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木の国 和歌山で出会う多様な「美しきウッドデザイン」7選 Part2
2024.3.28
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歴史といえば京都・奈良のイメージが強いですが、和歌山にもさまざまな文化・歴史があります。なかでも「森と木の文化」は和歌山が世界に誇るべき財産。
かつては、木の神様が鎮まる国を意味する「木の国」が由来となって、和歌山は紀伊国(きいのくに)と呼ばれていたことがありました。日本神話においては、素盞嗚命(すさのおのみこと)に命じられた神様が全国に植樹を行った際、最終的に和歌山の地が理想の場所で住むことに決めたとも記されています。
また弘法大師・空海は密教道場の地として、紀伊山地の雄大な自然に抱かれた高野山を選び、高野山の木々を生かして金剛峯寺を開創しました。
令和の時代を迎えても、和歌山には身近なところに常に“木”があります。和歌山で旅をする際は、そういった生活の中に溶け込んだ“ウッドデザイン”に注目してみてはいかがですか?
今回はPart1・Part2の2本立てでリリース。Part1では、2024年から新たな愛称で親しまれている熊野南紀白浜リゾート空港(正式名称:南紀白浜空港)を起点に田辺市を中心に紹介します。建築関係の家庭で育ち、2007年に「ミス日本ネイチャー」を受賞、現役の産婦人科医としてテレビや新聞などでコメンテーターとして活躍する丸田佳奈さんとともに、「美しきウッドデザイン」のスポットを巡っていきましょう。
●丸田佳奈さんProfile
北海道網走市生まれ。大工の曽祖父から続く建築関係の家で育つ。日本大学医学部医学科卒業、2007年度には「ミス日本ネイチャー」を受賞。現役の産婦人科医を務めながら、幅広いメディアでのコメンテーターや講演会などで活躍する二児の母。著書に『キレイの秘訣は女性ホルモン』(小学館)、『間違いだらけの産活』(学研プラス)。
公式SNS https://www.instagram.com/kanamaruta/
公式ブログ https://ameblo.jp/maruta-kana/
JR紀伊田辺駅前のランドマークとして、2020年に誕生したスポット。木造・鉄骨造2階建の施設内は、洗練されたデザインに加え、木の香りが心地いい温かみのある雰囲気が印象的です。1階にはカフェやショップが営業中で、2階はワークショップなどに便利なフリースペースも設けられています。
「縁を結び交流と共創を生み出す」をテーマに、周辺エリアの活性化に向けたさまざまなプロジェクトが進行しており、地域とともに成長する拠点として、注目を集めています。
館内に入った瞬間「あっ木だ! すごい木の香りに包まれています」という第一印象の丸田さん。建物は計画段階から、木材関係者らが参画したこともあり、外壁のみならず、フロアの床や天井の各所に紀州材が多用されています。また販売商品が並ぶラック、カフェのテーブルには「あかね材」のアイテムをセレクトしているのも特徴といえるでしょう。
ちなみに「あかね材」とは、害虫による食害の跡が残った木材のこと。一般材に比べて、見た目の美しさはやや劣るものの、性能に変わりはなく、近年、エコブランド化が進んでいます。これまで商品価値がなかった「あかね材」を取り入れることで、木材の積極的な利用を促し、環境保護に貢献する。
見た目よりも中身を重視、そんなSDGsを意識した取り組みです。
■タナベエン プラスの公式サイトはこちら
https://tanabe-enplus.jp/
関西を代表する名門ホテルや長野県のオーベルジュでキャリアを重ねた、更井亮介さんがシェフを務めるフレンチレストラン。出身地の和歌山県田辺市にUターンして同店をオープンしました。
扱う食材は、紀南産のフレッシュな旬菜はもとより、シカ、イノシシといった四つ足のジビエがメインで、季節によって、鴨やウサギなどの逸品がリストに並ぶこともあります。森林や田畑を荒らす野生鳥獣は、林家や農家に深刻な被害を及ぼしており、地域ならではの食材として有効活用されることが期待されています。この日頂いたランチコース(2,500円〜)では、田辺市で獲れた鹿肉をセレクト。コンベクションオーブンでじっくりとロティし、香ばしさとジューシーさを引き出した鹿肉に、赤ワインのソースを合わせた逸品は感動ものの美味しさ。
また前菜には上秋津産の柑橘を、スープには龍神村産のキクイモを用い、「食材の宝庫」として食通から熱視線を向けられている紀南の魅力が詰まったラインナップでした。
建物は、更井さんの祖父から受け継いだ半世紀以上前の建物をリノベーション。もともとは農家さんたちが、梅干しを仕込んだり、梅を選別したりする作業小屋「梅蔵」で、むき出しになっている梁や柱の一部も、補強を施して再利用しています。「歴史とか風土とか、文化を感じます。木の使い方を本当に知っている建築家さんが手掛けられたんでしょうね」(丸田さん)
手作りの土壁も往時のまま、漆喰はシェフや地元の方とともに塗ったそう。素朴ながらも、梅蔵として活用されていた頃の息吹を感じさせる懐かしい趣を随所で感じることができます。メインフロアと奥の個室に備えられたテーブルと、キッチンの天板には「あかね材」を使用しているのも注目です。
