症について
・URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html
旅したい場所の情報を入手して準備をととのえ、新型コロナウイルス収束後はぜひお出かけください。安心して旅に出られる日が一日も早く来ることを心より願っています。