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1981年発売『地球の歩き方 インド』初版には編集者のインド愛と独特な表現が満載!?

地球の歩き方ウェブ運営チーム

地球の歩き方ウェブ運営チーム

更新日
2025年3月17日
公開日
2025年3月18日

インド特集の制作にあたり、「旅人にとって、インドの変わらない魅力とは何なのか?」という問いに対するアンサーが最も載っていそうな書籍を引っ張り出してきた。44年前の1981年に発売された『インド』初版。ここから初代編集者やの想いや当時の旅人のようすを、インド渡航歴20年以上の宮田と若手ふたりでのぞいてみることに。レトロかわいいヴィンテージカラーの表紙、そして黄ばみ色褪せたページをめくるたび、旅心をくすぐる言葉がたくさん見つかり思わずにやけてしまう…! いま出版すると考えるとヒヤリとする表現も!?

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『インド』初版とは

地球の歩き方『インド』は、『アメリカ』『ヨーロッパ』につづいて発売された3タイトル目のガイドブック。
現在Amazonの電子版でのみ販売されている初版の概要の一部には、このような記載がある。

『個人旅行者がいかに安く長く旅ができるのかを前提に作られた本書は当時、何万人もの旅人たちをインドへと誘い、ときに迷わせ、ときに惑わせ、そして導いた。いつしかバックパッカーのバイブルと呼ばれるようになった。』

現在はテレビやSNSなど、多くの媒体から旅の情報を取り、スマホひとつで旅行の手配まで気軽にできてしまうが、当時の旅人たちはガイドブックの1冊に命を預けていたようなものだった。
そんな旅人たちは何を経験し、感じていたのか。また旅人たちを誘ったガイドブックとはどんなものだったのか、この概要文を書いた張本人、インド渡航歴20年以上の前編集長・現取締役の宮田と読み解いていく。

作り手のインド愛と旅の本質が満載!

若手編集者

若手編集者

初版を引っ張り出して読んだんですけど、本質を突いている言葉が多くておもしろくて! あと今の価値観で考えるとちょっとヒヤリとする表現も(笑)

宮田

宮田

いやー、だいぶ編集者の主観が入っているよね。しかもそれがすごく堂々と書かれてて。

宮田

宮田

初版を作った人はかなりの変わり者だったらしい。ガンジス川の塵という意味のペンネーム、恒河芥さんは塾講師を辞めてアフリカに渡った後、インドに数年滞在していた人なんだよね。

若手編集者

若手編集者

なるほど、塾講師だったんですね。年下の人に教えるような口調に納得です。

宮田

宮田

インドでは山に籠ってずっと空を見ていたとか。同じ形の雲を見ることができたら下山しようと思っていたけど、1年経って「同じ形の雲はないんだ」と気づいて諦めたという強烈なエピソードも。本人とは一度だけ飲んだことがあるけど、魅力的な人だったよ。

若手編集者

若手編集者

ちゃんとクセ強いですね。すべてを見透かされてしまいそう……。

■「インドを旅するのに物は何一つ要らない」

若手編集者

若手編集者

編集者の主観といえば、第3章の「旅の道具」がおもしろくて。「インドの旅に必要なものは?」と見出しがあるのに、太字で「インドを旅するのに物は何一つ要らない」って書かれてるんです。

若手編集者

若手編集者

「ものをあれこれ持っていくという発想は、それらの物に頼って日本でのライフ・スタイルをそのまま続けたいという受け身の姿勢に通じるのではないだろうか」とか説教じみた文章が続くけど、次のページからは現行版よりでかでかと持ち物チェックリストが掲載されていて。ツンデレですかね……。

宮田

宮田

たしかに(笑)旅人の役に立つガイドブックを作りたいという想いと、個人的なインド愛の両方があふれてるね。

宮田

宮田

しかもこの内容は現行版にも踏襲されているよね。

若手編集者

若手編集者

そうなんです! 現行版には「必要なものは、まずは健康な体と前向きな心」「極端に言えば、持っていかなければいけない物は何一つない。必需品はインドで手に入る」と書かれています。

若手編集者

若手編集者

現行版と初版で内容や文言が変わっていない箇所がところどころあって。そこが旅の本質なのかなぁと思いました。

■「物が盗られた?盗られやすい状況を作ったキミにも落ち度があったのでは?」

若手編集者

若手編集者

あと「荷物の管理に必要な心がまえ」の箇所の「物が盗られた?盗られやすい状況を作ったキミにも落ち度があったのでは?」は読者に厳しくて笑っちゃいました。

宮田

宮田

やっぱり、当時は読者のことをお客さんと考えていなくて、次の若い旅人たちにアドバイスをしている感じ。でもスリやひったくりは、海外ではあるのが当たり前だから、これは心に留めておくべきことだね。

若手編集者

若手編集者

貴重品の管理については、いまでも日本人のあまりの不注意さがよく指摘されますもんね。たしかに世界全体で見たら日本人のほうが非常識……。

宮田

宮田

旅をさせてもらう身だから、郷に入っては郷に従え。情報の少ない時代に、向こうの常識を教えてあげているという意味では親切だね。先生口調だけど(笑)

■「ルピーは人によって価値が変わる」

若手編集者

若手編集者

あと気になったのが、「ルピーは人によって価値が変わる」でした。

若手編集者

若手編集者

「どういういきさつかでぼくらは、向こうで10倍もの価値を持つカネに恵まれている。だからといって、物価の安い後進国でリッチな気分にひたろうと考えたのは、いささか発想が貧しいんじゃないかという気がする」とか。

