キーワードで検索
2023年10月31日〜11月5日、ラトビア投資開発庁主催のプレスツアーに参加してきました。今回はラトビアに伝わる手仕事と食文化をテーマとして、首都リーガと近郊の街ヤルガワを訪ねました。最新のラトビアの旅情報を3回にわたってレポートします。
フィンエアーでヘルシンキを経由し、ラトビアの首都リーガへと向かいます。現在はロシア領空を通過できないため、北極回りか、南回りのルートが状況によって判断されています。所要時間は運航状況によりますが、今回は往路復路ともに南回りで、行きのフライトはヘルシンキまで約14時間50分でした。
ここ数年拡張工事が行われていたヘルシンキのヴァンター空港は、以前よりだいぶ広くなり、新しくなったエリアも。シェンゲン協定加盟国エリア内のムーミンショップやマリメッコは場所を少し変えてリニューアル。その他にも北欧デザインのショップが連なるので、お店が開いている時間帯は、乗り換え便の待ち間もショッピングを楽しめます。
2023年11月1日に創立100周年を迎えたフィンエアー。ちょうどその記念日にヘルシンキに到着すると、フィンエアーのコーラス隊が空港でミニコンサートを行っていました。ヘルシンキからリーガまでは約2時間、あっという間に到着です。
世界文化遺産にも登録されている首都リーガの旧市街。ちなみに日本語ではよく「リガ」と表記されていますが、ラトビア語での正しい発音は「リーガ」。旧市街には、中世の城砦の名残やアール・ヌーヴォー建築群があり、その美しさは「バルト海の真珠」と讃えられています。
リーガを一望できるスポットとして人気なのが、聖ペテロ教会の展望台。高さ123メートルの尖塔の下にある展望台に、エレベーターで上がることができます。眼下には旧市街と新市街、ダウガワ川が広がり、空から眺めるリーガの絶景と出会えます。
聖ペテロ教会のすぐ横には、姉妹都市ブレーメンから贈られた、「ブレーメンの音楽隊」のかわいい銅像が。一匹ずつ鼻に触れると願いごとが叶うというジンクスがあるそうです。
■聖ペテロ教会
・URL:https://svpetera.lv/
昔、リーガには「リーヅェネ川」という川が流れ、そのそばには同じ名前の漁村がありました。「リーヅェネ」とは、小さな女の子を呼ぶときの語尾がついた表現で、日本語でいうと「リーガちゃん」というようなニュアンスなのだそう。そんな小さな漁村だった「リーガちゃん」は13世紀に大きく発展し、立派な石造りの街になりました。それに合わせて「リーヅェネ」という呼び名も卒業、きちんとした大人の女性に対するように「リーガ」と呼ばれるようになったということです。リーヅェネ川は、ちょうどこのリーヴ人広場のあたりを流れていました。
リーヴ人広場は、かつてリーガに先住していたリーヴ人から取られた名前。広場の周辺には、美しい建物が並び、旧市街の中心となるエリアです。左の青い壁の建物は、「BLUE COW(青い牛)」という名前のレストラン。ラトビアの特産の青みがかった牛「ブルー・カウ」に由来しています。
リーヴ人広場を囲む建物の屋根の一つに、かわいらしい猫のオブジェが付いていて、面白い逸話が残っていました。かつてこの家には裕福なラトビア人商人が住んでいて、当時ドイツ人が中心だったギルドに加入したいと願っていたのだそうです。ところが、ドイツ系ではなかったため断られてしまい、怒った商人は腹いせに、自分の家の屋根に2匹の猫のオブジェを作り、すぐ近くの大ギルド会館の方にお尻を向けたのでした。
ギルド側は他国から視察団が来る度に、この猫のせいで大変恥ずかしい思いをしたため、猫の向きを変えてほしいと懇願。交換条件として、商人は悲願だったギルド入会が叶えられたそうです(諸説あります)。
ラトビアは経済的に発展し、IT産業やエンジニアなどの職に就く人も多い国ですが、古くから受け継がれてきた民族文様や手仕事が、今も日々の生活に根づいています。そんなラトビアに伝わる手仕事に触れられる、旧市街の魅力的なお店を訪ねました。
「セナー・クレーツ(Senā Klēts)」は、「古の倉」という意味の民芸店。ラトビア各地方の民族衣装や工芸品を扱っています。
ラトビアには5つの州があり、東部地方に伝わる肩掛けはベージュの生地に美しい刺繍、中北部地方のスカートには縦縞の生地が用いられる、などなど地域によって伝統衣装が異なります。また上部の空いている頭の被り物は未婚女性の証で、既婚女性は頭頂部が空いていないものを身につけるというのもラトビアの伝統衣装の特色です。
ラトビアの手仕事としてよく知られているミトンには、男女共に自分の出身地の文様や色彩を編み込みました。これを見ればどの地方出身の人なのか分かったので、かつては名刺代わりとして夏の暑い時期でも帯のところに差して、身に着けていたのだそうです。
■セナー・クレーツ(Senā Klēts)
ミトンのワークショップも開催
※一人38€(約6100円)でコーヒーとクッキー付き。2週間前に要予約
・URL:http://www.senaklets.lv/
ラトビアならではのかわいいお土産を探すのにおすすめなのが、「ピエネネ」。ラトビア語で「たんぽぽ」という意味の名の通り、愛らしいミトンや刺繍のリボン、ハーブティーやキャンドル、石鹸、紙雑貨など、やさしい空気をまとった雑貨が揃っています。
