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バルカン半島の中心に位置するセルビアは、美しい渓谷が特徴の自然と修道院文化が豊かな国だ。首都ベオグラードの活気ある都市風景や、古代から中世にかけて築かれた要塞や修道院、さらに伝説的な発明家ニコラ・テスラに関連する文化的名所まで、観光スポットは多岐にわたる。今回は、そんなセルビアの中でも厳選した10の観光スポットを紹介する。これらの場所を巡れば、セルビアの歴史、自然、そして文化がもたらす旅の魅力を存分に感じることができるだろう。
ベオグラードの中心に広がるカレメグダン公園は、ベオグラードで最も有名なスポットだ。かつて軍事要塞であったこの場所は、現在では市民の憩いの場として親しまれており、散策しながらセルビアの歴史に触れることができる。特に、カレメグダン要塞からはドナウ川とサヴァ川の合流地点を一望でき、夕暮れ時に訪ねればその美しい景色に心を奪われるだろう。また、公園内には動物園などもあり、家族連れでも楽しむことができる。
セルビア正教の象徴ともいえる聖サヴァ教会は、その巨大なドームが特徴で、ベオグラードのランドマークのひとつだ。聖サヴァはセルビア正教会の創立者で、彼の遺体はミレシェヴァ修道院に納められていたが、1594年にオスマン帝国の将軍の報復によりベオグラードに運ばれて焼かれてしまった。そこが、この教会が建つ場所である。そのため、セルビア人にとって非常に特別な場所になっている。内部は豪華なモザイクで装飾され、天井を見上げればその壮大さに圧倒される。訪れるとセルビア正教の精神とその長い歴史の重みを感じることができるだろう。
電気工学の天才ニコラ・テスラは、交流電流の発明者として知られる。ここでは現代の電力システムに大きな貢献を果たしたテスラの遺品や発明品を展示している。博物館には、テスラの特許や革新的な発明に関する豊富なコレクション、なかにはユネスコ記憶遺産に登録された貴重な資料もある。ちなみに彼の遺灰は金の球体に納められ、博物館に保管されている。ベオグラードの空港の名前がベオグラード・ニコラ・テスラ空港であることからも、彼がセルビアを代表する偉人であることがわかるだろう。博物館は1952年に設立され、毎年多くの人が訪れる。
ベオグラードの高台に位置する王宮は、かつてセルビアの王族が住んでいた豪華な宮殿だ。壮麗なセルビア・ビザンティン建築と広大で美しいな庭園が魅力で、宮殿の内部には美術品や装飾品が多数展示されている。見学ツアーもあり、一般に公開されていないエリアも案内してくれることがある。庭園も美しく整備されており、静かな時間を過ごすのにぴったり。また、宮殿からはベオグラード市内を一望できる。王宮を訪れることで、セルビアの王室文化とその豪華さを感じることができるだろう。
ドナウ川を見下ろす丘に位置するペトロヴァラディン要塞は、1692年に建設が始まり1780年に完成した巨大要塞で、現在ではノヴィ・サドの象徴となっている。要塞内には複雑に張り巡らされた地下トンネルがあり、ガイドツアーで探検することができる。また、要塞の頂上からはノヴィ・サドの町並みやドナウ川の絶景も楽しめる。要塞の一部はアートエリアとしても利用されており、アートや歴史に興味がある人にもおすすめ。毎年夏にはヨーロッパ最大級の音楽フェスティバルイグジットが開催され、若者たちにとっても人気の観光地となっている。
ドナウ川の絶景を背景に、壮大なゴルバツ要塞はその姿を誇る。この要塞は中世に建てられ、幾度も戦争の舞台となった要衝だ。10の塔と宮殿で構成されており、塔はそれぞれ役割や特徴が異なる。要塞からの景色は圧巻で、ドナウ川の静かな流れと要塞の重厚感が相まって訪れる者を魅了する。要塞内部も公開されており、ガイドツアー以外に個人で巡ることもできる。インタラクティブマップ、要塞の3Dモデル、映画など、最新技術を駆使した展示がわかりやすい。セルビアの中世史を垣間見ることができる貴重なスポットだ。
セルビア正教の中心地ともいえるフルシュカ・ゴラには、16世紀初頭に建てられたクルシェドル修道院がある。現在の建物は18世紀に再建されたもので、内部には美しいフレスコ画やイコン(聖画像)が飾られている。ブランコヴィッチ家をはじめ、セルビアの王族や聖職者が眠っており、セルビア国内にある修道院群のなかでも特に歴史的価値が高い。周辺の自然も豊かで、修道院周辺を散策するだけでも心が落ち着く場所だ。5ディナール硬貨のデザインにもなっており、多くの巡礼者が訪れる。フルシュカ・ゴラの美しい風景で、心落ち着くひとときを提供してくれる場所だ。
東方正教会の歴史を象徴するストゥデニツァ修道院は、1190年にネマニッチ王朝の創始者であるステファン・ネマニャによって創設された。1986年にはユネスコの世界遺産にも登録されている。修道院の中心である聖母教会は、大理石の美しい建築物で、動植物をモチーフにしたレリーフが施されている。内部には13~19世紀にかけて描かれた貴重なフレスコ画が多数残されており、なかにはセルビアの中世美術の最高峰ともいえる作品も。修道院の静けさと周囲の自然が心地よく、訪れる人の心に平安をもたらしてくれる。セルビアの宗教と文化のルーツに触れることができる場所だ。
ソポチャニ修道院は、13世紀中頃に中世セルビア王国の国王であったステファン・ウロシュ1世によって創設され、1979年にはユネスコの世界遺産に登録されている。敷地内にある教会は、ビザンティンとロマネスク様式を融合させたラシュカ様式と呼ばれる、セルビアで発展した建築スタイルが特徴。内部には、13世紀のビザンティン美術のなかでも特に優れているといわれるフレスコ画が描かれている。修道院はラシュカ川の源流近くの自然豊かな場所に位置しており、その静ひつな雰囲気が訪れる者に深い感動を与えてくれる。
映画監督エミール・クストリッツァが造り上げた木造の村、ドゥルヴェングラードは、映画『ライフ・イズ・ミラクル』のセットとして造られ、その後観光スポットとなった。教会やカフェ、美術館、映画館などがあり、セルビアの文化を体験できる貴重な場所であり、まるで映画のワンシーンに飛び込んだかのようなユニークな雰囲気。映画館や美術館、宿泊施設もある。自然豊かな周辺環境も魅力で、映画ファンだけでなく自然や伝統文化を楽しみたい人にもおすすめの場所だ。
セルビアには美しい自然に歴史的遺産が映える観光スポットが点在する。中世の要塞や修道院を巡ることで、セルビアの豊かな歴史と文化に触れられるだけでなく、その美しい自然環境のなかで心が安らぐ体験が待っている。今回紹介した10のスポットは、それぞれが独自の魅力をもっている。セルビアの豊かな歴史と自然を体感しよう。