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今、香港で連日話題になっているのは、港湾関係者のストライキです。トイレにもなかなか行けないという劣悪な篭城環境や賃金改善を求めてのものです。3月下旬にストライキを始めていますのでほぼ1ヶ月が経ちました。香港はストライキが多い街ではあるのですが、暴力沙汰になることはほとんどなく平和的なストライキです。
ですが、なぜこのストライキが注目されるかといいますと、香港のコンテナなどのターミナルは世界トップクラスの取扱量で自由貿易港である香港の生命線ともいえます。このターミナルの権益の7割近くを持っているのが香港の香港国際貨櫃碼頭(HIT)という企業です。この会社の親会社が和記黄埔(Hutchson Whampoa)という会社。この企業の主席は李嘉誠という人で、香港一どころかアジア一の富豪です。経済誌『フォーブス』の2013年の長者番付によりますと日本一の富豪、ユニクロの柳井正氏の資産額は133億ドル(66位)、日本円で約1兆2000億円ですが、李氏の資産額はその倍以上の310億ドル(2兆8000億円)で世界8位。全く競争にならないほどの大富豪です。
李氏の自社ビル
彼一代でここまでになった「香港ドリーム」を実現した人なので、多くの香港人から尊敬されていますが、これほど大規模に批判されるのは初めてだと思います。彼は、電気、ホテル、スーパーマーケット、家電、薬局、マンション、通信など多くの事業を抱えているので、彼の傘下企業なしでは生活が成り立たないのではないかというほど香港社会に浸透しています。
今、港湾関係者は彼のオフィスビルの前でテントを張って泊り込みの抗議をするほか、傘下のスーパーでも抗議行動をしています。
テントを張って抗議する港湾労働者
当初は全くストライキなど全く意に介さないほど強気だったのですが、香港政府の仲介で労使交渉が始まりました。とはいえ、全く妥結の見込みが立っていないので果たしてどうなることやらとうところです。もし、実質労働者側が勝った場合、香港人の李氏に対する何らかの思いが失われることは間違いないと思います。いや、すでに失われているかもしれません。
HITはイメージダウンを恐れて、新聞に広告を打っています