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エチオピアの断食期間「ツォム」とは?ツォム開始直前の現地の食事事情と北部・ティグライ州のローカルフード

アイ・シー・ネット株式会社

アイ・シー・ネット株式会社

更新日
2025年3月27日
公開日
2025年3月27日

執筆者:田代 啓
国内の大学院で地域研究学、イギリスの大学院で開発学を学んだのち、2024年にアイ・シー・ネットに入社。現在は開発コンサルティング事業部にて、農業・平和構築分野のJICA開発計画調査型技術協力や省庁系の調査業務に従事している。

エチオピアの主要な宗教のひとつ、エチオピア正教では、動物性の食品を食べられる時期と食べられない断食の期間(ツォム)が存在し、1日単位の短いものから、長いものだと55日間続くものもあります。年間で180日以上行われているツォム期間中は野菜のみを食べることができます。敬虔な教徒ともなると、期間中は午後3時まで飲まずで食わず過ごす方もいます。

ツォムが始まる前には多くの人が駆け込みで動物性食品を摂取します。2025年2月24日から始まった55日間のツォムを前に、エチオピア北部・ティグライ州を訪れたので、その際に筆者が食べた現地のローカルフードを紹介します。(取材時がツォム直前のため動物性食品多め)

 

 

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今回紹介するティグライ州では2020年11月に紛争が発生しました。停戦合意から2年以上経った今でも、州都のメケレを含め州内各地に国内避難民が滞在しています。少しずつ平和を取り戻しているティグライ州ですが、人々が心身に負った傷は大きいです。

アイ・シー・ネット株式会社では2024年9月からエチオピア北部紛争影響地域の復興支援プロジェクトを実施しており、一日も早い復興のため全力を尽くしています。

 

エチオピアグルメの基本の「き」

©︎iStock

エチオピアの料理を語るうえで、まず知っておかなければいけないものといえば主食である「インジェラ」です。テフというエチオピア原産の穀物を原料としたクレープ状の生地の形をした食べ物で、発酵させてから焼くため、少し酸味があります。インジェラの上にはシチューや炒め物、サラダなどがのっていて、手でちぎったインジェラでそれらの具材を包んで食べます。

 

日本ではまだ知られていないティグライ州のおいしい料理

カイワット(左)とキッキル(右)with インジェラ

今回筆者が訪れたティグライ州は畜産が盛んなことから、州都のメケレでもヤギ肉が良く食べられます。スパイスで煮込んだ辛めの「カイワット(赤いシチュー)」やシンプルな味付けでやさしい味わいの煮込み「キッキル」があります。どちらもお肉の旨味が凝縮されていて絶品です。新鮮なお肉のため臭みは少なく、骨付きのヤギ肉に素手でかぶりつくのもまた一興。ローカルは骨を割って骨髄まで吸います。

大麦ボールはお店の方がその場でちぎって丸めてくれます

もうひとつのティグライ州名物、「トゥフロ」は、焙煎した大麦の粉をお湯で練って小さくボール状に丸めたもので、先端がふたてに分かれた棒で刺し、お肉入りのシチュー(おもにカイワット)に浸して食べます。シチューの上のクリームも大麦の粉を牛乳でのばしたもので、まさに大麦づくし。祝日などに食べられる特別なメニューです。焙煎した大麦の甘みと香ばしさがあり、もちもちした食感も楽しい一品です。

色々な具材が入って彩りがきれいです、まさにスペシャル

お次は「スペシャルフル」という朝食としてよく食べられている料理です。野菜、炒り卵、ナッツのソースが入ったシチューにヨーグルトをかけて混ぜ、パンに付けて食べます。ナッツと卵、ヨーグルトによりシチューの辛みがマイルドになっていてとても食べやすい一品です。ティグライ州は乳製品も有名で、朝食にヨーグルトにスパイスを入れて飲む方も多いそうです。

コーヒーカップのサイズと柄がなんともかわいいですね

食事の最後は、エチオピア名物のコーヒーで締めましょう。エチオピアのコーヒーセレモニーは、生豆を焙煎し挽くところから始まります。そしてお湯の入った黒い陶器(ジャバナ)にコーヒーの粉を入れ、粉ごとカップに注いで飲むのがエチオピアスタイルです。

葉を下に敷き、乳香を焚いて、コーヒー以外のさまざまな香りも楽しむことができます。3杯飲むまでは席を立ってはいけない、という古くからのルールがあり、昼休みが長引くこともしばしば。このコーヒーに牛乳を入れてマキアートを飲むのが、ツォムではない日の楽しみです。

エチオピアで感じる食の多様性

筆者はエチオピアのほかの州での滞在経験がありますが、ティグライ州やメケレの食事の多様性には、インジェラの上の具材にせよインジェラ以外の食事にせよ、日々驚かされます。また、ツォムのとき・そうでないときで見せる食事の変化に、日本の「旬」とはまた違うおもしろさを感じます。ツォムの最中は辛いですが、ツォムでないときに命をいただくありがたみを感じていることにふと気づく今日この頃です。

55日間のツォムが始まる前には一時的に動物性食品を“食いだめ”するエチオピアの人々ですが、ツォムが終わりに近づくと町中では鶏などの家畜を売る商人であふれます。たくさんの人々がツォムが終わり家族でお肉を味わうためのものですが、日本では見かけないそのダイナミックな販売方法に圧倒されます。

まとめ

今回はエチオピア北部のティグライ州のローカルフードの一部を紹介しましたが、ティグライ州でも、エチオピア全体でも、紹介しきれていない食事はまだまだ山ほどあります。野菜・豆類のおいしい料理もたくさんあります。もしエチオピアを訪れる際は、今回紹介した食文化や価値観にも少し思いをはせつつ、いろいろなローカルフードを楽しんでいただけると嬉しいです。

アイ・シー・ネット株式会社について

アイ・シー・ネット株式会社では、新興国・途上国150ヵ国以上で社会課題の解決を行っています。下記のサイトで事業内容を紹介していますので、ぜひご覧ください。

事業紹介(アイ・シー・ネット株式会社)

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