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木の国 和歌山で出会う多様な「美しきウッドデザイン」7選 Part1
2024.10.20
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歴史といえば京都・奈良のイメージが強いですが、和歌山にもさまざまな文化・歴史があります。なかでも「森と木の文化」は和歌山が世界に誇るべき財産。
かつては、木の神様が鎮まる国を意味する「木の国」が由来となって、和歌山は紀伊国(きいのくに)と呼ばれていたことがありました。日本神話においては、素盞嗚命(すさのおのみこと)に命じられた神様が全国に植樹を行った際、最終的に和歌山の地が理想の場所で住むことに決めたとも記されています。
また弘法大師・空海は密教道場の地として、紀伊山地の雄大な自然に抱かれた高野山を選び、高野山の木々を生かして金剛峯寺を開創しました。
令和の時代を迎えても、和歌山には身近なところに常に“木”があります。和歌山で旅をする際は、そういった生活の中に溶け込んだ“ウッドデザイン”に注目してみてはいかがですか?
今回はPart1・Part2の2本立てでリリース。Part2では、標高1000m級の山々に囲まれた高野山を中心に紹介します。日本仏教の聖地に初めて訪れた、丸田佳奈さんも「寺院も森林も凛とした空気に満ちていますよね」とコメントされた魅力的なスポットの数々で、癒しと安らぎの時間を過ごしましょう。
●丸田佳奈さんProfile
北海道網走市生まれ。大工の曽祖父から続く建築関係の家で育つ。日本大学医学部医学科卒業、2007年度には「ミス日本ネイチャー」を受賞。現役の産婦人科医を務めながら、幅広いメディアでのコメンテーターや講演会などで活躍する二児の母。著書に『キレイの秘訣は女性ホルモン』(小学館)、『間違いだらけの産活』(学研プラス)。
公式SNShttps://www.instagram.com/kanamaruta/
公式ブログhttps://ameblo.jp/maruta-kana/
ユネスコ世界文化遺産に登録されている高野山の歴史と自然を気軽に体感できる森林セラピー。「奥之院」周辺をはじめ、一般入場できない参詣古道内などでゆったりとしたひと時を過ごすことができます。
プログラムは真言宗の瞑想法として伝わる阿字観体験から、森林に囲まれた環境でハンモックに揺られたり、ヨガを楽しんだりできるフリープランまで多種多様に企画されています。時期は毎年4月~11月、主に土日曜・祝日に開催されるので、詳細は公式HPにアクセスしてください。
今回は、看板プランでもある「森林セラピー体験ツアー」の一部を体験。森林の中にある山小屋では、炎がゆらめく囲炉裏を囲みながら、オリジナルブレンドのコーヒーやハーブティなどを片手に、心からリラックスすることができます。
ひと息ついたら、スタッフさんのナビゲートで森林内を散策。野鳥のさえずりを耳にしながら、澄んだ空気を感じ、彩り豊かな山野草と触れ合って森林の恵みを五感で満喫しましょう。茶道でも用いられる高級楊枝「黒文字」の材質でもあるクロモジなど、木々との出会いも楽しみの一つ。
プライベートで茶道を嗜む丸田さんもこの出会いには感動。「茶道具で馴染みのあった、クロモジの天然の姿を見られたのが1番のインパクト。爽やかで上品な香りがあることも、森の中で初めて知れました」。
■高野山千年の森(森林セラピー)の公式サイトはこちら
https://www.forest-koya.com/森林セラピー/
回廊でつないだように並ぶ4棟の建物で構成された道の駅で、いくつもののぼりが立つ賑やかな雰囲気が魅力。現役の農家さん3名が経営しているのも特徴的です。和歌山と大阪の県境をまたぐ国道480号沿いにあり、かつらぎ町の北の玄関口として交流拠点の役割を果たしています。
周辺の農家さんから届く果物や野菜を扱う物産コーナーでは、通年購入できるあんぽ柿、梅干、金山寺味噌といったご当地名物もズラリ。9月中頃から5月初旬頃まではみかんなどの柑橘類、11月から5月初旬頃にはイチゴ、8月頃からは桃や梨、シャインマスカットと、季節ごとに旬のフルーツが並ぶのも魅力的です。また地元の人気アウトドアスパイスブランド「ほりにし」のアイテムをはじめ、旬のフルーツがたっぷりのデザートピザなど、SNSでも話題を集めるトピックスが盛りだくさん。
かつらぎ町産をはじめ、上質なヒノキをセレクトして建造されており、近代的な建物でありながらも農村の風景に溶け込むエクステリアが印象的。
