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本当のインド旅が始まったカオスな瞬間【ガチ冒険】

地球の歩き方編集室

地球の歩き方編集室

更新日
2025年3月17日
公開日
2025年3月18日

20代から40代の元・現役バックパッカーの男子社員が学生の頃や最近旅してきた記憶を頼りに自分たちで決めたお題に沿って文章を書いてまとめた『地球の歩き方 ガチ冒険~地球の歩き方社員の旅日記~』から、ひとつのエピソードを抜粋してお届け。
インドに行きたいけど、どうしても躊躇してしまい周辺国のネパールやバングラデシュで「インド慣らし」をしていた曽我。満を持して、30歳を前についにインド・ニューデリーの往復航空券を購入した—。

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ガンジス川が流れる「聖地」ヴァラナシ

地球の歩き方の「インド」内「ヴァラナシ」には、「せめて1度は日が昇る頃ガンガー(ガンジス河)へ沐浴しに行ってみよう。ガンガーを全身で感じることは、どこか魂に触れる経験として忘れられないものになるだろう。」「ただ人の沐浴風景を見ているのと、一度でもガンガーの水に抱かれるのとでは大きな違い。水は濁って見えるが、ガンガーは聖なる河。ヒヤッとして気持ちがよい。」という内容が書いている。「ガンジス河に入らなければ」と気分が盛り立てられる。しかし、気がつかない読者も多いだろう。別のページには小さなソデ記事で「ガンガーに入るなら自己責任で。ガンガーには死体が流されるほか、下水や工場排水が流れ込んでいるため、注意が必要。実際に沐浴した後に発熱や下痢の症状を訴える人も少なくない」と衝撃的なことが書いてある。なんとインド愛に溢れ、完成されたガイドブックなんだろう。

朝のガンジス川でひと泳ぎ

私は夜が明ける前にゲストハウスを飛び出し、ガート(沐浴場)に向かった。既に多くのインド人で溢れている(時間にルーズなインド人も、宗教のこととなるとしっかり早起きをしている。宗教ってやっぱり不思議だ)。ガートは無数にあるが、私は中央に位置するダシャーシュワメードガートで沐浴をした。実際、ガンジス河はヒヤッとしていて気持ちが良かった。インド人に習い、3回頭まで浸かる。信頼できそうなインド人に一眼レフカメラを渡し、写真も撮ってもらった。河からあがって身体を拭いている最中に、なぜか一眼レフカメラのレンズキャップだけ盗まれていた(おそらくカメラを預けたインド人ではなく、別の人間によるものだ)。 

いたるところにあるリンガ

ヴァラナシは三千年以上の歴史がある、シヴァ神の町だ。シヴァ神の男根をデフォルメし、信仰の対象とした「リンガ」が町のいたるところにある。それまでリンガを見ると頬を赤らめてしまっていたが、ヴァラナシに来てからはそんなことはなくなり、インドの日常として見られるようになった。 

本当の意味でインド旅が始まった日

動物が行き交うヴァラナシの裏路地

「腹を壊してからがインドだ」「牛のうんこを踏んでからがインドだ」と、学生時代に旅をしていた時に、旅先で出会った人に言われた。腹はよく壊しているので、牛のうんこを踏むのはいつかと思っていた。もちろん、うんこなんて踏みたくない。出来る限り避ける。それでも踏んでしまうものなのだろう。そして、ヴァラナシでそれは起きた。 

 ヴァラナシの旧市街は車が通れないほど狭い。人、バイク、牛、犬、自転車がぶつかりそうになりながら生活をしている。インドでの旅行も1週間ほど経ち、鳥のうんこをくらっても気にせずその服を2、3日着ていた私は完全に油断をしていた。インドに気を許していた。そして牛のうんこを踏んだ。5月のインドは暑気で、日中は45℃になることもある。熊谷だって40.9℃だ。だからどうしても、足元はサンダルになってしまう。サンダルで牛のうんこを踏む。深みのあるうんこをずぶりと踏み抜くと、サンダルのサイドから直に足を攻めてくるのだ。ヒヤッとして、気持ちよくはなかった。でも、ついにこの時が来た、という感慨はあった。うんこを踏んで感慨。その足をガンジス河で洗った時、私の、本当のインド旅は始まったのだ。 

文・写真/曽我 将良 

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本書は4人の旅好きによる旅日記です。特に海外旅行の参考になる情報はありませんが、読者の皆様もご自身で経験されたことを思い出しながら、比較しながら、読んでいただければ幸いです。

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