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ヒルトンサンフランシスコの改装工事に伴い、通称 "菊" と呼んでいた日本食レストランが無くなり3年以上になります。
きちんとした料理を出す正統派のレストランでした。
そこで、腕を振るっていたシェフの五味氏が、自身の店を開き2年近く、先日ようやく訪れる機会ができました。
何度かお店に、出向いたのですが、駐車場が見つけられずに退散した事が数回。 その都度、次回は必ずと思っていたので入り口にたどりついた時は本当嬉しかった。
場所は、ゲーリー通りをリッチモンド地区方面、19&20番通りの間に、重厚な木製の看板が掲げてあります。 入り口の風よけの衣桁(いこう・着物掛け)に西陣風の帯が掛けてありました。
『NO SUSHI』(お寿司はありません)日本食とは寿司の事だと思う欧米人は多いけど、あえて逆境にしているところに心意気を感じます。
そもそも『割烹』の"割"は、切る。 "烹"は煮る。 という意味なので割烹料理とは、出来上がった料理を一品ずつ運んで出す日本料理の事で、日本料理を提供する店が割烹店であります。
鮨は、お酢に漬けた魚肉の事。寿司は、握り、押し、チラシ、五目等のスシの総称で、細かくいえば、違うカテゴリーの日本食になります。 最近は、そこまで気のする人もいないし、各国の料理が融合して新しいカテゴリーになっていたりしますもの、まぁ、話のタネにしておきましょう。
なのでこの店、カウンターはあるけれど「ヘィッ、いらっしゃい。」の寿司シェフはいません。 作りからすると、いずれという事があるかもしれませんが。
使い捨てのおしぼりがほとんどなのに、タオルのおしぼりを持ってきてくれました。 割り箸の袋で箸置きを作るのがすっかり癖になってしまいましたが、何とも可愛いお箸置きがチョコンと割り箸の下にありました。 冷えたビールビンの滴が、テーブルにつかない受け皿は、最近の日本でも見かけなくなりました。
選ばれた器を見ていると、日本食は、見た目の美しさもおもてなしだと、あらためて思います。
メニューは、旬の物を中心に食材別になっていて、お刺身、焼き物、揚げ物、煮物、蒸し物と調理法で分けています。 それとは別に和え物のように一品料理、しゃぶしゃぶ、すき焼は、かつて "菊" で見かけた "手ほどき" もありました。 あまりに慣れた手つきと感心していたらやはり当時の仲居さんだった方でした。
焙烙(ほうらく)という素焼きの鍋(タジン鍋みたいに浅い)で焼き物をいただくとふっくら柔らかで、鉄板にはない穏やかさが、フゥッと身体を温めてくれます。 食後、熱いお茶をいただきましたが、テーブルの空いた皿は全くありません。 とてもゆったりとした気分になりました。
いただいたどれもが、大変丁寧な下ごしらえがなされていて、手が込んでいるのが伝わってきます。
和の職人ここ有り。 いい仕事しています。