また、物産コーナーがメインの棟はさえぎるものがない無柱空間が広がっています。それを実現するために無垢の流通規格材を組みあげて建物を支え、あえて剥き出しにすることで木の質感を生かしているそう。一方で、耐候性の高い金属パネルを随所で取り入れ、耐久性に配慮している点も見逃せません。
この道の駅は、多くの観光客や地元民が行き交う交流の場にふさわしい、賑わい空間づくりが評価されて、2017年にはウッドデザイン賞を獲得しています。
■道の駅 くしがきの里の公式サイトはこちら
https://www.town.katsuragi.wakayama.jp/040/010/040/20180719171600.html
『日本書紀』に記されている五十猛命(いたけるのみこと)が主祭神の古社。五十猛命は「木の神様」として信仰されているとともに、「いのち神」という信仰も深いため、木材関係者のお詣りはもとより、病気平癒祈願、厄除けを願う地元の参拝者らが数多く訪れています。毎年1月14日には、「卯杖祭(うづえさい)」を斎行。小豆粥を竹筒に沈めて残った量で豊凶を占う神事は、そのユニークさゆえ全国的な知名度を誇っています。
木々の恩恵に感謝する「木祭り(毎年4月第一日曜)」、夏越の大祓い「茅輪祭(毎年7月30日・31日)」、日々の神恩に感謝する「例祭(毎年10月15日)」と年中祭事にも恵まれています。
境内には、樹齢800〜1000年ともいわれるご神木の大杉が鎮座しています。1962年の落雷で惜しくも炎上してしまいましたが古幹は現存。屋根のある割拝殿に保存され、「木の俣くぐり」を体験することができます。
「木の俣くぐり」とは日本最古の歴史書『古事記』に記された神話がもとになっていて、神聖な気持ちで願いを込めながら、穴をくぐれば災難除けになるといわれています。
「木の幹の内部に入ったのはもちろん初めてなのでなんだか不思議な感覚。くぐった瞬間に心に安らぎを得られました」(丸田さん)
また家内安全・夫婦円満、魔除けの霊力があると伝えられる、枝振り豊かなご神木「梛の木(なぎのき)」にも手を合わせましょう。
■伊太祁曽神社の公式サイトはこちら
https://itakiso-jinja.net/
木と石を組み合わせた構造美が際立つ太鼓橋を渡り、参道を進むとその先に出迎えてくれるのが1499年建立の楼門。その奥に威風堂々とした風格を漂わせる、春日造・檜皮葺きの4つの本殿が並び立っています。
御祭神は天照大御神の妹とされ、高野山の地主神である丹生都比売大神(にうつひめのおおかみ)。さらに弘法大師・空海を高野山へ導いたとされる高野御子大神(たかのみこのおおかみ)など四柱の神々をお祀りしています。
かつては弘法大師・空海の弟子である道昌僧都が住職を務め、明智光秀の菩提寺としても名を馳せた由緒ある寺院。
院内の静かな一室でふるまわれる昼食(予約制)は、五法・五味・五色を忠実に守った精進料理です。野菜や海藻はもとより、豆類、山菜もふんだんに盛り込んだメニューの数々は心にも体にもやさしい美味しさ。美食揃いのラインナップで「胡麻豆腐など高野山で食べたいメニューがラインアップしている感じ。天ぷらや鍋もあって、美味しいうえに、ボリュームも十分です」と丸田さんも満足なご様子。なお宿泊客には朝勤行、護摩祈祷の参加をはじめ、阿字観、お写経といった体験も用意しています。
■高野山宿坊恵光院の公式サイトはこちら
https://www.ekoin.jp
真言密教の聖地である「金剛峯寺」は、東西三十間・南北三十五間を数える大建築で、狩野探幽が描いた襖絵が現存するなど、ゆっくり時間をかけてご拝観するのがおすすめ。
弘法大師・空海が入定されている「奥之院」、密教思想に基づく曼荼羅の世界観を具現化したという「壇上伽藍」は、ともに高野山信仰の中心です。
「奥之院は静かさに満ち溢れていました。弘法大師様がいらっしゃる神聖な場所を初めて訪れることができて、日本人として本当に良かったです」(丸田さん)
高野山の寺院では、地域の森林で育った良質な木材がふんだんに用いられている様子を目にすることができます。2015年に開創1200年を迎えた天空の霊山で、スピリチュアルなひとときを過ごしましょう。
■金剛峯寺・奥之院・壇上伽藍の公式サイトはこちら
https://www.wakayama-kanko.or.jp/spots/169/
仏教の聖地で行う森林セラピーから流通規格材で新しい木組みにチャレンジした木造建築、さらに地元民が慕う木の神様まで、幅広いジャンルのウッドデザインの数々はいかがでしたか?
山々に囲まれた大自然が生み出す、和歌山ならではの木に寄り添った文化を体験しながら、有意義な時間を過ごせる旅をお楽しみください。
企画:日本ウッドデザイン協会 https://www.jwda.or.jp/