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ホメロスの英雄譚「オデュッセイア」は、トロイア戦争を終えた英雄オデュッセウスが、愛する家族の待つ故郷へ帰るまでの“10年間の大航海”を描いた冒険譚。恐ろしい怪物、魅惑の魔女、美しい歌声で船乗りを惑わすセイレーン、さらには冥界への旅まで——スクリーンで味わう壮大な物語。その名場面と重なる風景は、今も地中海各地に“ゆかりの地”として語り継がれています。7月17日(金)より北米をはじめ世界中で公開された映画『オデュッセイア』は、全世界興行収入は2億6,406万ドル(日本円で約427億円*1)となっており、本年度実写映映画No.1 *2という記録を打ち立てて大ヒット中です。日本では9月11日(金)より公開となりますが、映画を観たあとは、神話と現実がリンクする“オデュッセウスの足跡”をたどる旅へ出かけましょう。物語の名場面を思い浮かべながら訪れたい、5つの聖地を紹介します。
(*1ドル162円換算 7月20日現在 *2 Box Office Mojo調べ )
※本記事は原作「オデュッセイア」のモデルとされている場所を紹介しております。映画『オデュッセイア』の撮影地とは異なることがあります。
「オデュッセイア」の主人公オデュッセウスが王として治め、長い旅の果てに帰還を願い続けたかけがえのない故郷。物語の始まりであり、終着点でもあるのが、ギリシャ西部・イオニア海に浮かぶイタケ島です。
隣のケファロニア島からフェリーでアクセスできるイタケ島は、まだリゾート化されていない素朴な雰囲気が魅力。オリーブの木々、透明度の高い入江、静かな港町が広がり、まさに激しい戦いの後に優しく包んでくれそうな穏やかな風景に出合えます。
島内には、オデュッセウスゆかりの地とされる場所も点在。スタブロス村周辺には、彼の宮殿跡と結びつけられる遺跡や、古代の信仰を物語る出土品などが残り、神話の世界を身近に感じさせてくれます。
<旅を楽しくする妄想ポイント>
島に降り立ち、波の音を聞けば、「オデュッセウスが何年も焦がれ続けた故郷に、今、自分も立っているんだ……」という感動がじわり。物語のラストシーンに思いを重ねながら歩きたい、まさに聖地巡りのスタート地点です。
旅の途中でオデュッセウスたちが遭遇する、一つ目の巨人キュクロプス。なかでも、巨人ポリュペモスの洞窟から知略で脱出する場面は、「オデュッセイア」屈指の見どころです。
このエピソードの舞台と結びつけられてきたのが、イタリア・シチリア島東岸のエトナ火山周辺。
エトナ山の南東、カターニア北方の海辺に広がるサイクロプス海岸には、火山活動に由来する真っ黒な玄武岩が海から突き出し、荒々しくも美しい風景をつくり出しています。
伝説では、目を潰されたポリュペモスが、逃げるオデュッセウスの船に向かって岩を投げつけたとも。現在は海洋保護区としても知られ、海辺の散策やシュノーケリングも楽しめます。
<旅を楽しくする妄想ポイント>
ごつごつとした黒い岩礁が海に浮かぶ様子は、まさに巨人伝説そのもの。エトナ火山を背景にしたダイナミックな景観を前にすれば、「あの岩陰から巨人がのぞいているかも?」なんて、物語の一場面に迷い込んだ気分に。
美しい歌声で船乗りを惑わせ、船を岩礁域へ導いて難破させてしまうセイレーン。オデュッセウスは部下たちの耳をふさぎ、自らは帆柱に縛りつけさせて、その歌声を聞こうとしました。誘惑と好奇心が交錯する印象的な場面です。そのセイレーン伝説ゆかりの地として知られるのが、南イタリア・ソレント半島沖に浮かぶガッリ諸島。アマルフィ海岸の町ポジターノの沖に浮かぶ小さな島々は、別名「セイレーンの島」とも呼ばれています。
島々は私有地のため上陸はできませんが、ポジターノやソレントから出るボートツアーに参加すれば沖から眺めることはできます。透明度の高いティレニア海、きらめく水面、岩礁に囲まれた静かな入江は、セイレーンが潜んでいても不思議ではない美しさです。
<旅を楽しくする妄想ポイント>
アマルフィ海岸の青い海に浮かぶ島々は、思わず見とれてしまうほど幻想的。「これなら惑わされても仕方ないかも……」と思わせる魅力があります。クルーズで海風を受けながら眺めれば、気分はすっかりオデュッセウスの航海仲間です。
人間を動物に変える魔力をもつ、美しく危険な魔女キルケ。オデュッセウスの部下たちは、彼女の薬によってブタに変えられてしまいますが、やがてキルケはオデュッセウスを助け、旅の重要な助言者となります。
キルケが暮らした島アイアイエーのモデルの一つとされるのが、イタリア西海岸に突き出すキルケーオ岬。
ローマから南へ約100km、ティレニア海を望むこの地は、現在は国立公園に指定され、森と断崖、白い砂浜が広がる自然豊かなエリアです。かつては湿地や海に囲まれ、遠くから見るとまるで島だったともいわれています。山頂からは海岸線を一望でき、神話の舞台にふさわしい神秘的な雰囲気が漂います。
<旅を楽しくする妄想ポイント>
深い森と断崖が続くキルケーオ岬は、どこかミステリアスな空気をまとった場所。「この森の奥に、キルケの宮殿があったのかも」と想像しながら歩けば、トレッキングが一気に神話の冒険へと変わります。
旅の途中、オデュッセウスは今後の運命を知るため、死者の魂から助言を得ようとします。「オデュッセイア」のなかでも、ひときわ幻想的でダークな“冥界への旅”の場面です。
その舞台と深く結びついてきたのが、ギリシャ北西部エピロス地方を流れるアケロン川。古代ギリシャでは、アケロンは冥界へ通じる川のひとつと考えられ、周辺には「死者の神託所」と伝えられてきたネクロマンテイオンの遺跡もあります。
ただし、現在「ネクロマンテイオン」として知られる遺跡については、近年の研究で神託所ではなくヘレニズム期の要塞化された農業施設や貯蔵施設だった可能性も指摘されています。だからこそ旅では、古代の人々が冥界と結びつけたアケロン川の風景そのものに注目したいところ。渓谷を流れる清らかな水、木々に覆われた川辺、静かな流れは、神話の世界へと続いているような不思議な気配を漂わせています。
<旅を楽しくする妄想ポイント!>
アケロン川は、古代の人々が“冥界へ通じる川”と考えた神秘の水辺。現在はリバー・トレッキングやボート遊びも楽しめる自然スポットですが、木漏れ日の下を流れる冷たい川に足を入れると、オデュッセウスが死者の声を求めてたどった旅路に思いを馳せることができます。
怪物の洞窟、魔女の島、魅惑の海、冥界への入口、そして英雄が帰りたかった故郷。「オデュッセイア」は数千年前に語られた神話でありながら、その物語と重なる風景は、今も地中海各地に息づいています。
映画館のスクリーンで壮大な冒険を味わったあとは、パスポートを片手に、オデュッセウスの足跡をたどる旅へ。神話の世界は、思っているよりずっと近くで、私たちを待っています。
映画『オデュッセイア』の公開が今から待ち遠しいですね!