ラトビアではハーブティーも種類が豊富。ヤグルマギク、キンセンカ、ニガヨモギ、カモミールなどに加え、冬菩提樹の葉や花もお茶にします。
■ピエネネ(Pienene)
・URL:https://studijapienene.lv/
「バルトゥ・ルアタス(Baltu rotas)」は宝飾師のストラウペさんご夫婦が営むジュエリーショップ。遺跡から出土した古代の装飾品のデザインを甦らせ、指輪やネックレスなどを手がけています。
人気のナメイ指輪は、ラトビアの伝統的なジュエリーの一つです。3本の縄が絡み合ったデザインは、古代ラトビアにあった3つの王国の統合と融和を象徴しています。
■バルトゥ・ルアタス(Baltu rotas )
・URL:www.balturotas.lv/en
「ホビー・ウール(Hobby Wool)」は、ミトンや靴下、毛糸を扱うウールの専門店。ラトビア全国の手編み職人さんが作り上げたミトンや、自分でミトンが編めるキットも販売しています。毛糸の種類や色も豊富に揃っているので、編み物に興味のある方にはおすすめのお店です。
■ホビー・ウール(Hobby Wool)
・URL:https://www.hobbywool.com/
リーガには800棟近くのアール・ヌーヴォー建築があるといわれています。なぜこれだけ多くのアール・ヌーヴォー建築があるのか、その理由は1800年代にさかのぼります。ナポレオンが1812年にリーガを包囲攻撃した際、木造建築が多かった城下町の建物の多くが焼失してしまいました。戦後、新しい住まいが至急必要になったとき活躍したのが、エストニアのタルトゥ大学の建築学科に留学していたラトビア人の若き建築家たちでした。彼らは当時流行していたアール・ヌーヴォー様式を積極的に取り入れ、リーガの富裕層たちも競って豪華なものを望んだため、きらびやかな装飾をほどこしたアール・ヌーヴォー建築群が生まれたというわけなのです。
代表的なのは、ソビエトの映画監督セルゲイ・エイゼンシュテインの父、ミハイル・エイゼンシュテインが手がけた青い家。リーガ・アール・ヌーヴォー建築はアルベルタ(Alberta)通りを中心に連なっています。アール・ヌーヴォー博物館や、その向かいにはアール・ヌーヴォーのグッズを扱うショップ「アール・ヌーヴォー・リーガ」もあるので、合わせて立ち寄ってみて。
■リーガ・アール・ヌーヴォー博物館(Riga Art Nouveau Centre)
・URL:https://www.latvia.travel/en/sight/riga-art-nouveau-centre
■アール・ヌーヴォー・リーガ (Art Nouveau Rīga)
・URL:https://www.artnouveauriga.lv/
前回コロナ禍前の2019年の夏に訪れた時と比較して、2023年11月のリーガでは団体の観光客をほとんど見かけず、市民の生活ぶりも感じながら落ち着いて街を歩くことができました。
聖ペテロ教会周辺や中央市場など、人出の多い場所にはスリが出没することもあるようですが、全体的に治安がよく、安心して街歩きが楽しめます。支払いは基本クレジットカードが使えますが、野外マーケットやタクシーでは現金対応のみのこともあるので、ユーロも少し持っておくと安心です。
11初旬のラトビアは、最低気温3度、最高気温10度前後なので、ダウンコートなどの風を通さない防寒着でしっかり寒さ対策を。
次回はリーガの近郊の街ヤルガワを訪ねます。
取材協力
ラトビア投資開発庁観光部(ラトビア政府観光局) https://www.latvia.travel/ja
フィンエアー https://www.finnair.com/jp-ja
フィンエアーの運航状況
2024年3月30日までの冬期スケジュールでは、成田、羽田、関西空港からヘルシンキ路線が運航中。2024年夏期スケジュールから、名古屋―ヘルシンキ路線が週2便で運航再開予定。
TEXT&PHOTO: 内山さつき
A30 地球の歩き方 バルトの国々 エストニア ラトヴィア リトアニア 2019~2020
ヨーロッパ 地球の歩き方 海外
2019/05/22発売ハンドメイドのクラフトなどで人気急上昇中のバルトの国々(エストニア、ラトヴィア、リトアニア)を紹介する詳細ガイドブック
ハンドメイドのクラフトなどで人気急上昇中のバルトの国々(エストニア、ラトヴィア、リトアニア)を紹介する詳細ガイドブック
〈地球の歩き方編集室よりお願い〉
渡航についての最新情報は下記などを参考に必ず各自でご確認ください。
◎外務省海外安全ホームページ
・URL: https://www.anzen.mofa.go.jp/index.html
◎厚生労働省:新型コロナウイルス感染症について
・URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html
(関連記事)https://www.arukikata.co.jp/web/catalog/article/travel-support/