【沖縄&北海道のおすすめスポット】インバウンドガイドが教える地元のおすすめ6選
2022.8.10
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日本各地で訪日外国人向けのツアーを行っているマジカルトリップ。そのガイドが「訪日外国人からよく受ける9の質問」とその回答例を『今こそ学びたい日本のこと』の著者・蜂谷さんが紹介。
前半の記事では習慣や文化をテーマにお届けしましたが、後半は「信仰・あなた自身への質問」をテーマにお届け。訪日外国人も増え、海外旅行も再開しはじめている今、日本のことを答えられるように、参考にしてみてください。
日本の観光と切っても切れないのが神社や寺院。外国人を案内する上で外せないスポットなので、そもそも神社や寺院にはどんな違いがあるのかを理解しておくと、パッと聞かれても困りません。
神社と寺院の違いは、宗教の種類です。神社は日本古来より信仰されている神道の施設で、寺院は538年に中国を経由して伝えられたインド発祥の仏教の施設です。
シンプルに答える場合、いつもこのように答えています。ただ、もちろん宗教の違いだけではありません。たとえば入口の違い。神社には鳥居という、人間社会と神域の境目を示す門があり、両端には邪気を払う狛犬の像が設置されています。寺院には、寺院や仏法を守る存在として金剛力士像や、仏教の目的である悟りに至るための3つの試練を示す三門(三解脱門の略)などがあることが多いです。
このように、外観の違いなども説明するとより分かりやすく伝えられます。
また「具体的にどのような教えの違いがありますか?」など、より深い質問にも答えられるように、神道の教えである「穢れ」「産霊」「八百万の神」について、仏教での「悟り」「諸行無常」「禅」についてなども事前に理解しておくとよいでしょう(『今こそ学びたい日本のこと』にそれぞれ記載があるので、「より知りたい!」と思ったら見てみてください)。
海外の多くの国では、信仰する宗教はひとつであるため、神社や寺院の両方を訪れ、またハロウィーンやクリスマスなども祝う日本の国民性は非常にユニークに映ります。このような質問が来たときには、世間的な一般論でも、あなた自身の宗教観でもよいので話せるようにしておきましょう。
一般的に、日本人は無宗教だと思います。私自身も、神道や仏教の教えは好きですが、毎週日曜日教会に行ったり、戒律を厳格に守ったりすることはないです。なので、宗教を信仰しているかと言われると、「はい」とは言い切れないので、どちらかというと無宗教に属すのかなと思います。ただ、日本のお祝い事やお祭り、お盆など多くのイベントや文化は宗教発祥ですし、穢れや縁起など日本人の意識していないところで宗教的価値観として深く根づいています。
日本では仏教が伝来して以降、日本独自の宗教である神道と少しずつ混ざり合い「神仏習合」となりました。1400年以上も前から、異なる宗教が共存してきたため、現在では神道と仏教の違いが曖昧であることが多いのです。
明治時代に入ると、新政府により発布された神仏分離令により廃仏毀釈など仏教を排斥する運動が起こり、神仏習合の時代は幕を閉じました。その背景には、天照大神を祖神とする天皇を中心とした国家神道を樹立したい政府の意図があり、明治時代以降、政治的な要因もあり日本の信仰は大きく変わっていきました。また第2次世界大戦後には、日本の学校で宗教教育がほとんど行われなくなったため、現代では信仰は薄れ、習慣だけが残っているような形となりました。
外国人は、日本旅行中に通勤ラッシュや電車で寝ているサラリーマンを見て驚き、レストランでの礼儀正しい接客を見て「なぜこんなにも日本人は勤勉なのだろう?」と疑問をもつ人が多いです。日本人の勤勉さや長時間労働には、いい部分と悪い部分があるので、自分ならどのように答えるか考えてみてください。
欧米では、プライベートや家族優先という考えが主流だと思いますが、日本では「仕事がいちばん」「一所懸命に働くことが美徳」という考え方が昔からあります。日本人が勤勉な理由には様々な要因がありますが、そのうちのひとつと考えられるのが「稲作」です。
稲作は、田植えから収穫まで非常に手間のかかる耕作方法で、苗を均等な間隔で植え、水を均等に引き、季節や天候によって水の温度調整や草取りも必要になります。こういった繊細な気配りが必要な稲作を2000年以上行い、また江戸時代(400〜200年前)の日本の人口の8割は農民だったことから、その勤勉さが現代の日本人にも引き継がれているといわれています。
稲作は、西洋で主流の麦やトウモロコシの栽培に比べて圧倒的に手間がかかり、そういった生活基盤の違いにより日本人の今の精神性が育まれてきたのです。そのほかにも、戦後の復興から高度経済成長期にかけて、GDPで世界一となり、一億総中流と呼ばれる社会が形成されていくなかで、バブル期には「24時間働けますか?」というCMが放映されるなど、働くことが称賛されてきたことも要因のひとつです。ただ、そのことが「過労死」「サービス残業」「ブラック企業」などネガティブな労働環境にもつながりました。
ツアーの始まりは、自己紹介から始まりますが、はじめに名前を覚えてもらえるとその後も会話しやすくなるので、自分の名前についても説明できるとよいと思います。
私の名前は「翔音」と書きますが、この中国から伝わった漢字には1文字1文字意味があります。「翔」は鳥のように「羽ばたく」、音は「サウンドや音楽」という意味をもっています。なので、直訳すると「羽ばたく音」ですね(笑)。また「Shoto」という名は、父親の野球好きからもきています(ショートストップ)。
このように、名前についても小話などあると、会話に困った時も便利です。また、多くの外国人にとって日本語は馴染みのない言語なので、相手の名前を聞いて、ひらがなや当て字をあてて漢字で名前を描いてあげると非常に喜んでくれますよ。
また、外国人に人気の寿司屋で目にするであろう、魚へんの漢字。「鮨」「鮪」「鯵」「鮭」「鰤」など、外国人からはほとんど同じに見えますが、それぞれに魚の特徴や意味がある漢字ばかり。漢字やカタカナ、ひらがなの知識や小ネタなどがあると、案内時も役立ちます。
日本で外国人と英語を話していると、よく受けるのがこの質問です。訪日外国人からすると、多くの日本人はあまり英語を話せない印象があるようで、「なぜ話せるようになったのか」興味のある方も多いです。
私は19歳からカリフォルニアの大学に留学し、社会学を専攻していたので、そこで英語を身につけました。なので、アメリカにいたときは“dude”(カリフォルニア出身のアメリカ人がよくいう”man”のスラング)などその地のスラングを使っていました。笑
海外での生活や旅行の話をすると、相手との共通点や接点も見つかりやすく、仲よくなるきっかけにもなるので、訪れたことのある国やそこでの経験、学びなどをネタとして用意しておくとよいと思います。特に時間が限られているツアーのなかでは、鉄板ネタなど要所要所で盛り上がる話を入れると、最後まで楽しんでもらえます!
入国規制の緩和以来、町で外国人を見かける機会も増えてきました。2回にわたりお届けしてきた「訪日外国人からよくある9の質問」で、いざ日本について聞かれたときに困らないように準備を! 『今こそ学びたい日本のこと』では、他にも海外から日本に対しての「なぜ? (Why?)」を中心に、日本について解説しています!
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S01 今こそ学びたい日本のこと
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※当記事は、2023年1月6日現在のものです
TEXT: 蜂谷翔音
PHOTO: istock