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ソロモン諸島は大洋州に浮かぶ大小900を超える島々からなる島国で、人口は約72万人(2022年、世銀)。首都はホニアラという小さな都市です。ホニアラと聞いて、ピンとくる方はあまりいないのではと思います。私もこのプロジェクトを担当するまで聞いたことがなかったのですが、ホニアラのある島、ガダルカナル島を聞いたことのある方は少なくないかもしれません。
今回の記事では、ガダルカナル島での戦争の歴史に触れながら、現在ホニアラでJICAが行っている交通分野の取り組みをご紹介します。
第二次世界大戦において、この島は日米で激戦を繰り広げた場所で「ガダルカナル島の戦い」として知られています。その激戦の歴史が現在のホニアラの街の始まりとなっています。
ガダルカナル島の戦いでは、当時ジャングルだったガダルカナル島に日本軍が飛行場を建設したものの、その滑走路の完成を待って米軍に占領され、奪還を目指して戦いましたが、最終的に日本軍が撤退しました。
その歴史の舞台となった飛行場は戦後も利用され、同国の国際路線のゲートウェイとなり周辺地域も発展、ホニアラは首都となり人口13万人が暮らす都市となりました。
現在われわれが渡航するときにも利用することとなるそのホニアラ国際空港(旧名へンダーソン国際空港)は、日本の協力も入り、国際ターミナルが2005年に整備され、新たなターミナルも2023年に整備されています。新ターミナルは現地の方の見送りや飛行機の離着陸が見学できるデッキもついており、飛行機の到着時は多くの人で賑わいます。
飛行機で到着すると洗練されたデザインの新ターミナルに目を取られますが、入国手続きはそちらではなく旧ターミナルで行い、帰りの出国時に新ターミナルを利用することになります。新しいこともあり空調なども快適で、おしゃれな雰囲気のお土産屋さんなどもあります。
飛行場建設に端を欲して現在までに街が広がっていますが、人口の増加に伴って渋滞がひどくなっており、ソロモン政府からの要請を受けたJICAの協力で子交通状況の改善に向け、2022年にホニアラ交通マスタープランを作成しています。
また、アジア開発銀行(ADB)とも連携し、ホニアラの空港と中心部を貫く首都の幹線道路(ククム道路)の改修を進めています。2025年2月に出張した際には、工事が終わったところは快適に走行できる舗装となっていましたが、これからの部分では多くの穴が道路上にみられ、車は蛇行運転を余儀なくされるような状況でした。
ホニアラでは、バスが定時に運行するということはなく、乗客が集まったら出発するという途上国にも多い形で運行しており、日本のように時刻表に沿った運行ではないため、幹線道路沿いにはいつ来るかわからないバスを人々が雨のなかでもたくさん立って待っていました。
また、あまりにもバスが来ないこともあり、トラックの荷台に人が乗ってバス替わりに使っている様子も日常の風景としてみられました。最も混むバス停がセントラルマーケットの前にあり、こちらは常に大勢の人がいて、特に朝夕の通勤・通学時は乗り切れないことも多く、待ち時間は計り知れないような様子が垣間見れました。
さらにスコールの多い時期には、短時間に大雨が降ると道路は川のようになり、交通には大きな支障となります。
最近開始されたJICAの協力では、これまでの協力で策定された都市交通マスタープランにもとづき現地のバスサービスを改善していくことを企図しています。上記の課題を解決すべくバスルートや料金、バス運営の方式などを総合的に検討し、地域住民の方が使いやすく安全なバスサービスの提供を目指し、公共交通政策の策定支援を行います。また、地域の子どもたちが安全にバスを利用できるよう学校での交通教育の試行なども検討されています。
地元の人々の生活を垣間見ることができるセントラルマーケットでは、色とりどりの野菜が並び、大洋州の島嶼国では陸地や輸送コストの制約などもあるなかで、非常に豊富な野菜や果物があることに驚きます。
ほかにもカラフルな洋服や生活の必需品と思われる薪、海に近いということでカツオなども丸ごと売っていて、地元ならではの光景が楽しめます。見慣れないヤシガニや青や灰色の珍しい色のロブスターなどもあり、訪れた際にはぜひビーチサイドのレストランで、地元のシーフード料理を楽しんでみてください。
(ちなみにこちらのセントラルマーケットの建物も日本の無償資金協力によって建設されたものです。)
手つかずの自然が残るソロモン諸島では、さまざまな種類の魚やサンゴ礁が楽しめるダイビングが人気です。ガダルカナル沖には攻防戦によって失われた多くの船や戦闘機が沈んでいて、その海域は「鉄底海峡」(Iron Bottom Sound)と呼ばれ、いたる所がダイビングスポットになっているそうです。
街のつくりや人口増加の状況を確認するのによい、街を俯瞰できる場所でもあるふたつの丘の上に、アメリカと日本の慰霊碑がそれぞれあります。いずれも眺めのいい場所にあり、清掃などがきちんとされ敬意をもって管理されている様子が見受けられます。美しい景色とは裏腹にここで悲しい歴史があったということを意識し、ガダルカナル島の「今」と「昔」を考えさせられる場所です。
いかがでしたでしょうか。今回の記事で、ソロモン諸島の首都ホニアラにまつわる歴史やJICAの活動に少しでも興味を持っていただけたならとても嬉しいです。訪問されるときには空港や道路、市場の様子やバスサービスの質がどうかなど、日本の協力も頭の片隅に現地の様子を見ていただくと楽しみが少し増えるかもしれません。
〈おまけ〉
最後にひとつ、帰国の際におすすめしたいのが空港の旧ターミナルのカフェで飲むココナッツジュースです。ほかの途上国でも多くありますが、ソロモン諸島のココナッツジュースはよく冷えてすっきりとした甘さがとてもおいしいので、搭乗を待つ間にぜひご賞味ください!
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「ホニアラ交通マスタープラン調査プロジェクト」のファイナルレポートはこちらからご覧いただけます。
⇒12342432.pdf
※2025年6月現在、ソロモン諸島全土にレベル1の危険情報が発出されています。渡航の際は、必ず最新情報を確認してください。