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自然の恩恵を最大限に!タジキスタンの“あたりまえ”を守れ!

JICA都市・地域開発グループ

JICA都市・地域開発グループ

国際協力機構

更新日
2024年11月20日
公開日
2024年11月20日
タジキスタン共和国政府「National Tourism Portal」 パミール高原

独立行政法人 国際協力機構(JICA)
タジキスタン事務所 水口 雄太

タジキスタンと聞いてどのようなイメージが湧きますでしょうか。「○○スタンってなんだか怖そう……。」「なんとなく、旧ソ連?」などの声が聞こえてきそうですが、かく言う筆者もタジキスタン赴任前は同じことを考えていたひとりです。読者の皆様にとって謎の国であろうタジキスタンについて、今回ご紹介いたします!

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大自然豊かなタジキスタン

タジキスタンはソビエト連邦の崩壊に伴い1991年に独立した、比較的若い国です。国土は約半数が標高3000mを超える山岳地帯であり、中国と国境を接する東部には標高5000~7000m級の山々が連なるパミール高原を有する山岳国家です。ちなみに「パミール」とはタジク語で「世界の屋根」を意味しますが、地理の授業で聞き覚えのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。このような地理的条件を背景に、タジキスタンは豊富な水資源に恵まれており、水の国ともいえます。

オペラハウスと噴水(JICAタジキスタン事務所撮影)

これらのキーワード「ソ連」と「水の国」は首都ドゥシャンベで垣間見ることができます。ひとたび街を歩けば、なんとも共産圏らしい重厚なデザインの建物が目に飛び込んできます。それと同時に街の至るところに噴水があることにも気づくでしょう。そしてこの豊富な水がもたらす多くの草花や木々が街中に広がり、緑豊かな街並みとなっているのです。

大通り沿いの緑地(筆者撮影)

そのまま夜のドゥシャンベを歩いてみると、冬のイルミネーションを想起させる街中の明かりが目に入ります。ビルに張り巡らされ、車道沿いにも延びる電飾は一年間を通して光り続け、夜の街を彩っています。

  • 夜のドゥシャンベ市内(筆者撮影)

山の恵み+ソ連の影=?

さて、山に囲まれ、水に恵まれ、街は緑とライトアップに包まれるタジキスタンですが、中央アジア諸国では最貧国といわれています。どのようなカラクリでこのようなすてきな街並みが広がっているのでしょうか。様々な背景がありますが、少しだけご紹介します。キーワードは「ソ連」と「水の国」です。

かつてタジク・ソビエト社会主義共和国として発展してきたタジキスタンは、ソ連によってインフラが整備されてきました。その痕跡は今もなお街中で見ることができ、先にご紹介したような重厚なデザインの建物やすてきな噴水が街の至るところに残っていて市民に愛されています。そして、その街中の噴水と夜のライトアップを支えるのが豊かな水資源です。

夜は噴水もライトアップされる(筆者撮影)

豊かな水資源が噴水に直結することはご想像の通りですが、ライトアップをも支えているその訳は水力発電です。タジキスタンは国内で発電される電力量の約9割を水力発電で賄っています。その一部電力は近隣国に輸出されるほどであり、その電力のおかげで街中のライトアップが維持されているのです。

一見、非の打ちどころがない「最貧国」ですが、やはり困難も少なくありません。次はタジキスタンの街並みを支える電力事情について、もう少しご紹介します。キーワードは変わりません。

タジキスタンの電気を守れ!

ドゥシャンベに住んでいると、時折停電に見舞われます。夏季では生活にあまり支障のない程度ですが、冬季になると時に半日~一日にかけて停電する地域もあります。地方に行けばその程度はさらに悪くなります。その主な原因のひとつは発電設備と送配電設備の老朽化です。

夏季は豊富な水資源によって水力発電の能力を最大限活用することができますが、設備の老朽化によって既存の発電所では設計発電量を下回る電力量しか発電できておらず、時に電力需要を下回ってしまうのです。冬季には水力発電に必要な水資源が不足するため火力発電所を稼働させますが、ただでさえ不足している電力は送配電設備の老朽化により、送配電の過程で電力ロスが生じてしまい、さらに厳しい電力需給となります。これらの設備の多くはソ連時代に整備されたもので、古い発電所では100年近く稼働しているものもあります。

1936年から稼働している水力発電所(筆者撮影)

適切にインフラを更新できていない背景は様々ですが、タジキスタンではソ連崩壊とともに独立、その直後に5年にも及ぶ内戦が勃発し、疲弊した国家はこれらのインフラ更新にかかる莫大な費用を捻出できず、最新技術に対応できる技術者も不足してしまったのです。また現在では、その古くなり過ぎた設備を修理するための代替部品等の入手が困難になっていることも老朽化を食い止めることができない理由のひとつです。

そこでJICAは、国内で最も電力需要の高いドゥシャンベにおいて配電用変電所施設の全面更新及び新設する協力を実施しました。この協力は首都ドゥシャンベにおける電力安定供給に寄与しましたが、未だ老朽化が進む送電用変電所についても協力の実現に向けて調査が進められています。

市内を流れるバルゾフ川(筆者撮影)

さらにタジキスタン政府は国際機関や他国政府の支援を得ながら、中央アジア地域最大規模となる水力発電所の整備も進めています。このようにJICAをはじめとした各国政府機関や国際機関の支援によって将来タジキスタン全土で電力が安定的に供給され、それが国の更なる発展につながり、いつまでもすてきな街並みが続くことを願っています。

おわりに

今回は読者の皆様にとって謎の国であろうタジキスタンについてご紹介しました。タジキスタンの地理や歴史的背景、街並みをヒントに掘り下げていきましたが、そのほかにも料理や文化、国民性などお伝えできていない魅力はまだまだたくさんあります。今回のご紹介が皆様にとってタジキスタンを知る第一歩となりましたら幸いです。そして興味が湧きましたらぜひ遊びに来てください。中央アジア地域にはタジキスタンを含めて魅力がいっぱいです。そしてその際には、我々にとって当たり前となっている電気のありがたみを感じながら今回のお話を思い出してみてください。

спасибо! スパシーバ!(ありがとうございました!)

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