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アルゼンチンの次の大統領を決める選挙が始まった10月25日(日)朝から始まった。
午後6時までアルゼンチン国内だけではなく、世界中のアルゼンチン領事館で投票が行われた。
アルゼンチンでは投票は権利であり、また義務である。日本では今話題になっているマイナンバーのように、アルゼンチンではDNI (DOCUMENTO NACIONAL DE IDENTIDAD)という身元証明書があり、生まれた時から自分だけの番号がある。
それに家族関係以外の戸籍に記載されるようなデータが載っており、 登録されている現住所によって、どこで投票を行うか振り分けられるPADRON(パドロン)をチェックしてその会場に行く。
会場ではFISCALという選挙管理委員会がいる。実は、それぞれの政党から送られた監査官が投票作業を対応し、開票を公平に執行する。
基本的に一般市民であり、この日のために研修もあり、また一般的に有償である。なぜ、政党から送られてくるか?
それはその選挙会場がある候補者に支配されて選挙の投票用紙がきちんと配置されているかである。
((投票用紙の一例。ブエノスアイレス市の場合))
この投票用紙をまず管理するためである。
というのは、選挙を行うにはCUARTO OSCURO(暗い部屋)という場所にはいり、投票用紙を手にする。
この投票用紙はカラフルで、政党ごとにカラーがあり、しかも候補者の写真入である(これは文盲のためでもある。文字をかけない国民がいるし、さらに読み間違いを防ぐためでもある)
それをURNA ウルナと呼ばれる投票箱に入れる。
投票用紙はブエノスアイレス市の場合は、大統領候補、議会上院、下院、南米共同市場審議会。。。など短いが、別途ブエノスアイレス州の場合は、ブエノスアイレス州知事を選出する投票用紙も含まれている。またはほかの州でも同様である。
一党だけの場合はこれ一枚長いのを折りたためばいいが、大統領はある党、ブエノスアイレス州知事は別の党、を選ぶ場合はそれぞれを切って投票をする。これをCORTAR LA BOLETAという。すなわち政党だけではなく、それぞれの候補者によって選ぶ、という意味でもある。
ここでの選挙管理委員会の重要性はまず第一に、投票者の誰か(おそらくある政党の支持者)がこの投票用紙を((たくさん))もって帰らないかである。ある程度予備はあるし、伝統的に記念に全部持って帰る人も多いが。。。というのは相手候補に投票されないように、反対派のその投票用紙を持っていけば暗い部屋にほかの投票者が入ったとき、必要な用紙がないと、その反対派に投票できないということが起こるからである。・・・・
一番上の写真は
(写真はブエノスアイレス州エチェベリアの小学校を会場として投票会場での選挙管理委員会の皆さん、
リュックやカバンは持ち込み禁止にしたという)
本日の選挙で誰が勝つかどの政党が政権を得るかという問題以上に、選挙が公正に公平に行われるか国民は一番心配している。すなわち民主的に選挙が実行されるかである。
これは軍政を経験したり、また選挙が義務であったり、そして、選挙の不正がときには公然と行われるのに、あとで特におとがめなしということがありえるアルゼンチンでの特徴であろう。
そして次の焦点はもちろん、現与党が勝利するか野党連合が台頭するかである。
今回六名の候補がいるが本命は与党のダニエルシオリ氏か、野党連合を行なったマウリシオ マクリ氏である。もちろん、三名目としてセルヒオ マッサ氏がいるが、まあこれはなかなかないであろうがこの三名が主要候補である。
アルゼンチンは伝統的に、労働者の、特に組合の力が強い。というのは、今までのペロン党と呼ばれるペロン元大統領の流れを組んだ労働者に重点をおいた(と言っている)正義党が中心だからである。
現政権のクリスティナ キルチネル (キッシュネルと読むがある日、こう訳されて日本では通称になってしまった)大統領を正当に引き継ぐのが、現在の勝利のための前線(FRENTE PARA LA VICTORIA)がそのまま政権を続けるかである。、キルチネル派と言われるが(でも大統領が変わる度にーーー派と言われるからあまりたいした派閥ではない)から選ばれているダニエル シオリ氏である。現在ブエノスアイレス州知事であり、アルゼンチン観光大臣であるときもあったが、もともとモーターボートのレーサー出会ったスポーツマンであった人である。
なお、2002年に日本でワールドカップが開かれた際、ディエゴ マラドーナをアルゼンチンの文化スポーツ大使として派遣したのがこの人だ。
このシオリ氏が、 固く大統領の座を確保するか、それとも、CAMBIEMOSという、今までペロン党と対立した急進党(RADICAL)を巻き込んだブエノスアイレス市現市長PROとの連帯党である今、共に変えよう党(CAMBIEMOS)を国民が選ぶのか。。。。
どの政党が政権をとっても、アルゼンチンの国家的問題、貧困、インフラ、エネルギー、教育には問題が山積みであるが、「今よりはましになるだろう」というのが揃っての意見である。そして、あれはいやだから、あれにならないように、こっちに投票しようという、票の入れ方になる。。。
今のブエノスアイレス州の問題はほぼ国レベルの問題なので、それに慣れているシオリ氏がいいだろうという案もあるし、人物的にも「比較的」誠実のようである。。。クリスティナ大統領とときどき折が合わなかったのも逆に好感がもたれる。
汚職問題が大きいのに、企業家の子弟であるマクリ氏が盗むことは少ないからその方がいいし、国家レベルのプロジェクトは企業的に対処する必要がある、との声もある。
この両名も貧困撲滅、教育に重点を置くとあるが、ブエノスアイレス州でそれが実行されていないのは自明の理ではある。。。
もちろんダークホースはマッサ氏であるが、これが票を分ける役割を果たしているのか、それとも全く二人の代表候補をあきらめてこの候補者に票がいくのか、不明である。しかしマッサ氏が台頭したのはキルチネル派であったことを忘れてはならない。そして今は大統領の擁護であっても、今までの大統領だって、最初は現大統領の庇護で過ごしていて当選したら別のモノになり、自分の派閥を形成していったのだから。。。
国の代表を自分で選ぶチャンスを得たアルゼンチン国民がそれを行使するかどうかは本日から明日未明に決定される。いや、決意する日でもある。
そして選挙管理委員の責任者は明け方まで動かないで 開票を見守っている。
アルゼンチンの観光に来た人には関係ないかもしれない。
しかしながら、現在 ブエノスアイレスの中心の5月広場近くのルナ パルク(LUNA PARK)シオリ氏関係者が集結しているし、さらに、COSTA SALGUEROというパレルモ地区のアルゼンチン国内空港近くにマクリ氏陣営が集結しているので、付近ではいろいろ気を付けた方がいいと思う。明日も結果がわかり次第、何が起こるかわからないし、人も多いだろうから
セントロの中心街に行く用事があっても別の日にした方が懸命だ。
特に5月広場、大統領府付近、国会議事堂、そしてアルゼンチン国内空港付近である。
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