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大西洋に囲まれた港湾都市、カディス。街自体の美しさはさることながら、「光の海岸」と呼ばれるビーチを有し、新鮮な魚介類も楽しめるこの街の魅力はまだまだ知られていないように思います。アンダルシア州の中でも特に古い街のひとつでもあるカディスは、海に囲まれている開放さと長い歴史を感じさせる街並みが共存する都市。今回は、実際に見て感じてきたカディスの魅力を、おすすめのスポットとともに紹介します。
目次
カディスは大西洋に突き出た半島に位置している港湾都市で、セビージャ(セビーリャ)から列車やバスで約1時間45分、マラガやグラナダからはバスで約2~3時間で訪れることができます。
紀元前10世紀頃にフェニキア人によって築かれた、ヨーロッパの中で最も古い都市のひとつであるカディスは、昔から海上貿易の拠点として栄えてきました。特に、新大陸との貿易を統括する機関である通商院が移された1717年以降には、さらに商業が発展しスペイン屈指の国際都市へと成長。最盛期には、度重なる海賊からの襲撃を受けたことで、街には要塞や城、見張り台が建造されました。それらが、今のカディスを象徴する特徴のひとつともなっています。
また、カディスは自然に恵まれた都市でもあります。カディスと隣の県ウエルバにまたがる海岸はコスタ・デ・ラ・ルス(光の海岸)と呼ばれ、砂浜が黄金のように輝くことで有名です。ほかにも、ユネスコ世界遺産にも登録されているドニャーナ国立公園はカディス、ウエルバ、セビージャにまたがっており、カディスを拠点に日帰りで美しい湿地帯、砂丘、ラグーンでさまざまな動植物に出合うこともできます。
カディスは海に囲まれた都市であるため、海沿いを歩くと多くの船が停泊していたり、ヤシの並木があったりと、まさに港町といった開放的な雰囲気。しかし、一歩市街に入ると海沿いの通りとはまた違う、歴史ある美しい街並みが迎えてくれます。
街の中心部にはいくつか広場があり、その広場から小さな路地が分岐しているようなつくりとなっています。特にサン・フアン・デ・ディオス広場からカディス大聖堂へと通じる道や、カディス大聖堂からカレータ・ビーチへと向かう道にはレストランやバル、屋台が並びにぎやかな雰囲気。
休日ともなれば、昼過ぎから夕方にかけて屋外でビールやワインとともに料理を楽しむ地元の人々でいっぱいに。食事とその時間を大切にするアンダルシアの文化を感じます。
広場や市場では雑貨や生花、食品が売られており、活気があります。屋台ではサッカーやフラメンコ、闘牛モチーフなどのスペインらしい雑貨も。店主と値段交渉しながらおみやげを購入してもよさそうです。
街自体が美しく、歩いているだけで楽しい気持ちになれるカディスですが、そのなかでもぜひ訪れたいスポットを3つ紹介します。
19世紀に完成した、白を基調とした石造りのカディス大聖堂。完成までに116年もの年月がかかったため、バロックやロココなど、さまざまな様式が混ざり合っています。外観だけでなく、内部にも建築家たちがさまざまな様式で設計・装飾を行ってきた形跡が残っており、建築に詳しくなくても見ただけで歴史を感じることができる貴重な建築物となっています。
建物はチャペルや時計塔、礼拝堂、聖具保管室等で構成されており、礼拝堂にはカディス生まれの作曲家、マヌエル・デ・ファリャが眠っています。
時計塔には登ることができ、街並みや海を見渡すことが可能です。建物正面からはわかりづらいですが、建物中央にあるチャペルの屋根は金色のドーム状になっており、太陽の光できらきらと輝く青い海と荘厳な金のドームのコントラストは圧巻の美しさ。天気のよい日にはぜひ見ておきたいポイントです。
チケットは当日購入、オンラインでの事前購入どちらも可能。大人は7ユーロ、25歳までの学生は5ユーロ、12歳以下は無料です。
カディス大聖堂前は建物に囲まれた広場となっており、近くにはいくつかレストランもあります。地元の人々に交じって、屋外席でのんびりとスペイン料理を楽しみながらカディス大聖堂を眺めるのもおすすめです。
カディスは海に囲まれた街であるため、新鮮な魚介類を堪能できるのもうれしいところ。旧市街の西にあるカレータ・ビーチから徒歩3分ほどの場所にある「エル・ファロ・デ・カディス(El Faro de Cadiz)」は、創業59年の老舗。3代に渡り、地域に根差した料理を提供し続けています。
地元の人々のみならず多くの著名人からも愛されてきた店で、店内の壁には結婚式や会談の様子など、たくさんの写真が飾られています。
こちらの店が有名なのは、もちろん老舗だからという理由だけではありません。半世紀以上に渡り受け継がれてきたレシピと、長年の創意工夫によって作られる料理で、今も多くの人々を魅了し続けているのです。
カディスの海の幸や野菜をふんだんに使い、シンプルに味付けされた料理の数々は、ひと口食べれば食材のうま味をダイレクトに感じられます。特に、メインの白身魚の塩釜焼は絶品。魚の身はほくほくでうま味が濃く、何皿も食べられそうな気がしてしまうほど。
メニューはアラカルト、コースどちらも用意があります。店は常時混雑しているため、特に複数名で訪れる場合はコースを事前に予約するのがおすすめです。コースメニューは通常3種類あり、1名49ユーロ(6900円)から。
旧市街の北西、海のすぐそばにある「ヘノベス公園(Parque Genoves)」は、台形のかたちをした約3万平方メートルの公園。公園という名前ではありますが、園内には65種類以上もの樹木が植えられており、植物園といったほうがイメージに近いかもしれません。
この公園は18世紀には原型ができていましたが、現在のような姿に生まれ変わったのは1892年。当時の市長により、ロマン主義様式の植物園のようなレイアウトにすべく大規模な改修が行われました。
園内にはさまざまな種類の木々が植えられていますが、そのほとんどがほかの大陸から持ち込まれたもの。リュウケツジュ(ドラゴンツリー)やアラウカリア、トックリキワタ、ナツメヤシなど、なかなか日本では見ることができないものも多くあります。原産ではない植物でも育まれるのは、カディスがほかの都市に比べ例外的に穏やかな気候だからこそ。
樹木には一つひとつに説明が付いているので、植物に詳しくなくても楽しみながらゆっくり散策することができます。注目したいのはカナリア諸島から持ち込まれた、竜の血液からできたという伝説が残るリュウケツジュ。公園の100周年記念に植樹されたもので、カディスを象徴する木ともなっています。公園を訪れたら、ぜひ自分の目で見て力強さを感じてみるのをおすすめします。
園内は多くのベンチがあり、子供たちが走り回れる広場や遊具のあるスペースも。街歩きに疲れたら、ひと休みしながら植物鑑賞を楽しんでもよいでしょう。
港湾都市ならではの陽気さと、落ち着いた雰囲気を併せもつカディス。アンダルシア州のほかの都市と比べるとまだあまりその魅力は知られていませんが、歴史ある街並み、美しい自然、新鮮な魚介類、荘厳な建築物など、語りきれない魅力が詰まった街です。セビージャやマラガなど、ほかの主要都市からのアクセスもよいため、アンダルシア州への旅行の際には、ぜひカディスに訪れて現地の雰囲気を体感してみてください。
『現代ギター』3月号の特集では、カディスをはじめ、アンダルシア州が誇るフラメンコやスパニッシュギターについて詳しく紹介しています。ぜひ、合わせてご覧ください!