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フィリピン伝統の織物で日常に彩をプラス!繊維産業の挑戦と現地発のブランドを紹介

アイ・シー・ネット株式会社

アイ・シー・ネット株式会社

更新日
2025年5月27日
公開日
2025年5月27日

執筆者:大西 由美子
2004年から開発コンサルタント会社アイ・シー・ネットで勤務。南アフリカの農村開発に1年半従事したのち、インドへ異動。同国を中心に国際協力のプロジェクトやビジネス・事業 に従事する。現在はフィリピンのフードバリューチェーン改善プロジェクトに携わりながら、野菜の安定的生産・流通や消費促進を目指している。

仕事柄、海外渡航が多い筆者が、渡航先で楽しみにしているもののひとつが現地の伝統工芸や織物に触れることです。その土地特有の手仕事に惚れ惚れしますし、織物の技術に込まれた歴史や伝統、ストーリーは知的好奇心をくすぐります。近年では、仕事でフィリピンに渡航する機会が多くなったのをきっかけに、現地の伝統工芸の奥深い世界に魅了されています。

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フィリピン伝統工芸の世界

暖かい常夏の国、フィリピン。日本人に馴染み深いものといえば美しい砂浜が広がるセブ島やトロピカルフルーツなどですが、筆者はここで農業のプロジェクトに携わっています。

基本的に取り扱っているのは野菜に限定されていますが、植物性の繊維がフィリピンでは昔から盛んということを知りました。「アバカ」というバナナ繊維や、パイナップルの葉の繊維から作られる「ピニャ」という布がその代表格で、頑丈で軽いアバカは最近、日本でも注目されているようです。

イナベル織りの帽子

多くの島々からなるフィリピンは、多民族国家なこともあり、織物も地方特有なものが多くあります。織り方やデザインだけを取っても多種多様で、飽きることがありません。なかでも特に筆者が興味を持ったのは、首都マニラがあるルソン島北部のイロコス地方の手織りです。

この辺りでは昔から高品質の綿が生産されており、植物や動物などからインスピレーションを得た「イナベル」をはじめ、大自然を幾何学模様で表現した「ビナコル」などのデザインが特徴的です。

高品質な綿や織物は金と交換されていたという歴史もあるから驚きです。 このほかにも日本の絣(かすり)と同じ方法で織られるイカットやミンダナオ島特有のヤカンなど、色合いやモチーフの全く異なる美しい布がたくさんあります!

織物産業が生き残るために

イナベルやヤカン、どれも惚れ惚れする布たちなのですが、伝統工芸として代々受け継がれてきた技術は、いずれも衰退の路をたどっています。

手織りのため大量生産ができないことに加えて織物職人の高齢化が進み、後継者がいないことなどが起因しています。さらにこれらの布はもともと女性の結納品として織られたものも多く、時代が変わり昔のような使われ方をしなくなったのも理由のひとつといわれています。

そんな現状を打破しようと立ち上がった人たちがいます。伝統織物を現代風のアパレルやカバン、そのほかファッション・アクセサリーや家具に変身させることで、現代の人に身近に感じてもらい日常で使ってもらうことを目的にブランドを立ち上げたNGOやデザイナーの皆さんです。

当初はマニラ郊外のケソン市で工房兼店舗を構えるいくつかの小規模なブランドのみでしたが、今や各地の伝統工芸を活かしたブランドが多数存在します。イナベルのスーツやかばん、ヤカンのジャケットやクッション・カバー、なかにはお気に入りの布でカスタマイズした洋服を作ってくれるブランドもあります。店舗を構えていないブランドもあるので、店舗以外で購入できる場所を紹介します。

伝統工芸を身近に感じることができるイベント

Katutubo Pop Up Marketの様子

首都マニラでは、伝統工芸を生かしたブランドが主催するイベントが定期的に開催されています。

Katutubo Pop Up Market

オーナー兼デザイナーのMonica Madrigalさん

「Katutubo」とフィリピン版のユニクロといわれるファッションブランド「Bench」とのコラボであるこちらのイベント、毎月または隔月の頻度で開催されています。

マニラ首都圏の商業の中心地、マカティエリアのほど近く、Bonifacio Global City(BCG)にあるBench Towerの地下のイベントホールが会場です。最近では約20の現地発のファッション・ブランドやコスメが出展しています。R2RやMasabel Ilocoのような定番ブランドのほか、若手デザイナーが織物職人とともに立ち上げたブランドもあります。普段着やファッション・アクセサリーのほか、フィリピンを代表するバタフライ・スリーブのジャケットを取りそろえているブランドが目立ちます。

なかでも、Monica Madrigalは筆者のおすすめです。デザインが豊富なほか、日本人が着やすい色や柄が揃っています。 フィリピン各地の手織り布をアクセントに、ゆったりとしたシルエットの女性用トップスやワンピースのラインアップがあります。

■Katutubo Popup Market
住所:The Bench Tower, BGC, Rizal Driveと30th Streetの角
2025年の開催予定日:7月11~13日、8月15~17日、9月12~14日、10月17~19日、11月6~9日、27~30日
入場料:無料
営業時間:10:00~18:00
Instagram:https://www.instagram.com/katutubopopupmarket/

Arte Fino

Arte Finoの支援のもと制作された洋服

高級感あふれるブランドが集結するのがArte Fino。世界に通用するフィリピン・ブランドを作り上げるためにデザイナー企業の育成を目指して生まれたプラットフォームで、普段はフィリピン各地の職人たちの支援や若手デザイナーの育成などを手掛けています。

毎年3月と8月頃にマニラで開かれるポップアップ・イベントでは、先述したKatutuboに出展しているブランドもありますが、Katutuboと比べると全体的に高めの値段設定になっていて、きらびやかなドレスやジュエリーが目につきます。

■Arte Fino Fair
住所:The Fifth At Rockwell, Power Plant Mall
2025年の開催予定日:7 月31~8月3 日
入場料:PHP 150
Instagram:https://www.instagram.com/artefinoph/

そのほか

もっとカジュアルにフィリピンの伝統工芸を活かしたブランドを楽しみたい方は、ショッピングモールやイベント会場などで不定期に開かれているHabi (Philippines Textile Council)やアヤラ財団が主催するバザールを覗いてみてください。これらのイベントは入場無料な場合が多くぶらぶらと多数のブースを気軽に覗きながら買い物をすることができます。

まとめ

フィリピンの伝統工芸や織物の魅力、感じていただけたでしょうか? 素敵な織物も伝統的な使い方は馴染みがないですが、モダンなデザインや用途にアレンジされていると、日常使いができます。マニラ滞在の際に日程があえばぜひ、今回紹介したイベントを訪れてみてください。素敵な織物やデザイナーさんとの出会いがあるかもしれません。

アイ・シー・ネット株式会社について

アイ・シー・ネット株式会社では、新興国・途上国150ヵ国以上で社会課題の解決を行っています。下記のサイトで事業内容を紹介していますので、ぜひご覧ください。

事業紹介(アイ・シー・ネット株式会社)

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