■キャラバンサライの公式サイトはこちら
https://caravansarai.jp
標高500m以上の山岳にグルリと囲まれた龍神村に位置する道の駅で、敷地内ではカフェや物販コーナーに加え、林業が盛んな地域ならではの家具工房「G.WORKS」も営業しています。
1997年創業の「G.WORKS」は、紀州材のみを使用した椅子・テーブルが評判。年輪幅が整い、木目が美しい紀州材の特徴を生かしたふくよかで丸みのあるデザインと、木が持つ本来の肌触りを感じられる無垢にこだわっており、一生ものの家具を求めて県外からも数多くのユーザーが訪れています。
工房では、世界で活躍する龍神村在住のチェンソーアーティスト・城所ケイジ氏の作品も展示しているので、あわせてチェックしてください。
「G.WORKS」の工房は道の駅の裏側にあり、今回は特別にお邪魔させていただきました。「座る人の心地よさを追求すると、自然とこのフォルムに辿り着きました」と話すのは代表の松本泉さん。
取り扱っている椅子のタイプ様々ですが、オンリーワンの魅力ともいえる愛らしいフォルム、分厚く切り取った背もたれなどの特徴は共通していて、一度腰掛けると体のラインにフィットするような座り心地に誰もが驚かされるはず。スギのほかに、ケヤキ・ヒノキ・ヤマザクラといった紀州材の材質を選ぶことのできる受注生産型のテーブルも人気です。
「色合いが良くて繊細で美しい木目が上手くフォルムに落とし込まれている。初めて触れたのに、憧れてしまうほど素敵な家具です。自然素材なのでエイジング(経年劣化)も楽しめるのが魅力だと思います」(丸田さん)
■道の駅水の郷日高川龍游の公式サイトはこちら
http://www.ryuyu-ryujin.com/
■家具工房「G.WORKS」の公式サイトはこちら
http://gworks-web.com
和歌山県の北東部・伊都エリアに宿泊するなら、高野山のふもとにある山間の里に佇むリゾートホテル「山荘天の里」がおすすめ。約6,000坪もの広さを誇り、レストラン&バーがメインの本館に加え、8つのゲストルームを備えています。
温泉はナトリウム・塩化物強塩泉の名湯が自慢で、3種類の貸切風呂で満喫しましょう。貸切風呂の中でも紀州材を用いたヒノキ風呂が付くタイプは、温かくやわらかな香りに包まれたリラックスできる雰囲気が魅力です。
夕食は和洋折衷、地産地消がテーマの美食が勢揃い。旬の山海の幸はさることながら、和歌山特産の希少なブランド銘柄である熊野牛も絶品。
周囲に広がる緑豊かな自然とマッチした建物が印象的。外壁は紀州材のスギ板で仕上げ、各棟の合間に緑と水のランドスケープを施すなど「新しいけれど、何処か懐かしさをまとった建築」を目指して設計されているそうです。
館内にも紀州の木を多用していて、コンクリート造りの建物にはない温もりを感じさせてくれます。完成してからおよそ10年が経った今でも、スギ・ヒノキの芳香が心地いい空間を演出しています。
また地元の間伐材をはじめ、小径の木材を有効活用するなど、木の良さをふんだんに活かした建築の素晴らしさが評価され、2017年にはウッドデザイン賞を獲得しています。
■山荘天の里の公式サイトはこちら
https://amanosato.com/
和歌山はもとより、西日本でも指折りの人気を誇っているテーマパークです。こちらの施設では、1994年からパンダの日中共同繁殖研究がスタート。その後、17頭ものパンダの子どもが生まれ育ち、中国国外では世界で最多の繁殖実績があるそうです。現在は4頭のファミリーが元気に暮らしています。パンダが暮らすブリーディングセンター屋内&屋外運動場には、紀州材のヒノキ製遊具を設置。遊具でパンダが遊んだり、お昼寝したりする愛らしい姿を目撃できるチャンスもあり。
■アドベンチャーワールドの公式サイトはこちら
https://www.aws-s.com
高級料理店の燃料として今なお珍重されている、紀州備長炭に特化した国内唯一のミュージアム。館内では歴史・文化・科学・芸術など、8つのカテゴリーに分類して貴重な資料を展示しているうえ、屋外の炭窯では製炭の様子を実際に見学することもできます。およそ三世紀にも渡って受け継がれてきた伝統は、和歌山県が世界に誇る大切な文化的財産。隅から隅まで、炭の知識をあれこれキャッチしましょう。
■紀州備長炭記念公園の公式サイトはこちら
https://www.binchotan.jp
木の国・和歌山県の方針に基づき、近年、県内の公共建築物の多くで木質化(木造化)を推進。白浜町の玄関口ともいえる熊野白浜リゾート空港でも、壁や階段の一部、ベンチなど随所に紀州材が使われており、洗練された現代的な建物のなかで温かみのあるエッセンスがプラスされています。
■熊野白浜リゾート空港の公式サイトはこちら
http://shirahama-airport.jp
木造のランドマークでSDGsに配慮した「あかね材」に触れ、梅蔵を改装したレストランで地元産ジビエのフランス料理に舌鼓を打つ。そして一生愛用したくなる紀州材の家具とも出会いながら、山間の自然に溶け込んだリゾートホテルに宿泊。和歌山県のウッドデザインにちなんだスポットを巡る、旅行プランをぜひチェックしてください。
企画:日本ウッドデザイン協会https://www.jwda.or.jp/