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学生時の旅行で記憶に残っている出来事がある。大学をさぼってアジアをプラプラしようと、いつも一緒に旅行していたメンバーで成田に集合したときのこと。大体いつも最後に合流する友人が手を振りながらこちらに来る。手にはいつも彼が読んでいるマンガ雑誌の入ったコンビニ袋。「ザックは?どこに置いてあるの?」と問うと「いや、これだけだけど…」とひと言。その袋には少しの着替えと歯ブラシのみ。暖かい季節とはいえ、これでなんとかなると思える神経に当時の私は驚愕した。普段宿泊地や目的地をわりと細かく決め、必要なものは何か…とせかせか考えながら旅している自分のスタイルがちょっと小さく思え、自信を失いながら日本を後にしたことを覚えている。旅の荷物に何を持つかは旅行者にとって永遠のテーマだ。この友人(彼は旅行代理店に勤めているが、お客さんは大丈夫か、とたまに不安になる)は極端な例としても、都市部なら外国でも大概のものは入手可能。バッグに入れるべきか迷った場合は、置いていくほうが荷物を増やさずにすむ。お土産もたくさん買えるし…。しかし、ミニマルスタイルを信じ、いざ海外に着くと、欧米人の巨大なザックに驚いたり、複数のトランクで靴を3足も4足も持ち歩く女子など、旅のスタイルは千差万別。そして旅が終わる頃に、正解なんて存在しないことに気づくのだ…。ここでは、当時の私や海外旅行初心者の方に向けて、バッグ選びやパッキングのポイントについて紹介したい。
目次
機内に預けたあなたの旅行バッグは、恐らく日本の空港より雑な扱いを受けるだろう。海外で一度、チェックインした直後、目の前で屈強な職員にスーツケースをすごい音で投げられたことがある。(日本の空港の荷物受取の職員はそんなことしない。荷物受取りの時も落ちてくるカバンをコンベアーに優しく載せる彼ら彼女らは日本の印象アップにひと役買っていると思う…)自分の目の前ですらそうなので、人の目がないところでの扱いについては言わずもがな。というわけで、海外旅行のバッグ選びの基本的なポイントとしては「丈夫さ、安全性」が重要になってくる。その上で、スーツケースやバックパックなど、バッグのタイプごとの特徴やどんな人に向いているか紹介したい。
スーツケースはしっかりカギがかかり、アルミやポリカーボネートなど、丈夫な素材でできているので、安心感が高いのが特徴だ。堅牢性も高いので、例えばお酒の瓶や食器などの割れ物をお土産にしたいと思っている方には一番の選択肢と言えるだろう。デメリットとしては、バッグそのものが重くて大きいこと。一度飛行機に預けたり、ホテルについてしまえば気にならないが、電車から降りて、未舗装の道路をしばらく歩く、なんていうシチュエーションにはあまり向いてない。
丈夫さがある程度担保されているスーツケース選びのポイントは「軽さ」と「キャスター(車輪)、ハンドル(持ち手)の運びやすさ」であると言えるだろう。機内預け荷物は重量制限があるので、バッグ自体は軽いほうが当然荷物をたくさん詰め込める。そして持ち手やキャスターがしっかりしていればカバンを気にしないで目的地まで歩けるが、品質の良くないものを選んでしまうと、途中でキャスターが故障し、手で持たざるを得なくなってしまってしまい、徒歩移動をギブアップ…なんてことも。旅であまり良くない思い出は持ち帰りたくない。信頼できるメーカーで用途にあった大きさや品質の物を選ぼう。
スーツケースが向いている旅行のスタイルとしては、上記のように歩いて長時間移動するスタイルよりは、ツアー旅行などバスや車での移動が多く、添乗員や現地スタッフが荷物管理を行ってくれるときなどに適しているといえる。
スーツケース選びにはサイズも重要だ。旅行日程に合わせたサイズを選びたい。2〜3泊程度なら高さ55センチ(S)程度。5泊程度までなら62センチ(M)、1週間は67センチ、10日までなら70センチ(L)程度、長期滞在は75センチ以上(LL)というのがおおまかなサイズの目安になる。
重量や堅牢性は素材・フレーム・キャスターによって大きく変わる。ABS樹脂やポリカーボネート樹脂が一般的。フレームはケースの背骨ともいえる重要なパーツになる。バッグメーカーは、堅牢さだけなく、軽量化するために素材に工夫をこらしているので、できれば実際のお店に足を運び、素材と移動性を確認してから購入したい。
キャスター選びについてはキャスターの数に着目したい。持ち手の直下に2輪配置されたキャスターだと引っ張った際にスーツケースの端が地面に当たり、歩行しにくいことがある。なので、キャスターは4輪の方がスムーズに持ち運べる。(キャリーハンドル(伸縮するハンドル)で歩くのは購入時に誰でも試すと思うが、おススメのテスト方法としては、普通のハンドルでキャスターがスムーズに運べかどうか。ハンドルでスムーズに移動できるスーツケースなら、エスカレーターの乗降時などに取り回しがしやすく、とてもラクだ)また、キャスターの直径を大きいものを選ぶことで丈夫さや走行安定性がアップする。特にヨーロッパの石畳などデコボコした道で重宝するだろう。
アメリカでは国内のすべての空港において全乗客のチェックイン・バゲージ(受託手荷物)をX線検査装置と人手による2つの方法で検査している。そのため、ハワイ・グアム・サイパンや乗り継ぎ便など、アメリカへ渡航する際は、航空会社に預けるバッグに施錠しないことが求められている。しかし、TSAロックという、アメリカ合衆国国土安全保障省の運輸保安庁が許可した鍵であれば鍵を掛けたまま航空会社に預けることができる。TSAロックには公認マーク(赤いひし形のマークや、赤い松明のマーク)が必ずつけられている。アメリカに旅行することを考えている人は、TSA付きのものを選んでおくと、安心して荷物を預けることができるだろう。(ロック解除を忘れ、鍵を無理やりこじ開けられた、なんて悲劇も回避できる)このTSA付きの鍵はスーツケースに備え付けられたものもあれば、南京錠タイプで独立してつけられるタイプもあるので、後述する種類のバッグでも取り付けが可能なことも付け加えておく。筆者のスーツケースはTSAロックがついていないが、TSAロック付きでないスーツケースを持っている方は、そもそも鍵を掛けないか、南京錠タイプのロックの使用を考えよう。
伸縮性の布などで作られたスーツケース型のバッグに、ハンドルとキャスターが付いたものがソフトキャリーケースだ。特徴としては中型・小型のものが多く、スーツケースに比べ、軽くて持ち運びやすいのがメリット。デメリットとしては、スーツケースほど堅牢な素材でないため、切り裂きなどの可能性や、割れ物をうまくしまえないと、壊れる危険性がある。空港からバスなどの送迎付きで、リゾートホテルに泊まる、などの場合はしっかりパッキングさえすれば、軽量性のメリットを大きく享受できるだろう。渡航時間の長い方や、荷物を帰りに詰め込めるだけ詰め込みたい、というスタイルの方はハードタイプのスーツケースをおススメする。