宮田

宮田

これは旅人の永遠の課題ではあるね。現地の人の相場感覚を受け入れるか受け入れないかで旅のスタイルがかなり変わってくるよね。

若手編集者

若手編集者

通貨や物価が安い国だから豪遊しちゃえというのは、よろしくはないということですね。たしかに東南アジアの国などで安くてうまい!嬉しい!と思って旅していても、後からどこか申し訳ない気持ちも抱きますもんね。

宮田

宮田

そう。そして逆もしかりだよね。昨年娘を連れて香港ディズニーに行ったんだけど、アイスが円換算すると1400円とかで。一瞬ひるんだけどこれは現地の相場としては正しいんだと言い聞かせて買ったね。

若手編集者

若手編集者

高くてもそれを飲み込める余裕がほしいですね……。

宮田

宮田

よく旅する地域の外貨で預金してたら、割と現地の相場感が身につくからおすすめだよ。

若手編集者

若手編集者

いいですね、口座開設しようかな。とにかく「現地の適正価格」はいつも念頭において旅したいですね。

■すべてはここから「はじめに または おわりに」

若手編集者

若手編集者

「はじめに または おわりに」も外せませんね。現行版には冒頭は載っていないけど、途中から初版の文言が使われていますよね。

宮田

宮田

長い文章だけど、少し変化しつつも初版から現在まで残っているね。いま載ってるのは「インドは『神秘と聖性の国』だと言う。またインドは『貧困と悲惨の国』だとも言う」以降の文章。

若手編集者

若手編集者

こういうずっと続くもの、大切にしていきたいですよね。

宮田

宮田

そうだねー。この冒頭は発売当時の時代背景を示すという意味で、今でも入れていていていいと思うんだけどな。

若手編集者

若手編集者

えー! 入れたいですね。いまは掲載されていない冒頭の「この本は誰が書いたものでもない。インドが書いたキミへの招待状」は旅心くすぐられる……。

宮田

宮田

偶然の必然として、キミがインドに行くことになるんですよ、ということを示しているんだろうね。

若手編集者

若手編集者

セレンディピティですね。ガイドブックでそんな演出ができるなんてすてき!

※「はじめに または おわり」の全文はインド特集トップページよりご確認いただけます。

■思い立ったが吉日。”いま”旅に出よう!

私たちはデジタルネイティブでスマホのある旅しかしたことがないんですけど、「はじめに または おわりに」から感じられるような、当時の不便だからこそ想いが強い、みたいな世界に憧れます。

もういまはスマホなしでは旅できないからね。予約とかも。

生まれる前のことは仕方がないけど、やっぱり思い立ったが吉日で、行きたいと思ったときに行かないと。何かで変わってしまったら、その思い描いた町は一生経験できないから。

香港も、イスラエルも、キューバも……。社会情勢から町のようす、立ち入り可能なエリアまでどんどん変わっていきますもんね。

本当にそうなんだよ。シリアとかは行っていてよかったと思う。

いつなにが起こるかわからない時代だからこそ、未来を案じすぎず、行きたいと思ったときに行く、やりたいと思ったときにやる、を心に留めたいですね!

まだまだある!おもしろ表現

今の価値観では出版しないかも!? インド愛あふれる正直な旅人編集者が紡いだ、ツッコミどころ満載な文章を3つご紹介。

■「インドに日本人がウジャウジャ押しかけてほしくない」

これが掲載されているのはなんと10ページ目。ガイドブックなのに冒頭から「インドに日本人がうじゃうじゃ押しかけてほしくない」とは……。例にならって、この後きちんと読者に向けて航空券運賃の説明をしている。インドを神聖なものと捉えた、初代編集者の重すぎる愛ゆえの正直な思いが感じられるが「ウジャウジャ押しかける」はやはりちょっとひどい。
同ページの「インドを愛すボクらの航空会社へのアッピール!」は張り切り具合がかわいい。

■「今日もいい旅、タバコがウマイ!」

非喫煙者でも、なぜだかタバコがおいしそうに思えてくる!? さすがに今では使えない見出し。
2010年頃まではこの文言は載せたままだったが、その頃インドで公共の場での喫煙が禁じられたため記載しないように。その時代の現地の状況に合わせて、一つひとつの文言を変えているのだ。

■「あまりよく知らないが…」

これは……! 堂々と「よく知らない」と書いてしまっている。しかし1980年代というインターネットもない時代、自信をもって海外の情報を発信することは難しかったはずだから、逆に正直で信頼できるのかもしれない。
現在でもガイドブックを制作する際、マイナーエリアの情報は取得しづらく判断に迷うものも。しかし取材陣による徹底取材、公式情報を集めることで信頼度の高い情報の掲載できるよう尽力しているので、今は気分や好みで書いていないことはご承知おきいただきたい。

 

2025年3月発売の新刊を持って、インドへ!

地球の歩き方のタイトルのなかでも、初版の遺伝子を色濃く残す『インド』。
旧版より32ページ増の688ページと、さらに分厚いガイドブックとなった改訂版を発売しました。
ページ増に伴い、アッサム州、メーガーラヤ州などのエリアページを追加。特集にはタージ・マハル紀行、北東部インド、カルチャー解説などが盛り込まれています。
旅のお守りとして、お供させていただけますと幸いです。

ガイドブックの画像

D28 地球の歩き方 インド 2025~2026

Dシリーズ(アジア) 地球の歩き方 海外

2025/03/21発売

観て歩くだけでは飽き足らない国。インドに行けば誰でもあの生き方に、あのペースに巻き込まれる。あなたを変える旅の本。

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